シニア世代のセカンドキャリアに広がる介護職「65才を超えても」6割が就職を希望<実態調査>
健康寿命の伸びとともに高齢者人口が増加するなか、定年を迎えた後も「働きたい」という考え方が当たり前になりつつある。その流れは介護の世界も同じようだ。「シニア世代の介護職の就業実態調査」から判明した介護現場で働く高齢者の実態をお伝えする。
高齢者の割合が過去最多に。高まるシニアの就業意欲
高齢化が加速する日本。2025年には65才以上の高齢者の総人口に占める割合は過去最高を更新したという。反面、元気な高齢者の労働参加が進み、新たな働き手として注目を集めている。
介護職を対象とした求人・転職サービス「レバウェル介護」を運営するレバウェル(親会社:レバレジーズ)が、60才以上の現役介護職323人を対象に「シニア世代の介護職の就業実態調査」を実施。
今回の調査結果を元に、介護の現場で働く高齢者の本音を紐解いていく。
介護職として活躍するシニア世代。「異業種の経験が活きた」との声も
シニア世代の現役介護職員に、介護職に就く前に最も長く従事していた業種を聞いたところ、介護職を除く「医療・福祉職」(16.7%)が最多だった。
次いで「製造業」(13.9%)、「卸売業・小売業」(10.8%)が続き、全体では約6割が異業種から介護職へ転職していることが明らかになった。
今までの経験で培った能力が現在の介護職に活かせているかという質問には、「様々な人と関わってきた経験から得た柔軟な対応力」(52.6%)や「寄り添う姿勢や共感力・傾聴力」(42.4%)といった回答があがった。
人と深く関わる介護職の仕事。介護の専門知識や技術だけでなく、職務経験や人生経験を糧に働いている人も多いようだ。
働きがいや安定性が人気の秘訣。介護の経験が介護職を目指すきっかけに
シニア世代の現役介護職員に、介護職を選んだ理由を聞いたところ「社会に貢献できると感じたから」(26.0%)や「やりがいがある仕事だと思ったから」(24.5%)など、仕事の社会貢献性や働きがいを重視する声が多かった。
一方で、「年齢に関係なく働けると思ったから」(26.0%)や「将来的になくならない仕事だと思ったから」(22.9%)など安定性や継続性を重視した回答も目立つ。
また、「家族の介護をきっかけに関心を持ったから」(22.9%)という回答も多く、自身の経験が職業選択の契機となるケースも少なくない。
現在の仕事で満足している点は、「仕事にやりがいがあり、人や社会の役に立っていると実感できる」(31.0%)が最多。就業理由と満足理由が一致している点も特徴的だ。
「職場の人間関係・雰囲気」(22.6%)や「休みが取りやすく、シフトの調整もしやすい」(21.4%)などの回答も上位にあがり、職場環境や柔軟的な働き方がシニア世代の就労満足度に影響していることがうかがえる。
何才まで介護職として働きたいかという問いには、「70才まで働きたい」(31.6%)が一番多く、次いで「65才まで」(25.7%)、「75才まで」(13.9%)が続く。「できる限り働きたい」(12.7%)を含めると、全体の6割以上が65才を超えても就業を希望しているのが実情だ。
介護の現場で働くシニア世代は正社員の比率が高く、月収は「20〜25万円未満」(36.6%)、「15〜20万円未満」(22.9%)という結果に。
現在の職場に対する不満に関する質問には「給与や待遇」(58.2%)、「身体的負担が大きい」(47.4%)、「業務量が多く負担に感じる」(31.0%)が続いた。
一般的に定年とされる60才。給与や身体的負担といった課題を抱えながらも、シニア世代の介護職は長期的な就業意欲があるようだ。
多様な人材を受け入れる土壌がある介護業界。新しい挑戦は不安や迷いもあるが、「セカンドキャリアを介護職で」と考える元気な高齢者はこれから増えていくだろう。
【データ】
「シニア世代の介護職の就業実態調査」
<調査概要>
調査対象:全国の60歳以上の現役介護職
調査時期:2025年8月1日~8月4日
調査方法:インターネット調査
有効回答者数:323名
調査主体:レバウェル
調査委託先:GMOリサーチ&AI
※レバレジーズの発表したプレスリリース(2025年9月10日)を元に記事を作成
写真/レバウェル提供 構成・文/松藤浩一