認知症を引き起こす<アカン習慣13選>「日常生活の改善で発症リスクは約4割も下げられる」【医師解説】
厚生労働省の推計によると認知症の患者数は2025年に約730万人にのぼり、65才以上の5人に1人は発症するとされている。もはや誰もが認知症に罹(かか)ると思った方がよさそうだ。最近の研究によると普段の習慣が認知症を招く要因になっていることがわかってきた。認知症を予防するためにやってはいけない生活習慣について専門家が解説する。
教えてくれた人
岩瀬利郎さん/精神科医。認知症サポート医。東京国際大学医療健康学部准教授、日本医療科学大学兼任教授。睡眠専門医、臨床心理士、公認心理師でもある。著書に『認知症になる48の悪い習慣 ぼけずに楽しく長生きする方法』(ワニブックス)など。
日常生活の改善で認知症発症リスクが約4割低下
現状、認知症を完治させる薬はなく、完全に予防することも難しいとされている。しかし近年は研究が進み、認知症になりにくい生活習慣や食生活が明らかになってきていると、精神科医の岩瀬利郎さんは言う。
「2020年、世界五大医学雑誌のひとつ『ランセット』に、認知症の発症にかかわる12のリスク因子が掲載されました。それは、飲酒、喫煙、糖尿病、肥満、高血圧、頭のけが、運動不足、難聴、社会的孤立、うつ病、教育歴、大気汚染です。これらに加えて、睡眠の重要性も説かれており、これらを改善することで認知症の発症リスクを約4割下げられるといわれています。いまから、認知症になりにくい生活習慣を身につけておくことが重要です」(岩瀬さん・以下同)
認知症リスク因子の中で特に注意すべきなのは?
12のリスク因子の中でも、特に気をつけてほしいのが難聴だという。
「難聴の人が認知症になるリスクは、そうでない人に比べ1.9倍高いというデータがあります。難聴になると脳の言語を司る部位の働きが低下する影響だとされています。さらに、コミュニケーションがとりづらくなるので、他者との接触を避けるようになって脳への刺激が減り、認知機能が落ちやすくなるとも考えられています」
また、糖尿病と肥満にも注意したい。
「女性の場合、更年期の影響で太りやすくなるので50代以上は要注意です。糖尿病や肥満になると、インスリンが脳で正常に働かず、アルツハイマー型認知症を引き起こしやすくなるといわれています」
認知症を引き起こす<アカン習慣>やってはいけない行動13選
今回紹介する13の“アカン生活習慣”をひとつでも多く改善することが、認知症予防の一歩になるといえる。
【1】たばこを吸う
周りの人にも悪影響が!
「中年期(40~64才)以降も喫煙を続けた人は、非喫煙者に比べてアルツハイマー型認知症になる可能性が2倍、血管性認知症は2.9倍高いとされます」(岩瀬さん・以下同)。受動喫煙者もリスクが上がるので要注意。
【2】愚痴や悪口を言う
ネガティブ思考が機能低下を招く
「どうせ自分なんて」といったネガティブな思考は認知機能の低下を招く原因になるという。「悪口や批判的な態度は自分のストレスを助長するだけでなく、家族や友人が離れ、社会的な孤立を深める原因になるのでやめましょう」。
【3】料理はしない!食事は外食やデリバリーが中心
“料理”は最適な脳トレに!
コロナ禍の影響でデリバリーが習慣化したり、もともと外食中心の食生活で料理をしない人もいるようだが、料理には脳を活性化させる効果がある。「脳の前頭前野の働きが活発となり、血流が増加したという研究結果も。簡単なものでいいので料理は毎日続けましょう」。
【4】面倒なときは歯みがきをサボりがち
虫歯や歯周病が認知症を招く
「歯の健康と認知症の関係は深く、歯周病菌がアルツハイマー型認知症の発症因子アミロイドβの生成・蓄積を促進させることがわかっています。さらに、虫歯菌が認知機能の低下と関係していることも明らかに」。口腔内の健康が脳の健康につながると覚えておこう。
【5】休日は誰にも会わず家でダラダラ~
人に会わないと脳が衰える
他者とのコミュニケーションは、脳を刺激し、脳の発達を促進させる。「家にひとりで閉じこもっていては、人と話す機会が減るだけでなく、社会的孤立にもつながります。買い物に行く、カルチャースクールに通うなど、意識的に外出する用事を作って」。