「揚げナスは母に食わすな」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第58話
山口県で慢性膵炎を抱える80代の母とふたり暮らしをしている漫画家のうえだのぶさん。栄養士の資格をいかし、母のためにすい臓を労る”脂質控え目”の食事を心がけている。最近の母は脚の不調も抱え、デイサービスのリハビリに通い始めた。そんなうえだ家に訪れた“秋”のエピソード。
草取りは高齢者には危険?
母が週イチでリハビリ型デイサービスに行くようになって1か月。気のせいでなく脚が少おぉぉぉぉし、しっかりしてきました(立ち上がる早さとか、立ってる時間の長さとか)。
そしてこの度、整形外科のお薬がひとつ減りました。減ったのは「神経痛」の薬です。もともと先生に「飲まなくてもいいよ」と言われていたのを、母が「痛みが減る気がする」と言って出してもらっていたのですが、先日の診察で「脚が少しラクになってきた気がします」と母。本人がそう言うのなら「じゃあ、一旦やめてみましょうか」ということになりました。
母の脚が悪くなって以来、初めての「一歩前進」な出来事でした。先生には、介護予防のリハビリ型デイサービスに通い始めたことも伝えました。
先生「そうですね、ちょっとキツくても筋肉は鍛えた方がいいです」
私「先生に言われた通り、家でも歩くようにさせてます。洗濯干しとかゴミ出しとか」
先生「ははは、いいですね」
そこへすかさず母。
「“草取り”も脚が鍛えられますよね~♪」
その瞬間、ピキッと凍り付く診察室。
先生「いや、草取りはダメです」(真顔)
私「草取りしていいなんて一言も言ってないよね?」(真顔)
看護師さん達「・・・・・・」(真顔)
もうね、脚が悪くなってから何度このやり取りを繰り返してきたか…。
整形外科でも整体院でもなんなら薬局の薬剤師さんからも「草取りで脚を壊すお年寄りは本当に多いんですよ~。あの姿勢がダメなんですよ~」って言われてるのに。それなのに…。
草取り、したい気持ちはわかるんです。母が脚を悪くしてからは、私が毎朝30分早起きして、家の周りの草取りと庭木の手入れ(伸びた枝をバッサバサ切るだけ)をやってます。ぶっちゃけ楽しいです。
でもね、脚がまだ治りきってないのに。「自分の状況わかってる?」「なぜ口に出す?」。同じことは食生活にも言えるのです。
旬の秋ナスですが「油にはご用心」
秋ナスがおいしい季節になりました。このナスがですね、油の吸収(吸油率)がエグいんです。
「脂質1食10g目安」の我が家では、取り扱い注意の野菜です。でもナスって油と合わせた方がコクが出ておいしいんですよねー。なので、わが家では薄~く油を塗ったフライパンで、じっくりじっくり焼くか、山口県では「天ぷら」と呼ばれる「練りものを揚げたもの」を刻んで一緒に煮たりします。私が作る時は、ね。
しかし、母が作るときは、何度言っても油を「ドバーッ」と使うんですよ。それどころか、料理をしてる私の横で、「油それだけじゃおいしくないわーねー(ないでしょ)」と文句を言います。
おいおい、誰のために油減らしてるんだよー‼ウキー‼
草抜きにしてもナス炒めにしても、「自分のやりたいこと」に関しては、人の言う事は聞かないし、隙あらば実行しようとするので、本当に困ります。困ります(腹が立つので2度言います)。
連載を読んでくださる皆さんからは、「仲がいいね」と言われますが、こういう小さな怒りが時々ドカーンと爆発して、「もー笑うしかないわー」的なネタになってるんですよー。
当事者は(お互い)仲がいいとは思ってないと思います。ははは。
というわけで最近この2つの案件で爆発したので、今母には「草取り禁止令」と「秋ナス調理禁止令」が出ています。
母はかけ放題プランのガラケーで、「本当キツイんじゃけー(だから)」と友達にグチっています(聞こえてるぞ!)。「このくらいの距離がちょうどいい」。そう思いながら暮らしております。
NO老いるMemo|ナスの「ナスニン」
「秋ナスは嫁に食わすな」って最近聞かなくなりましたね。嫁姑で同居する人が少なくなってるから? って、それは置いといて…。
ナスで注目すべきは「皮」。あの紫色は「ナスニン」というアントシアニン系のポリフェノールで、ブルーベリーと同じく眼の疲労回復にも関係する成分です。アントシアニンの主な機能は「抗酸化作用」。秋ナスは夏より皮が柔らかくなるそうなので、一緒に食べたほうがお得ですね。
アントシアニンは水溶性なので、ナスの煮物は薄味にして汁も一緒に食べるようにしてます。夏場は冷蔵庫で冷やした煮物を食べていましたが、涼しくなったら油揚げといっしょに熱々お味噌汁もいいなあ。
「揚げナスは母に食わすな」のわが家ですが、やっぱりちょっぴり油物を加えたい私です。
*参考資料「調理のためのベーシックデータ 第6版」(女子栄養大学出版部)。「もっとからだにおいしい野菜の便利帳」/白鳥早奈英・板木利隆 監修(高橋書店)
絵と文
漫画家・うえだのぶ
イラストレーター・漫画家。58才。山口県で83才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja
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