「グループホーム」見学時のチェックポイント「入居後の生活をイメージしながら環境や雰囲気を確かめて」【専門家解説】
「グループホーム」とは、比較的安定した症状の認知症のかたが共同生活を送る施設のこと。(認知症対応型共同生活介護)とも呼ばれ、入居年齢や要介護度に条件があります。「クループホーム」への入居を検討する際には、見学がいざ見学に行こうと思っても何を質問したらいいのか、確認したらいいのか分からない。そうならないために、介護職員、ケアマネの経験を持つ中谷さんにグループホームを見学する際のポイントを伺ったのでぜひ参考にしてください。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X https://twitter.com/web19606703
実際に訪れることでわかることがある
施設入居を検討する際に欠かせないのが「見学」です。実際に足を運ぶと、パンフレットやインターネットの情報では伝わらない部分が見えてきます。限られた見学時間を有効に使うには、確認したいポイントや質問を事前に整理しておくことが大切です。
グループホームの特徴と2つのチェックポイント
まずは、グループホームへの入居を検討する時に必ず押さえておきたい2つのポイントをご紹介します。
「グループホーム」(認知症対応型共同生活介護)とは?サービス内容や費用をわかりやすく解説
【1】グループホームの入居条件を確認する
まず、グループホームに入居できるのは、施設と同じ市区町村に住民票があるかたに限られます。これは、グループホームが介護保険の「地域密着型サービス」に属するサービスとなるためです。
見学するグループホーム入居希望者の住んでいる地域外に所在する場合は、入居の対象外となるため注意が必要です。
<そのほかの条件>
●原則として65才以上、要支援2または要介護1以上のかた
●若年性認知症と診断された40才〜64才の要支援2または要介護1以上のかた
●医師から認知症の診断を受けている
【2】入居するかたに向いているか確認する
グループホームは1ユニット(グループ)につき5〜9人の少人数で共同生活を送ります。このため、入居者同士がなじみの関係になりやすく、アットホームな雰囲気が特徴です。
一方で、人付き合いが苦手なかたや一人で静かに過ごすことを好むかたにとっては、不向きな場合もあります。見学時には、グループホームの環境や雰囲気が入居するかたの性格や希望に合っているかを確認してください。
グループホームの見学に行く前に注意したい3つのポイント
見学に行く前に知っておきたい3つのポイントを確認しておきましょう。
【1】本人と一緒に見学する
できるだけ入居する本人と一緒に見学に行きましょう。本人でなければ気づけない不便さや欠点に気づくことができます。本人が見学時に感じた印象や意見は、施設選びの大切な判断材料になります。
【2】複数人で見学する
施設見学は、家族や友人など、複数人で行くことをおすすめします。1人では見逃してしまいそうなポイントも、複数人で見学すると気づくことができるでしょう。
また、見学後の振り返りや入居の検討を行う際にも意見交換がしやすくなるため、より適切な判断につながります。
【3】入居後の生活をイメージして見学する
見学の際は、ただ施設内を見て回るのではなく、入居後の生活をイメージしながら見学することが大切です。
館内がバリアフリーで車いすでも安全に移動できるか、トイレや洗面台は使いやすいか、居室の収納スペースは十分かといった点を確認しましょう。
さらに、入居してからの過ごしやすさは、スタッフの仕事ぶりや雰囲気、入居者への対応が大きく影響します。そのため、スタッフの表情や態度、入居者とのやり取りの様子もしっかり観察し、安心して生活できる環境かどうかをチェックしてください。
グループホームの見学時にチェックしたい6つのポイント
実際に見学に行った際、スタッフに確認しておくべきことや、見ておくといい所などをまとめました。
【1】居室・共有スペースの設備と配置
居室は、広さや日当たり、窓からの眺め、テレビや電話、ネット回線の有無を確認しましょう。また、共有スペースのリビングは、広さや明るさに加えて、整理整頓や清掃が行き届いているかも大切なチェックポイントです。
多くのグループホームでは、共有のリビングを中心に居室が囲むように配置されています。居室を出るとすぐにリビングがある施設では、プライバシーへの配慮が十分か、リビングの音や人の声がどの程度居室まで聞こえるかを確認しておきましょう。
【2】個別のニーズ・ライフスタイルへの対応
通院介助や買い物、外出支援などのサービスの有無、クラブ活動や趣味を楽しめる活動があるかなど、一人ひとりのニーズに応じたケアが提供されているかを確認しましょう。
行事やレクリエーションの内容や頻度、地域の人と交流する機会があるかどうかも見学時の大切なチェックポイントです。
【3】家具などの持ち込み、備品
グループホームによっては、布団や車いす、居室に取り付ける手すりを自身で購入(またはレンタル)する場合があります。ベッドやカーテンは備え付けのものがあるのか、家具や私物をどの程度持ち込めるのかについても、見学時に質問しておくとよいでしょう。
【4】食事サービス
多くのグループホームでは、入居者と介護スタッフが協力して食事を作りますが、施設によっては専任の調理スタッフがいるところもあります。施設によって食事の提供方法が異なるため、見学時に確認しておくとよいでしょう。
さらに、メニューの内容や持病や身体の状態に合わせた食事が用意されているか、食事中の見守り体制はどうかといった点も合わせてチェックしておきましょう。
【5】介護体制
グループホームの介護体制は施設によって異なり、国の基準以上に手厚くスタッフを配置しているところもあります。介護スタッフの配置が手厚いグループホームでは、その分スタッフの目が行き届き、質の高いケアを受けることが可能です。見学時には、介護体制についても確認するようにしましょう。
【6】医療・看護支援の充実度
グループホームでは、医師との連携や看護師の配置が義務付けられていないため、医療サービスを提供することができません。
しかし、最近では看護師を配置したり、近隣の訪問看護ステーションと連携して、看護体制や医療支援を充実させるグループホームが増えています。
見学の際には、看護師の配置状況や訪問看護ステーションとの連携について確認しておきましょう。とくに持病のあるかたは、どのような医療サービスを受けられるのか詳しく聞いておくと安心です。
見学だけで入居を判断できない場合の対処法
見学だけで入居を判断するのが難しい場合、グループホームが運営している「共用型デイサービス」や「ショートステイ」を利用して判断することをおすすめします。
「共用型デイサービスは、グループホームのリビングで入居者と一緒に日中の時間を過ごすため、グループホームの生活環境が自分に合うか、他の入居者とうまく付き合っていけそうかを見極めることが可能です。
また、ショートステイでは、実際に施設に宿泊するため、日中では確認することができない夜間の様子や居室の使いやすさなどを確認することができます。
なお、体験入居としてショートステイを利用する場合は、介護保険の適用外となるため、滞在日数に応じた費用を実費で負担する点に注意しましょう。
共用型デイサービスとショートステイの利用については、すべてのグループホームが行っているわけではないので、まずは担当のケアマネジャーやグループホームの見学担当者に確認してみてください。
グループホームへの入居を検討されているかたは、今回紹介した内容を参考に、ぜひ見学に足を運んでみてください。