イマドキ介護食 見た目も原型そのままと話題の介護食の味を実食レポ
食べることは生きること──食べることに目がないオバ記者(62才)が、将来のシニアライフのことを考えて真っ先に気にかけたのは、食のこと。介護食は味がイマイチ…と言われがちだけれど、舌でつぶせるほどやわらかくて美味しい介護食があると聞いて、早速、試食会を開催!
オバ記者が将来送りたいシニアライフのことを考えて、あらゆる介護にまつわるモノ・コトに挑戦、体験記としてお届けしていくこのシリーズ。第4弾の今回は、摂食回復支援食『あいーと』を“食レポ”します。果たして、その感想は…?
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茨城でひとり暮らしをしている母親(91才)が在宅介護をうけることになって、このところひんぱんに帰っている。と、東京の年上の友達に言うと、決まって聞かれるのが「ご飯はどう?」
最初はどういう意味かわからなかったけど、彼女たちの介護体験談を聞くうち、老親がどんなものをどう食べているかで、家族の手のかかりようをはじめ、いろんな見当がつくんだわね。
幸い、母親は「酢豚を食べに行きたい」というくらいだけど、最近、めまいがひどくなって、大学病院で精密検査をしたばかりだから、年齢的にも何がどうなっても不思議がない。
そんなときに、「最近の介護食って、ビックリするほど本物に近いそうですよ」と言いだしたのがこの連載の担当、W編集嬢。なんでも、「酵素均浸法」という独自の技術で、形や味を残したままやわらかく仕上げたメニューで、これが介護食として今、注目されている摂食回復支援食の『あいーと』なんだって。さっそく取り寄せて試食することにした。
『あいーと』は冷凍食品を食べる直前に、電子レンジでチンする。ふつうの冷食と違うのは、電子レンジは200Wでの加熱を推奨していること。「200W」という設定がない電子レンジは、「解凍」、「生もの解凍」、「ゆっくり加熱」などのモードで温める。
そして、冷凍のまま耐熱容器に移し替えてラップを軽くかけて加熱する。容器に移し替えずパッケージのまま温める場合は、フタを少し開封する。電子レンジが使えない場所では、あらかじめ80℃に温めた蒸し器を使う。
介護食のメニューにうな重も!
さてさて。まずは高級品のうな重から試してみた。電子レンジで加熱したうな重は、ほんの少しの焼けこげがあって、匂いもうなぎそのもの。「うあ、これが介護食?」と言いながら、勇んでうなぎを箸でつかもうとしたら、ほろっと身がくずれた。味は確かにうなぎだけど食感がふわふわ。さらに汁のかかったご飯はおかゆよりもっと軽くて噛み応えがない。
「そりゃそうですよ、介護食ですから」とW編集嬢は言うけれど、ひと口食べただけで箸を置いた。
「これはどうですかね? 筑前煮は人気商品だそうですよ。にんじん、れんこん、ごぼう、鶏肉だって形をとどめながら、ほら、スプーンの背でくずれます」とW編集嬢。「昆布だしもよく効いているしね」と私。
美味しいかと聞かれれば、間違いなく「美味しい」と答える。でもだんだん口数が少なくなってきたんだわ。
「味がここまで本物だと、食感のちがいが許せないっていうかさ。『ちがうだろ~』って怒りたくなるのよね」という私に、「でも咀嚼する力がなくなった高齢者は、舌だけでつぶれる筑前煮を食べられたらうれしいんじゃないですか?」とW編集嬢。
そうか。遠い日に食べた“本物”を思い出すよすがになればいいのか?
と、なんだか湿っぽくなってきたところで、ホタテと野菜のあんかけが登場! これがこの後続く、感動の食品の序章だった。
ホタテもレンコンも舌でつぶせる!
『ホタテと野菜のあんかけ』はまず見かけから驚かされた。なにせ、レンコンがレンコンの形をしているんだもの。「舌でつぶせる」というけれど、本当にあの固いレンコンが? で、箸でつかもうとしたらするりと逃げた。ブロッコリーもにんじんもそう。どんな加工をしたら、ここまで原型をとどめられるのかしら。
それでも口に入れるとほろりと溶けて無くなるのは、62才の私の口は納得しない…と思った次の瞬間、「う、うまい!」と叫んでいた。
正直いってホタテは嫌いではないけれど、飛びつくほど好きでもない。それなのに和風だしも相まってか、箸が止まらなくなった。
ごはんにかけて食べたい『さばの味噌煮』
続いて食べた『さばの味噌煮』も驚いた。さばの味噌煮の缶詰はよく食べるけど、もっとやわらかくて、あえていえば“飲み物”。
「これを3つまとめて、ご飯にかけて食べたい」と担当編集、W嬢に言うと、「そんなに、ですか?」と言いつつ試食すると、「あら、ほんとですね。これはすごいです」と目を輝かせた。
さばの味ととろみを全く損なわず、お見事としか言いようがない。これなら、高齢者のために買っておいても、いつの間にか家族が食べて消えていたという“事件”が起きてもおかしくない。
“事件”がらみで言えば、『たっぷり野菜のビーフカレー』もそう。辛くはないけれどカレーのスパイスはちゃんと感じられ、くたくたに煮た2日目のカレーの味。軟らかな食パンもカレーに乗せて食べたら、満足感がさらにアップしそうだ。
食欲が落ちた時や体調を崩した時にもぴったりで、いますぐ取り寄せたいもう1品は、『たぬきうどん』。混布だしが効いたのど越しのいいうどんは、心強い味方になってくれそうだ。
逆に私がちょっと残念に思ったのが、先ほどの『うな重』と『五目ちらし』。あくまでも普通食しか食べたことのない私の個人的な感想だけど、やわらか過ぎる酢飯は、きついものがある。それでも家族の祝い事のときに、自分の歯では咀嚼できない高齢者の前に、華やかな色どりの五目めしが置かれたら、ほっこりとあたたかな気持ちになる。
しばらく前のことだけど、10才年上の友人から、「母親に水にとろみをつけて飲ませている」と聞いたときは、実感が湧かなかった。水すら喉を通らなくなるとはどんなことか?
だけど今回、噛まずに食べられる『あいーと』の介護食を試食してみて、初めて高齢者の気持ちが身近になった。食はそのものの味の良さは絶対条件だけど、それだけじゃない。思い出、家族とのつながりなど、食卓にまつわるさまざまな光景が込められているのではないかと。
そしてできることなら、家族と高齢者が共有できるメニューがこれからもっと増えたらいいと思う。
『あいーと』メニュー オバ記者トップ5はこちら!
1位
『さばの味噌煮』
158kcal 540円
200W 4分30秒
2位
『たっぷり野菜のビーフカレー』
84kcal 648円
200W 6分
500W 2分50秒
『食パン』
44kcal 313円
200W 3分
3位
『ホタテと野菜のあんかけ』
594円 64kcal
200W 7分
500W 2分20秒
4位
『たぬきうどん』
54kcal 313円
200W 7分
5位
『筑前煮』
53kcal 518円
200W 6分30秒
おば記者的残念賞
『うな重』
230kcal 2480円
200W 6分30秒
500W 20分
『五目ちらし』
117kcal 626円
200W 5分
※全て税込み価格
撮影/浅野剛
【データ】
『あいーと』公式サイト
https://www.ieat.jp/
会社:イーエヌ大塚製薬
住所:新宿区新小川町4-1 KDX飯田橋スクエア2F
問い合わせ:0120-357-770
オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。『女性セブン』での体当たり取材が人気の自称“意識高い系”ライター。同誌で富士登山、AKB48なりきり、空中ブランコ、『キングオブコント』出場など、さまざまな企画にチャレンジ。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。全国各地の道の駅や温泉レポートも得意。ホテルの客室清掃バイトや銀座で手作りバッグ“出店”など、アラカンの現実を気の向くままに告白する体験記事も人気。