猫が母になつきません 第396話「はるがきた」
気がついたら春でした。母のことやら引越しやらで大忙しだった日々がぱたっと終わって急にしーんとして、しばらくぼーっとしていました。ほとんど外出もせず、食べ物がなくなってしまったら買い出しに行くくらいで、それもできるだけ出かけたくないので一回の買い物の量がどんどん多くなっていくという…。ひきこもりですね。そんな生活なので当然体調もいいはずがなく、気分も晴れない。まだ引っ越しの段ボールがたくさん積み上げられた家のなかで毛布にくるまって中村つよしの「愛のカタチ」をリピート再生してため息をついていました。
それでも暖かくなってくるとだんだん動かなきゃという気持ちになってきて、大家さんがランチにさそってくださったり、民泊を始めるという友人のお手伝いをしたりしているうちにすこしずつ外に出るようになりました。庭に雑草が生えてきて、賃貸なのであまり見苦しくないようにしておかないとと思って草抜きも始めました。庭の手入れは前の家でもやっていたので慣れたもの、始めるとついつい長くなってしまうくらい没頭できるし、太陽の光を浴びるのは骨にいい。
ただ以前とちがうのは本当に疲れやすくなっていて、体が思うように動きません。5ヶ月のひきこもり生活は思いの外私の体にダメージを与えていました。動けないな、という自覚はあったのですが、ずっと何もしませんでした。体が重いのでひさしぶりに体重計に乗ると5キロ増えていました。やっぱりか。そんなにたくさん食べないしお酒も飲まないのですが、動かないのですから。すぐにダイエット開始です。段ボールからステッパーを取り出し、食事を減らし、毎朝体重と体脂肪を測ってノートに記録。スマホに室内ウォーキングのアプリをダウンロードしました。ウォーキングも室内、ひきこもりダイエットです(笑)。
隣の大家さんの家に大きな桜の木があって、うちとの境界に立っているので今年は毎日猫と一緒にお花見し放題でした。段ボールもやっと全部開けたし、雑草を抜いたところに何か植えようか。今年ほど「春の訪れ」がありがたいと思った年はありませんでした。
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作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。