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兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第262回 寝たきりの兄の介護】

 認知症の兄を、在宅で介護しているライターのツガエマナミコさん。ベッドから動けなくなってしまった兄は、ついに特養への入所が決まりました。いつから入所できるかは、まだはっきりしていませんが、長く大変だったマナミコさんの介護生活も、大きな節目が近づいてきたようです。

   * * *

60代は介護に縛られることなく生きてみたい

 最高気温が35℃以上の日を「猛暑日」と呼ぶそうですが、この夏はさらにその上の「〇〇日」が必要になりそうだと言われております。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 ツガエは相変わらず介護生活。でもだいぶ楽になりました。

 倒れた直後の兄は、食べたり飲んだりが困難だったため、栄養の入ったゼリー飲料が主食でございました。でも最近は食欲が増して介護用の市販のレトルト食を買いあさるようになりました。「噛まなくてよい」「舌でつぶせる」「容易に噛める」「歯ぐきでつぶせる」などと書いてあるもので、おかゆ・おじやからおかず、スープ類までいろいろな種類があり充実しております。味もそこそこ悪くなく、適度なとろみがついているので食べやすく、食べさせ易くもあります。

 先人は、おかゆから何から全部家族が作らなければならなかったのでしょうから、それを考えればわたくしは恵まれた時代に生まれてきたと痛感しております。

 もちろんケアマネさまや介護ヘルパーさま、訪問看護師さまにも大変助けられております。兄はお通じが自力で出せないままなので、看護師さまには週1回摘便(肛門に指を入れて便を出す医療行為)をしていただいております。本当は週2回がベストだそうですが、要介護度の区分変更通知がまだ届かないので、介護保険点数の関係で週1のまま。幸いショートステイにも看護師さまがいらっしゃるので、ショートステイで摘便していただいてもおります。

 週に1度通っていたデイケアは少し前に解約いたしました。デイケアは運動や認知機能を落とさないためのケアがメインの施設。「来ていただいても、寝たきり状態ではほとんど何もしていただけないので、ただ居るだけになってしまいます」とやんわりダメ出しされたのでございます。突然通えなくなって、結局それきりになってしまいましたが、致し方がございません。菓子折りを持ってご挨拶に伺い「大変お世話になりました」というと「ツガエさんは楽しい方だったので寂しくなります」と社交辞令でも言っていただけたのがせめてもの救いでございました。

 最近のわたくしの介護は、兄の口に食事を運ぶことと薬を飲ませることと、ヘルパーさまが来られない曜日(月木金日の夕方のみ)のオムツ交換をすることぐらいでございます。

 兄がまき散らす排泄物を掃除することがなくなったわたくしは精神的に幸せな日々を送っております。もちろん兄のご機嫌が悪いときもあるのですが、基本は目があえば笑顔で「ヤッホー」と言ってくれる穏やかな兄でございます。先日もわたくしが一人でオムツ交換をする際に「頑張って」と頭をポンポンしてくれました。そんな兄をみていると、施設に入れなくてもいいような気がしてまいります。でも、ここでそれをしたら後悔するときがくる。「あのとき施設に入ってもらえばよかった」と思う時が必ず来るとわかっているので心を鬼にいたします。

 思えば2013年末の父親の交通事故から始まり、母親の看取りと兄の認知症発覚がほぼ同時にやってきて、介護に明け暮れた50代でございました。「もう十分頑張った」と自画自賛できるくらいはやってきたつもりでございます。そのご褒美として、せめてまだ体が動く60代は介護に縛られることなく生きてみたい。そう思えたのも読者の皆様の「ここまでよくやってこられた」等のお声があったからこそ。本当にありがとうございます。

 たとえ施設入居しても介護から100%解放されるわけではございませんが、80%ぐらいの肩の荷は下りることでしょう。
その前に目下の目標は「健康診断」を受けること。家具やテレビも買わないと…などなど当面は入居準備でせわしなくなりそうでございます。

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文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性61才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現65才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。

イラスト/なとみみわ

 

コメント

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この記事へのみんなのコメント

  • ふーこ

    まなみこさんl、だいぶ精神的にも肉体的にも楽になられた様に思います お兄さんのオムツ交換される時、頭をポンポンとされるとの事、お兄さんは、ありがとうすまないね と言われて居られるように、感じましたよ

  • あこ

    ようやく落ち着いた日々を送られるようになり、心からホッとしています。歩けて元気な人の排泄問題の悲惨さは経験した者にしかわからない壮絶な物です。その状態から解放された喜びは如何ばかりでしょう。区分変更の手続きは超特急でお願いしたいものです! 介護度は最高になると思いますので負担額も増えてはしまいますが受けられるサービスを考えたら1割負担でサービスが受けられるのでありがたいです。デイケアではなくデイサービスになれば入浴も摘便も可能だし、ぜひ利用されることをお勧めします。訪問介護ももっと使えるしショートステイも使えます。介護保険を上手く使えるようにケアマネさんにプランを立てていただいてマナミコさんの負担を減らしてください。お兄様の優しさを感じると在宅で頑張ろうと思うお気持ちも良くわかります。私も介護保険を上手く使えばそれも一案かと思います。在宅介護だと色々な補助も出るのです。あくまでもマナミコさんの負担の度合いで考えれば良いのではと。特養は申し込みだけして保留にしておいても良いのですから。私は夫がまだ歩き回るのでグループホームに入所させていますが、逆に寝たきりになったら在宅にしようと思っているのです。夫のためにも私のためにもそれが良いような気がして。ただ私自身が高齢なので最終的には特養にお願いすることンあるかもしれませんが。今は週に一度帰宅させてお昼ご飯を家で食べて半日一緒に暮らして夕方施設に送って行くという生活をしています。夫の状態も安定していて私も心に余裕が持てています。でも特養い入所したらkのパターンは維持できないと思うので、寝たきりなら逆に在宅の方が良いのではとも思ってしまうのです。

  • RI-ちゃん

    マナミコさん、ここまでいろいろ大変だったでしょう。でも、よかったです。 お兄さまにとっても、どうしようもなくあちこち排泄してまわっていた時より、自分で動けなくなって、なんだか落ち着いていられることが、よかったかもしれない、と、思います。だから、頭ポンポンしたり穏やかな笑顔ができるのかも・・なんて思っています。 施設も決められたんですね。失礼ですがとても参考になり、また学ばせていただいています。心配りのある優しいスタッフさんいっぱいの施設でありますように。 また、施設の話、マナミコさんのお話、続けてくださいね。

  • そろばんの日だ~

    お兄さんの穏やかさが戻ってきて救われます。酷い粗相や暴言にもよくお世話なさったこと、尊敬しています。また、この連載のお陰で歩き回る認知症患者はなかなか施設に入れない事実を知ることができました。以下は全くの妄想ですが、認知症がこのまま不治の病であれば、近い将来、初期は進行を抑える薬物治療をするが、やがて徘徊や暴言、不潔行為などが約1ヶ月以上続いたら逆に早く進行させて寝たきりにしてしまう治療(?)がなされるようになるのでは、と思います。(いや実際今もなんとなくそうなっているのかな)現在の延命治療に関する聞き取りのように、まだ意志疎通ができる認知症初期の段階で本人に確認をするようになる気がします。これだけ人手不足な世の中ですからいずれ極端な場合、安楽死も視野に入ってくるのかもしれません。もちろん家族等の介護者が徘徊しようと、排泄物を撒き散らかしてもいい、どのような状態でもいいから1日でも元気でいてほしいという場合は例外です。 しかし認知症にかかった後の本人の意思の変化はどうなのですかねえ…亡き身内は「わしが耄碌して自分で下の始末ができんようになったら川にでも棄ててくれ!人様の迷惑にはならん!」と言っていましたが、認知症以降は「ずっとずっと長生きしたい!」と無邪気な笑顔で話していました。 以上、妄想失礼しました。どうかマナミコさん、いろんなことが順調でありますように。 そして大きなご褒美としてこれからはご自身の人生を楽しんでください。

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