介護施設訪問レポート|利便性と快適な住環境!都心の介護付有料老人ホーム【まとめ】
実は地方よりも都市部での高齢化が顕著なことをご存じだろうか。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2040年までに増加する高齢者人口の75%にあたる約400万人は、東京など9都道府県に集中している。また、東京23区の2010年から2040年までの75歳以上の人口増加率は60%を超えるとの推計もある。高度経済成長時代を都市で過ごした団塊の世代は、老後の住まいを住み慣れた街で探すのが難しくなる可能性も。
そこで、高齢者向けの施設を訪問して詳細にレポートするシリーズ「注目施設ウォッチング」で掲載した中から、今回は、今後ますますニーズが高まりそうな東京都心の介護付有料老人ホームをピックアップしてご紹介していく。
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大都会のど真ん中!新宿御苑の緑とタイ式セラピーで癒やされる「癒しの新宿御苑」
新宿三丁目駅と新宿御苑前駅から徒歩3分、新宿駅からも徒歩7分の賑やかな場所にあるのが介護付有料老人ホーム「癒しの新宿御苑」。周囲には、伊勢丹やマルイアネックスなどの商業施設や飲食店が立ち並び、買い物や食事を楽しむことができるが、実は自然や静かな時間も満喫できる。歩いて数分のところに新宿御苑があるのだ。
都会の利便性と四季折々の自然、その両方を兼ね備えた場所に建つ「癒しの新宿御苑」。施設長の堤千優さんにその魅力を聞いてみた。
「駅から近いので、ご家族も来やすく、ご来館者が多いのが特徴です。近くでお仕事をしていて、その帰りに立ち寄るご家族もいらっしゃいます。月に1度は『御苑ランチ』というイベントを催し、皆様で新宿御苑へお弁当を持って行き、テーブル席で楽しく召し上がっていただいています。9月も20名くらいご参加されました。体調と天候には気をつけながら、普段も2、3人でお散歩に行っています」(堤さん 以下「」は堤さん)
施設名に“癒し”とつけているが、ちゃんと実態を伴っている。「人は人によって癒やされる」というコンセプトの元、独自のリラクゼーションサービスを提供しているのだ。
「いつもおそばで介護サービスを提供している職員がケアすることに意味があると思っています。タイ式のフットケアやインド式ヘッドケアの社内資格を持った職員が常駐しています。日々、一緒にいる職員が提供することで緊張がほぐれて、悩みや不安に思っていることを話していただけるという効果もあります。一人の職員を独占して30分ほどゆっくり話ができる機会なので、寂しい気持ちのある方にも喜んで頂けています。社内でも研修を行い、能力の向上を図っています」
賑やかな新宿の街のど真ん中にありながら、一歩中に入ると静かな環境で入居者に“癒し”が提供されていた。東洋医学のアーユルヴェーダ理念に基づいた独自のリラクゼーションサービスは他にはない取り組み。新宿御苑の緑にも恵まれ、穏やかな表情で職員と会話をしている入居者が多かったのが印象的だった。
→大都会のど真ん中!新宿御苑の緑とタイ式セラピーで癒やされる介護付有料老人ホーム<前編>
→新宿御苑がすぐ近く!“薬膳御膳”や“世界の料理”を提供する介護付有料老人ホーム<後編>
定員30名、小規模施設の利点あふれる「シンセリティ千代田一番町」
「シンセリティ千代田一番町」は、その名の通り高級住宅街として名高い「番町」にある。近くには英国大使館やローマ法王庁大使館、国立劇場があり、気品のある雰囲気を作っている。都心でありながら、千鳥ヶ淵の桜や北の丸公園の木々を眺めながら散策することもできる贅沢な場所だ。半蔵門駅5番出口を出てすぐ、わずか徒歩1分と利便性も高い。都心の病院へのアクセスも良く、しかも無料で送迎してくれるという。
千代田区で最初にできた民間の有料老人ホームであるシンセリティ千代田一番町は、定員30名と小規模であることが特徴の1つだ。運営する「シン建工業株式会社」は埼玉県で介護付有料老人ホームや介護付のサービス付高齢者向け住宅、小規模多機能型居宅介護、グループホームなどを展開しているが、いずれも定員が30名前後と小規模だ。経営効率を考えると、できるだけ多くの人数が入居できるようにした方が良いに決まっているが、あるポリシーを持ってあえて小規模にしているという。
施設長の松本光一さんは以前、他社の大規模な高齢者向け施設で働いていたそうだ。その時の経験を活かして、最初の企画、建設時から小規模の良さを実現できる今の会社に移ってきた。松本さんは小規模にこだわる理由を「一人ひとりに目が行き届くこと」とシンプルに語る。大規模な施設では個別対応がなかなか難しい面もある。目指すのは入居者、そしてその家族に密に寄り添うサービス。
小規模であるため、館内は暮らしやすくまとまっている印象。居室は2階から5階までの各階に配置されていて、1室を除いて一人部屋。ラウンジ、浴室が各階にあるため、上下階への移動が難しい場合でも快適に生活できる。共用部の清掃も行き届いており、丁寧な管理状態がうかがえる。
日々のレクリエーションは2階の食堂で行われることが多い。カラオケ、習字などの他、毎月の誕生会や近隣の住民なども招く各種イベントを実施しているとのこと。また、屋外のスペースを活用して野菜を育てている。植物の栽培が好きな人も多いようで、ちょっとした楽しみになっているそうだ。
高齢者向けの施設を選ぶ基準に、規模の大小という視点を入れてみてはいかがだろうか。一人ひとりに目が行き届く小規模でアットホームな雰囲気は、小規模施設ならではのメリットといえそうだ。
→定員30名、小規模施設の利点あふれる都心の介護付有料老人ホーム<前編>
→定員30名、小規模施設の利点あふれる都心の介護付有料老人ホーム<後編>
広尾駅から徒歩4分、リハビリに力を入れる「せらび有栖川」
有栖川宮記念公園が目の前に広がる南麻布の街並み。「せらび有栖川」は日比谷線の広尾駅からわずか徒歩4分という利便性を誇るる。元々はマンションとして使われていた建物を利用しているので、取材で訪れた際も最初は気付かずに通り過ぎてしまったほどだ。
有栖川宮記念公園は麻布台地の地形を生かした日本庭園で、都立中央図書館もある。周辺には各国の大使館も多く、国際色豊か。広尾駅周辺は日用品を扱うお店や飲食店も多く、買い物を楽しむ人も多い。入居者も歩いて実際に公園や商店に足を運んでいるそうだ。聖心女子大学も近く、街全体が洗練された雰囲気だ。
せらび有栖川は全19室。介護付有料老人ホームとしては小規模だ。案内してくれたホーム長の小川健さんによると、一人ひとりに目が届きやすく、きめ細かい対応が可能だという。食事は好みや体調に合わせて提供していて、誕生日や記念日の祝い膳、季節に合わせた行事食など楽しさも重視しているそうだ。実際に入居者やその家族の食事への満足度は高いそうだ。冷凍食品を極力使わないというこだわりも、この規模だからこそ。毎日の食事への満足は、楽しみの面からはもちろん、健康面でも大いにプラスになる。
また、入居者3名につき、介護・看護スタッフは2名以上と手厚い配置をしている。全体の人数が少ないので、スタッフが入居者全員の顔と状況を把握し、コミュニケーションを取っているという。
小規模なため大規模施設にあるような大がかりな共用施設はない。しかし、落ち着いて静かに過ごしたい方にはこれ以上の環境はなかなかないだろう。趣味や楽しみのニーズは街が満たしてくれるはずだ。
→リハビリに力を入れる小規模介護付有料老人ホーム<前編>
→リハビリに力を入れる小規模介護付有料老人ホーム<後編>
いかがだっただろうか。それぞれ利便性の高い東京都心にありながら違った特徴を持っている。まだ先のことだと思わずに、まずは住み慣れた場所から近い施設の見学に行くといざという時に慌てずに済みそうだ。
撮影/津野貴生
※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
※過去の記事を元に再構成しています。サービス内容等が変わっていることもありますので、詳細については各施設にお問合せください。