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「小規模多機能型居宅介護」とは? サービス内容や費用をわかりやすく解説【社会福祉士監修】

「小規模多機能型居宅介護」(しょうきぼたきのうがたきょたくかいご)」は、在宅介護において、通いや泊まり、訪問などを組み合わせて提供するサービスのことで、「小多機(しょうたき)」と省略して呼ばれることがあります。どんなサービスなのか、特徴や費用、メリット・デメリットをわかりやすく解説します(監修・社会福祉士/ライトさん)。

小規模多機能型居宅介護

「小規模多機能型居宅介護」とは?特徴をわかりやすく解説

「小規模多機能型居宅介護」は、介護が必要な高齢者に、いくつかの介護サービスを複合的に提供するサービスのこと。介護保険制度で運用されている地域密着型のサービスのひとつです。「小多機(しょうたき)」と省略して呼ばれることもあります。

 在宅介護を受けている人は、そのかたの状況に応じて、「デイサービス」や、自宅に介護スタッフなどに来てもらう「訪問」、泊まりで生活する「ショートステイ」などを利用しますが、別々の事業所と個別に契約するのは、利用者の手間や負担がかかります。

 そこで、これらのサービスを1つの事業所に集約したのが「小規模多機能型居宅介護」です。「通い」「訪問」「泊まり」が1か所で利用できるので、手続きの負担を減らせるほか、ニーズに合わせてサービスを組み合わせて利用できるメリットがあります。「小規模多機能型居宅介護」を提供している施設を、「小規模多機能型居宅介護施設」と呼びます。

「小規模多機能型居宅介護」とは、在宅介護を受けている人が、「通い」「訪問」「泊まり」を1つの事業所と契約して利用できる介護サービスのこと

「小規模多機能型居宅介護」の対象者は?

・介護認定判定の要支援1以上

「小規模多機能型居宅介護」のサービス内容

「小規模多機能型居宅介護」の事業所と契約し、必要に応じて「通い」「泊まり」「訪問」を組み合わせて利用します。契約した事業所に所属するケアマネジャーが、状況に応じてケアプランを組むことで、それぞれのサービスを利用できるようになります。なお、介護付有料老人ホームなどが提供している「デイサービス」「ショートステイ」「訪問介護」は、「小規模多機能型居宅介護」とは別の介護保険サービスになります。

■通い

 自宅から施設に通い、食事や入浴などの介護サービスを受けたり、レクリエーションなどをしたりして過ごします。送迎バスなどで自宅の送り迎えをしてくれる施設もあります。

■泊まり

 数日~1・2週間など短期間施設に泊まり、食事や入浴などの生活支援や介護サービスを受けられます。家族の事情などで自宅で介護できないときや、休養期間として活用することも。

■訪問

 介護スタッフが自宅に訪問し、さまざまなサービスを提供します。食事・排せつ・入浴介助などの介護サービスが自宅で受けられます。

「看護小規模多機能型居宅介護」との違いは?

 「小規模多機能型居宅介護」が提供する3つのサービスに、「訪問看護」を加えたサービスのことを「看護小規模多機能型居宅介護」と呼びます。訪問看護では、医師の指示のもと、看護師による医療処置が受けられます。

「看多機(かんたき)」と省略して呼ばれることもあり、看護と介護の複合的なサービスを受けられます。

「小規模多機能型居宅介護施設」の利用料金

「小規模多機能型居宅介護」の利用料金は、月額定額制です。介護保険を利用できる介護サービスのため、要介護度によって利用者の負担額が異なります。本人の所得に応じて1割負担、または2~3割負担となっています。

 また、利用料金に加え、食費・宿泊費・おむつ代・日用品など実費分がかかります。

※参考/厚生労働省「どんなサービスがあるの? – 小規模多機能型居宅介護」

https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group11.html

【要支援1・2】               

サービス費用の設定・1か月の利用者負担(1割負担の場合)   

同一建物に居住する者以外の者に対して行う場合|同一建物に居住する者に対して行う場合

要支援1 …3,438円|3,098円

要支援2 …6,948円|6,260円

【要介護1~5】               

サービス費用の設定・1か月の利用者負担(1割負担の場合)

同一建物に居住する者以外の者に対して行う場合|同一建物に居住する者に対して行う場合

要介護1 …10,423円|9,391円

要介護2 …15,318円|13,802円

要介護3 …22,283円|20,076円

要介護4 …24,593円|22,158円

要介護5 …27,117円|24,433円

  同一建物とは、「『小規模多機能型居宅介護』と構造上又は外形上、一体的な建築物」のことを意味し、「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅(以下『サ高住』)」に限られます。

 例えば、同じ建物で1階が「小規模多機能型居宅介護」、2階が「サ高住」の場合、「サ高住」に住む人が「小規模多機能型居宅介護」を利用した場合は「同一建物に居住する者に対して行う場合」に該当します。つまり、訪問する手間がかからないため利用料が低く設定されています。

「小規模多機能型居宅介護施設」の居室や人員体制基準

 1事業所の登録定員は29人、1日あたりの通いの利用定員は15人以下(条件により18人以下)、泊まりは9人以下と定められています。少人数でアットホームな施設です。

宿泊室の広さ:7.43㎡以上(個室以外の宿泊室もおおむね同様)

「泊まり」で利用する居室は、個室が主となっています。また、共有スペースに食卓やトイレ、浴室などがあります。「通い」の人も、同じスペースで食事をしたりレクリエーションをしたりして過ごします。

※参考/厚生労働省「小規模多機能型居宅介護の概要」
Microsoft PowerPoint – 04_小規模多機能型居宅介護 (mhlw.go.jp)

人員配置基準

管理者:1人

介護・看護職員:日中/通いの利用者3人に1人+訪問対応1人

夜間:泊まりと訪問対応で2人(1人は宿直可)

介護支援専門員:1人

※参考/厚生労働省「小規模多機能型居宅介護の概要」
Microsoft PowerPoint – 04_小規模多機能型居宅介護 (mhlw.go.jp)

「小規模多機能型居宅介護」のメリット・デメリット

【メリット】

●介護保険を利用して介護サービスを複合的に受けられる

●1事業所との契約ですむので、手続きの負担も少ない

●定額制なので月額費用が把握しやすく、利用回数の制限がない

●夜間や早朝、急な泊まりでも利用可能

●少人数のためアットホームな雰囲気の中で過ごせる

 一般的な訪問介護やデイサービスは、あらかじめ決められたスケジュールに沿う必要がありますが、「小規模多機能型居宅介護」では、その人の状況に合わせて「通い」や「訪問介護」などのサービスをケアプランに位置付けることができます。比較的自由度が高く、柔軟な対応ができることもメリットです。

 ただし、急な泊まりなど緊急時の利用については、ケアマネジャー(以下、ケアマネ)に相談して「臨時利用の可能性あり」と伝えておくといいでしょう。

【デメリット】

●利用は住んでいる地域の施設に限られる

●定額制なので、あまり施設を利用しない場合は割高になる場合がある

●契約した事業所に所属するケアマネに変更しなければならない

●契約した事業所以外、併用できないサービスもある

併用可能→訪問看護、訪問リハビリ、居宅療養管理指導、福祉用具貸与、住宅改修

併用不可→訪問介護、訪問入浴介護、デイケア、デイサービス、ショートステイ

「小規模多機能型居宅介護」の事業所と契約した場合は、その事業所に所属するケアマネに限られるため、それまで担当していたケアマネがいる場合は、変更しなければならない。

小規模多機能型居宅介護の利用の流れ

 申し込み前に介護認定を受けておく必要があります。要支援1以上の判定が出たら、ケアマネジャーや候補の施設に直接相談しましょう。事前に施設を見学して、受けられるサービスについて聞いてみましょう。

 1.見学

 ケアマネジャーを通すか、直接施設に問い合わせて施設を見学

2.申し込み

 申込書・健康診断書・収入申告書などの書類を提出

3.面談

4.判定

5.結果通知

6.契約

 契約書の締結や各種手続き

小規模多機能型居宅介護の賢い利用法と実例

 母を介護中のR60記者が、施設見学や働くスタッフに取材した実例をもとに、「小規模多機能型居宅介護」の賢い活用法について紹介する。

※プライバシーに配慮し表現を一部変えています。

施設入居の予習として活用

 ひとり暮らしの高齢の親に、施設入居をすすめたが、入居を拒んでいるケースはよくある。そんなときに、「小規模多機能型居宅介護」を活用するといいという。

 実際に、「まずは『訪問介護』でご自宅に伺って、慣れてきたらレクリエーションにだけでも来てみない?」などと、スタッフが声をかけると、最初は渋っていた人が、施設に通ってもらえるようになったケースも。

「小規模多機能型居宅介護」の事業所は、同じ敷地内に介護施設を併設しているケースも多いので、そこで通いや宿泊を利用した後に、同事業所の運営する施設入居へと進むことも。

 また、施設入居に関しては、その後、特養養護老人ホームや介護付有料老人ホームを選ぶという選択肢もある。

・介護する側の家族の休養として使える

 高齢の母を在宅介護していた娘さんが、仕事が忙しくなって疲弊してきてしまっていたが、「小規模多機能型居宅介護」の「通い」から利用し、「泊り」まで利用できるようになったことで、介護する側の娘さんが休息する時間がもてた。

・短時間のレクリエーションだけ参加もOK

 施設にもよるが、「午後から1時間のレクリエーションだけ参加」という利用法もあり、送迎もしてもらえるケースも。徐々に慣れていくことで、食事や入浴までできるようになっていくこともあるという。

・訪問介護のメリットを活用

 施設やスタッフの対応にもよるが、ある事業所では、施設に通えなかった場合、スタッフが自宅を訪問し、施設で作った食事を持ってきてくれて、食事介助までしてくれるケースも。

・なじみのスタッフが対応してくれる

 訪問介護で自宅に来てくれるスタッフが施設でも対応してくれる場合もあり、慣れている人だとコミュニケーションが取りやすいことも。

 記者が見学した施設では、利用者さんとスタッフが送迎時に、笑顔で会話をしている姿を見かけた。スタッフと利用者の距離が近いアットホームな雰囲気だった。「訪問」「通い」「泊まり」と、複合的に介護サービスをしている「小規模多機能型居宅介護」ならではの魅力といえそうだ。

監修者

社会福祉士・ライトさん

地域包括支援センターの社会福祉士として勤務。Instagram「ライト@介護保険のスペシャリスト」として情報を発信し、2万人を超えるフォロワーに支持されている。介護保険サービスの活用から、高齢者施設の解説など、スライドを駆使しながらわかりやすく伝えている。Instagramで2年間発信し続けた集大成として『世界一わかりやすい介護保険サービスの教科書』(電子書籍)と『世界一わかりやすい介護保険サービスの解説動画』を2023年9月2日にリリースし、好評販売中。
https://note.com/light_blog/n/nd0e2b21bd38f

→「介護保険をわかりやすく解説!」ライトさんの記事

取材・文/本上夕貴 構成/編集部 イラスト/イメージマート

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