兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第259回 検査結果発表!】
ショートステイ先で倒れ、その後、歩けなくなり寝たきり状態の兄。神経内科で、内臓疾患を確認する血液検査、脳波、そして「歩けないのは、もしかすると頸椎や脊椎になにかあるかも」とのことで頸椎のMRI検査も受けました。その検査結果がついに出たのです。兄が倒れてから怒涛の日々を送ってきた妹のツガエマナミコさんが現在の心中を綴ります。
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兄は健康体でした!
脳波と頸椎のMRI検査から3日後に検査結果を聞きに、また兄を連れて介護タクシーで病院に出向きました。出た結果はなんと「特に問題なし」!
脳波検査では、てんかんを示す明らかな波形は見られませんでした。ただ、救急搬送された病院で撮られた脳の画像では、てんかんと言っていい様子をしていたので、予防的にてんかんのお薬を処方されました。
頸椎や脊椎のMRIでも異常はなく、足や腕の動かし難さにつながるようなものはみられませんでした。
同じく血液検査も、多少のH(high)やL(low)の文字が見られますが、治療が必要なものは何もなく、言ってみれば健康体。唯一「甲状腺の数値だけ気になるので、1年に1回程度は検査を受けたほうがいいでしょう」というお話でした。
こんなに突然動けなくなってしまったにもかかわらず、それらしい異常がないということは、本人の運動能力の低下としか言いようがございません。
確かに脳のMRI画像ではだいぶ空洞化が進んでおります。全体の活動が弱まっているところにきて、倒れて動けなくなり筋力が激減し、そこから復活しようという意欲がゼロであることが今なお寝たきりの理由と理解いたしました。
ある意味「元気で寝たきり」が、兄にとってはベストかもしれないと思っております。
これから兄が施設に入ることを考えると「歩けないままでいて」と願わざるを得ません。
どこでも構わず排泄をするようでは、職員や入居者の方々にご迷惑でございましょう。
どんなにお優しい人だって本音では「ツガエ兄さん、勘弁してくださいよ」と思って当たり前でございます。でも寝たきりなら多少優しい気持ちで接していただけるはず。現実に、わたくしがそうだから間違いございません。
排泄物をまき散らされている間は、病気だとわかっていても優しくできない。仕事だと割り切っても心はささくれてストレスMAXでした。でも寝たきりになったら汚れるのはベッドの中とせいぜいその周辺だけ。オムツ交換は大変ですが、ヘルパーさまが毎日来てくれますし、面倒なのは食事の全介助だけなのです。今から思えば家のいたるところで排泄していて、それを掃除していたなんて考えられません。我ながらよく耐えられたと思います。ほんの1か月前までそうだったのに、もうあの生活には戻りたくない。もう想像しただけで恐怖でございます。
そう、兄のお尿さま対策として、家中に張り巡らしていたペット用シートもついに全部取り外しました。貼っては汚され、汚されては貼り替えていたペット用シートとも永遠にお別れ。数えたら25枚もありました。今はなんと清々しい部屋の眺望でございましょうか。
兄は、高級エアベッドの上で両手を頭の後ろで組み、足も優雅に組んで、まるでリゾートホテルのプールサイド状態でございます。エアコンの除湿も効かせておりますし、リビングの大きな窓から青い空が見えて、今日は天国でございましょう。
しかし、そろそろ特養入居へ本格始動でございます。スッタモンダで長引いてきた特養の面談や見学を開始しようと思っております。こうご期待!
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性61才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現65才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ