梅雨の湿気が招く危険なカビ(真菌)の種類とすぐ病院にかかりたいカビ起因の病気「長引く咳はカビが原因かも」
気持ちの良い新緑の5月が終わり、また雨の湿気でじめじめとする梅雨がやってくる。日本気象協会の発表によると、2024年の梅雨入りは沖縄・奄美で5月中旬からと平年並みだが、降水量は多くなることが予想されている。
間近に迫った梅雨で気をつけたいのが、湿気が原因で起こるさまざまな体の不調。そこで、湿気による不調や病、その対策を専門家に聞いた。
教えてくれた人
■婦人科医・松村圭子さん/成城松村クリニック院長。漢方を取り入れた治療を行う。主な著書に『40歳からの女性の不調にやさしく効く漢方の本 』(日東書院本社)など多数。
■内科医・久手堅司さん/せたがや内科・神経内科クリニック院長。著書に『気象病ハンドブック 低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』(誠文堂新光社)、アプリ『頭痛ーる』の監修も行う。
■医師・渡邉哲さん/千葉大学真菌医学研究センター・医学部附属病院感染症内科にて、真菌症専門外来を担当。国立感染症研究所と連携をとり国内外の真菌症を研究している。
「東洋医学では、余分な水分が溜まることで引き起こされる心身の不調を“湿邪(水の邪気)”と呼びます。湿気が体に入り込んだり、体から余計な水分をうまく排出できなかったりすると、体内に滞った水分が、さまざまな悪影響を及ぼします。たとえば、頭部に水分が溜まると頭痛やめまい、胃に溜まると胃もたれや食欲不振、体全体に溜まるとむくみや冷えを起こします」
とは、漢方外来を併設する成城松村クリニック院長の松村圭子さんだ。
「東洋医学における“湿邪”とは、西洋医学における“気象病”に該当すると言ってもよいでしょう」
と、せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅司(くでけんつかさ)さんは話す。
「雨が降るのは低気圧になるから。人は、地球を覆う大気圧に負けないよう、体の内側から同じ圧力で押し返すことでバランスをとっています。しかし、呼吸や体温、血圧などを司る自律神経が乱れると、気圧の変化に対する調整がしづらくなり、体がストレスにさらされます。特に、気圧が変わると耳の中にある内耳が反応して頭痛やめまいなどを引き起こします」(久手堅さん)
命を脅かすのは湿気で繁殖するカビ
湿気は湿邪や気象病の原因になるだけではない。もっと恐ろしい病の原因にもなる。それが、カビ(真菌)を起因とする病気だ。
一般的に気温25℃、湿度70%を超えるとカビが発生する。ではどのようなカビが人に悪影響を与えるのか。
「カビは年中、どこにでも浮遊しており、私たちは常にそれらを吸って生きていますが、基本的には悪さはしません。水回りでよく見かける通称“クロカビ”(クラドスポリウム)も、アレルギーを引き起こすことがありますが、人を死なせるほどの害はありません。注意したいのは“アスペルギルス”というカビです」
とは、千葉大学真菌医学研究センターの医師・渡邉 哲さんだ。アスペルギルスはコウジカビともいい、一部の菌種がみそやしょうゆ、日本酒を造るために用いられてきた。有益な面もあるが、ほかのカビに比べて肺の感染症を起こしやすいという。
「結核になったことがあるなど肺に基礎疾患がある人が、アスペルギルスなどのカビを吸うと、“肺真菌症”などを発症しやすくなります」(渡邉さん・以下同)
身近なカビの危険性 覚えておきたい5種
◆アオカビ(ペニシリウム)
主に食品に生える青緑色のカビ。ブルーチーズや抗生物質・ペニシリンの精製に使用される種類も。有毒なものもあり。
◆クロカビ(クラドスポリウム)
最も多く空中に浮遊し、木材、皮革、繊維などを劣化させる黒色のカビ。アレルギー症状を引き起こすことも。
◆コウジカビ(アスペルギルス)
日本酒やしょうゆなどを造るのに用いられる一方、発がん性の高い菌種も。
◆ススカビ(アルタナリア)
野菜や果実に生えて腐らせる灰色や黒色の綿毛のようなカビ。有毒。
◆アカカビ(フザリウム)
浴室、洗面所、トイレなどに発生。風呂や台所などで見られるピンク色の汚れはアカカビではなく酵母菌の「ロドトルラ」。
肺に基礎疾患がなくても、全身の免疫力が下がっていると感染しやすいという。感染すると、咳や痰といった風邪や喘息のような症状が出て、最悪、呼吸不全に。病理剖検の調査によると、20人に1人はカビが原因で亡くなっているという。
「対策としては、規則正しい生活や運動などで自己免疫力を高めるのはもちろん、古い建物や汚い場所には近づかないことも重要です」
カビが原因の疾患は医師でも診断しにくく見逃されやすいため、咳や痰が何か月も続くならば、カビが原因の可能性を医師に問うのも手だという。
すぐ病院へ!こんな症状が続いたらカビが原因かも
□ 風邪や喘息の薬をのんでいるが症状が改善されない
□ 慢性気管支炎や肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患や肺結核など、肺に持病があって治療を続けているが、咳や痰などの症状が治まらない
取材・文/福島孝代 イラスト/飛鳥幸子
※女性セブン2024年6月6日号
https://josei7.com/
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