新たな認知症ケアへ「精神科医師オンライン相談サービス」を介護施設へ提供開始
2030年には高齢者の約4人に1人が認知症になると言われている今、増え続ける認知症患者への対応策は社会にとって大きな課題と言えるだろう。そんななか、新たな認知症ケアの一環として、精神科医師がオンラインで介護施設をサポートするサービスの提供が始まった。
認知症時代の到来へ向けて
超高齢化社会へと突入し、それに伴い増える高齢者の認知症患者への対応は、多くの介護施設でも課題となっている。そこで、介護事業所向けに医療ソリューションを提供するドクターメイトは、8月より介護施設利用者の認知症ケアに対して精神科医師がオンラインで相談を行うサービスを一部地域で提供を開始した。
背景にある認知症をとりまく現状
厚生労働省研究班によると、認知症の患者数は2030年に593万人(※1)にものぼると推計されている。さらに認知症の予備軍である軽度認知障害(MCI)を含めると、2030年の認知症患者数は1,100万人を超すという。これは2030年の高齢者の推計人口3,696万人(※2)の約30%であり、約4人に1人が認知症患者になる時代が来ると示している。介護施設でも同様に認知症の利用者は年々増えていくことが想定されるだろう。
※1 厚生労働省研究班(代表者・二宮利治九州大教授)による調査より(令和6年5月)
※2 国立社会保障・人口問題研究所による調査より(令和5年4月)
2025年には国民の5人に1人が後期高齢者となるという、所謂2025年問題。それを目前に、介護業界では要介護認定者数は増加の一途を辿り、2025年には815万人(※3)になると推定されているようだ。通常のケアに加え、認知症など各々の症状に合わせたケアも行う必要があり、増え続ける現場での負担への対策が課題のひとつとなっている。
※3 経済産業省「将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会」より(平成30年3月)
深刻な介護現場での精神科医師不足
また、認知症などを担当する精神科医の不足も大きな課題となっているようだ。精神科医の数は増加しているものの、2022年時点で全医師数の5%程度(※4)に留まり、精神科七者懇談会の見解でも、介護施設における精神科医の不足が指摘(※5)されている。
前述した認知症の患者数の増加、そして精神科医の不足により、精神科医ひとりあたりが診療しなければならない患者数はどうしても増えてしまう。患者ひとりに割く時間は少なくならざるを得ず、適切な認知症ケアを行うことができない介護施設も多いという。
そこでドクターメイトは、認知症ケアに対する精神科医師のオンライン相談サービスをリリース。まずは一部地域の特別養護老人ホームから、持続可能な認知症ケアへのサポートを開始した。
※4 厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」より(令和3年3月)
※5 精神科七者懇談会「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会第4次中間取りまとめ」についての見解より(令和元年5月)
「精神科医師オンライン相談サービス」の概要
主なサービスはオンラインでの日々のケアへのアドバイスだ。相談したい利用者の情報を施設より事前に受け取り、それをもとに認知症や高齢者医療に強い精神科医が環境調整や薬剤調整のアドバイスを行う形となる。
アドバイスをもとに施設にて利用者へのケアを実践、経過報告を担当の精神科医へ再度共有し、再度アドバイスをもらい実践、というサイクルをこなしていくことで、重度化が進むと負担が重くなる認知症のケアをサポート。利用者本人、家族、施設職員、それぞれのQOLの向上を図ることができる。
また、施設内で共有するための相談及びアドバイスのレポートの作成といったサービスも。施設内ナレッジの蓄積、家族との相談、精神科のクリニックや嘱託医との情報連携など幅広い用途で利用されているようだ。
【主な提供サービスなど】
・認知症ケアのアプローチ方法の見直し
・認知症状の内科的なチェックの見直し
・医師による症状に合わせたアドバイス
・中等度からの最適な服薬サイクルの検証
・相談レポートの作成
より多くの介護施設への提供を目指して
高齢化の影響を色濃く受ける介護施設では、利用者の認知症の割合も非常に多くなっている。当事者も介護者も自分らしく過ごすために認知症ケアへの知識向上が必須となっている一方で、不足する精神科医などの問題から適切な認知症ケアを行えている介護施設はそう多くはない現状。この問題を解決するために、ドクターメイトの代表取締役医師である青柳直樹さんはオンラインでの認知症ケアを広げる取り組みを始めた。
「今は一部地域に限定して、現場の皆さんのためになる認知症ケアのノウハウをしっかりと蓄積している段階だが、これから対象エリアを広げていき、より多くの介護施設にサービスを提供できるようにしていきたい」
実際にサービスを導入した施設からも、「今後より大きな相乗効果が生まれるものと大変期待している」と前向きなコメントが寄せられているように、このサービスが広まればより多くの施設利用者、その家族、施設職員が伸び伸びと過ごしやすくなるだろう。今後の発展を楽しみに待ちたいところだ。
【データ】
ドクターメイト
https://doctormate.co.jp/
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※ドクターメイトの発表したプレスリリース(2024年8月21日)を元に記事を作成。
図表/ドクターメイト株式会社提供 構成・文/秋山莉菜
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