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暮らし

《全国に約30万人》介護と育児の負担がのしかかる「ダブルケア」 負担を減らすには? 自治体の相談窓口や無理なく続ける工夫について解説

 介護と育児を同時に行う状況を指す「ダブルケア」。晩婚化などで子供を産む平均年齢が上がっていることもあり、近年この問題に直面する人はさらに増えるとされている。介護も育児もお金がかかり、肉体的にも精神的にも大変だからこそ、サポート制度を知り、活用していきたい。そこで、ダブルケアで利用可能な制度や、無理なく続けていくための工夫などについて、節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんに教えてもらった。

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教えてくれた人

丸山晴美さん/節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー

22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている。

負担の大きい「ダブルケア」

「ダブルケア」とは、介護と育児を同時に行う状況のことを指し、このような状況に置かれている人のことを「ダブルケアラー」と呼びます。例えば、親が35歳のときに自分を産み、自分も35歳のときに子供を産んだ場合、自分が40歳のときには親は75歳、子供は5歳でとなり、ダブルケアラーとなる可能性があります。

 介護と育児はいずれも時間とお金がかかるうえに、怪我や病気などそれぞれ突発的な出来事も起こりやすく、「思い通りにいかない」のがダブルケアです。そのため、単純に負担が2倍となるわけではなく、計画通りに物事が進まないことで、介護や育児単体と比べて数倍の負担がかかるケースが多いのが実情です。

ダブルケアラーは少なくとも約30万人

 毎日新聞の調査(https://mainichi.jp/articles/20240119/k00/00m/040/332000c)によると、ダブルケアラーは全国に少なくとも29万3700人いるとされています。

 2025年4月1日に改正された「育児・介護休業法」により、仕事と育児・介護を両立できるような会社のサポートが求められていますが、ソニー生命の調査(https://www.sonylife.co.jp/company/news/2023/nr_240125.html#sec1)によると、「ダブルケア」という言葉の認知率すら20%と低く、ダブルケアラーへのサポートは大きく不足しているのが実情です。

ダブルケアラーの離職も多い

 ダブルケアは離職せざるを得なくなることも多く、先ほどのソニー生命の調査によると、約3割のダブルケアラーが親の介護や育児、ダブルケアを理由に離職を経験しています。介護も育児も支援サービスはさまざまありますが、介護保険を利用できる範囲には限度があるうえ、育児サービスも平日の日中が中心のため、平日の夜や土日は自分で対応しなければならないことも多くあります。

 サービスの利用にはお金がかかり、仕事を続けながらでは十分に休息も取れないため、負担が積み重なり、離職しなければままならなくなってしまうケースが多くなっています。

家族での分担を話し合う

 すでにダブルケアの状態になっている場合も、今後ダブルケアが予想される場合も、大切なのはまず家族や親族と話し合い、負担を分散できるようにすることです。突発的な出来事で急に仕事を休まなければならない場合も、夫婦の片方だけがいつも休むのではなく交互に休むようにしたり、土日はそれぞれ一人で休める時間を数時間ずつ作ったりするなど、介護と育児を分担することが大切です。

 近場に頼れる親族が住んでいる場合は、定期的に介護や育児のサポートをお願いしてみてもいいでしょう。

本人と介護について話しておく

 また、親が元気なうちに、親本人と介護について話し合っておくことも重要です。どんな風に介護をしてほしいのかなど、介護をされる側にもさまざまな希望があると思いますが、ダブルケアの状況では特に、すべての希望を叶えるのは難しいことも多くあります。介護の希望において、どういったところは妥協してもいいのか、しっかり話し合っておくことで、いざダブルケアが始まったときに負担を軽減することにつながります。

地域の支援制度を組み合わせる

 介護と育児はそれぞれ支援制度があるため、これらの制度を活用することがダブルケアの助けになるでしょう。

 介護に関しては、高齢者のよろず相談窓口とも呼ばれる「地域包括支援センター」でさまざまな相談をすることができますし、自治体の子育ての相談も受け付けている「こども家庭センター」(子育て世代包括支援センター)では、あらゆる相談を総合的に対応する窓口ですので、介護が始まっていなくても、少しでも不安があれば相談できるため、ダブルケアが予想される段階で一度相談しにいくといいでしょう。

 他にも、例えば埼玉県さいたま市など、自治体によってはダブルケアをしている人たちが気軽に交流し、悩みを共有したり、息抜きをしたりできる場所として「ダブルケアカフェ」(https://www.city.saitama.lg.jp/kosodate/map/category9/p113525.html)もありますので、利用してみてもいいですね。

 子育てに関しては、まずは自治体の子ども課などで行っている育児相談などを活用するのがおすすめです。ダブルケアの場合は、一時預かりや病児・病後児保育が利用しやすくなったり、優先的に保育施設に入所できたりすることもあります。どんな支援サービスが受けられるのか、あらかじめ確認して、いつでも利用できるように必要に応じて事前登録をしておくとよいでしょう。

ダブルケアのための相談窓口がある場合も

 自治体によっては、さらに手厚くダブルケアを支援していることもあります。例えば堺市では、各区役所内の基幹型包括支援センターで、ダブルケアラーを対象としたダブルケア相談窓口を開設しています(https://www.city.sakai.lg.jp/kenko/fukushikaigo/koreishafukushi/soudan/doublecare1.html)。保健師、看護師、主任ケアマネジャー、社会福祉士といった専門職員が相談に対応し、さまざまな制度の案内などを行っています。

包括的な支援を目指す「重層的支援体制整備事業」

 また、介護や育児といった分野別の相談・支援体制では対応しきれないダブルケアのような課題に包括的に対応するため、既存事業を組み合わせて「重層的支援体制整備事業」を行っている自治体もあります。

 例えば越谷市では、地域包括支援センターやこども家庭センターなどで連携しながら包括的に相談支援を行ったり、ダブルケアを支援する地域づくりのため、介護支援ボランティアの推進や子育てに関する地域サークルの支援などを行ったりしています(https://www.city.koshigaya.saitama.jp/kurashi_shisei/fukushi/syakaihukusi/chiikifukushi/jyusou.html)

 ダブルケア支援は自治体によって異なりますが、負担を減らすべく、介護や育児それぞれのサポート制度を活用しましょう。ダブルケアに困ったり、今後ダブルケアが予想されたりする場合は、自治体の担当窓口などで相談してみてください。

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