「介護医療院」を見学する際の5つのポイント 月額費用の話は具体的な数字で確認を
介護医療院とは「医療的ケア」と「介護サービス」が受けられる介護施設です。長く生活することを想定した住まいのため、立地条件が合ったとしても、月額の支払いをはじめ、入居してからの施設の雰囲気や食事が合うのか、心配は尽きません。そこで、介護福祉士やケアマネージャーとしての経歴を持つ中谷ミホさんに「介護医療院」の見学ポイントを伺いました。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703
医療が必要な要介護者のための公的施設「介護医療院」
介護医療院とは、長期療養のための医療サービスと日常生活を支える介護サービスを一体的に提供する、公的な介護施設です。医療ニーズの高いかたを対象としているのが特徴です。
介護医療院は、受けられるサービスや設備が、一般の老人ホームとは異なることがあります。そのため、施設の特徴や環境が本人に合っているかどうかを見学を通じて確認することが重要です。
「介護医療院」とは?費用はいくら?入所条件やサービス内容、メリット・デメリットを解説
介護医療院の特徴と注目すべき3つのポイント
介護医療院の基本的な特徴と見学する際に注目すべきポイントは、以下の通りです
1.施設には「Ⅰ型」と「Ⅱ型」タイプがある
介護医療院には、「Ⅰ型」と「Ⅱ型」の2つのタイプがあります。
Ⅰ型は、医療ニーズが高く、重度の要介護者を対象に高度な医療ケアを提供します。医療ケアが充実しているため、Ⅱ型よりも費用が高めに設定されています。
一方で、Ⅱ型はⅠ型ほど高度な医療を必要としないかたを対象としています。医療従事者の配置もⅠ型に比べて少なく、比較的容態が安定しているかたが利用する施設です。
★注目
入所を検討する際には、各タイプの特徴と費用について理解し、入所するかたのニーズに合った施設かどうかを確認することが大切です。
2.居室(療養室)は多床室が一般的
介護医療院の居室は、2〜4人の多床室が一般的です。室内は、パーティションや家具で室内を仕切られており、入所者のプライバシーが確保されています。
1人あたりのスペースは、病院の多床室よりも広い約8平方メートルですが、居住空間としては狭いと感じるかたもいるかもしれません。個室が設置されている施設もありますが、数が限られているため、希望しても利用できない場合があります。
★注目
プライバシーを重視したいかたや、他の人の生活音が気になるかたは、個室の有無やその数を確認すると良いでしょう。
3.レクリエーションやイベントの充実度
レクリエーションやイベントの充実度は、施設生活の満足度にもつながるため、施設を選ぶ際の大切な判断材料となります。
しかし、介護医療院は、特別養護老人ホーム(特養)などと比べると、レクリエーションやイベントの回数が少ない傾向にあります。
★注目
見学時には、どのような活動が行われているのか、また頻度や内容も聞いてみましょう。
見学時にチェックしたい5つのポイント
1.リハビリテーションの充実度
介護医療院のリハビリ体制は施設によって異なるため、見学時にしっかり確認することが大切です。
理学療法士、作業療法士といったリハビリ専門職が在籍しているか、その人数や経験年数も含めてチェックしましょう。また、リハビリ室の広さや器具などの設備が十分に整っているかも確認します。リハビリの実施頻度や1回あたりの時間も聞いておくと良いでしょう。
2.費用の質問は具体的に
介護医療院では、基本料金に加えてリハビリや特定の医療行為に対して追加料金が発生する場合があります。月額費用が高額になる場合もあるため、見学時に具体的な費用を確認することをおすすめします。
また、介護医療院では、所得に応じた軽減措置が受けられます。費用面が心配というかたは、これらの制度について担当者に尋ねておくと安心です。
3. スタッフの対応
施設スタッフが入所者や家族にどのように接しているかも確認すべきポイントです。入所者への声かけや表情、介助の際の配慮が行き届いているかをチェックしましょう。さらに、スタッフ同士のコミュニケーションの様子も見ておくと良いでしょう。雰囲気が良い施設は、入所者が安心して過ごせる環境が整っていることが多いです。
4. 周辺の環境 防災面も確認
施設が静かで落ち着いた場所にあり、家族が通いやすいかどうかも重要です。交通の便が良い場所にあると、家族が訪問しやすくなります。また、洪水や地震などの自然災害のリスクが低い地域かどうかも確認しておきましょう。施設の防災対策や避難計画についても質問しておくと安心です。
5. 食事の内容
入所者の健康状態や嗜好、嚥下機能に応じた食事が提供されているかを確認しましょう。栄養バランスが考慮されていることはもちろん、個別対応がきちんと行われているかも大切なチェックポイントです。また、季節感を取り入れたメニューやイベント食など、食事を楽しむ工夫がされているかどうかも見ておきましょう。
事前準備しておくべき3つのこと
介護医療院を見学する前には、しっかりと準備を行うことが大切です。
まずは希望する施設に事前予約をし、見学の日程を調整しましょう。予約なしでは見学できない場合もあるため、早めの問い合わせが必要です。ここでは、見学前の準備と当日持参するものをご紹介します。
1.パンフレットやホームページの情報を確認する
見学前には、施設のパンフレットやホームページをよく確認し、施設で提供される医療・介護サービス、料金体系といった基本情報を把握しておきましょう。
事前に理解しておくと、見学時に確認すべきポイントが明確になり、担当者に具体的な質問をしやすくなります。また、他の介護施設と比較する際にも役立つので、希望に合う施設を選びやすくなります。
2.見学は複数人で見学に行く
見学には、できるだけ家族や親しい人と一緒に行くことをおすすめします。複数人で見学することで、1人では見落としがちな点が確認できます。
また、見学後には意見交換ができるので、入所するかたに合った施設かどうかを判断しやすくなります。
3.当日持参するものリスト
見学当日は、以下の持ち物を持参しましょう。
●メモ帳・ペン:施設の印象や気づいた点を記録します。
●カメラ付きスマートフォン(またはカメラ):気になる場所の写真を撮り、後から確認できます。(撮影は必ず施設の許可を得てください)
●質問リスト:事前に気になる点をまとめておくと、スムーズに質問できます。
●入所希望者の医療情報:持病や医療ケアの情報を伝えやすくするために準備します。
スムーズな見学と最適な施設選びのために、事前準備をしっかり行い当日にのぞみましょう。
まとめ
介護医療院は長期入所が前提となるため、見学時には、提供される医療・介護サービスや費用、リハビリ体制が希望に合っているかをしっかり確認することが大切です。
また、レクリエーションやイベントといった「生活の楽しみ」がどの程度実施されているかも確認するポイントです。
介護医療院への入所を検討されているかたは、今回紹介した内容をぜひ参考にしてみてください。