R60の片思いエピソード「23才年下の男性マッサージ師に体も心も癒されて」大人の恋の効能を精神科医が分析
片思いがもたらす心のトキメキは、「脳の活性化を促すいい刺激となる」と精神科医の和田秀樹さんは語る。幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが分泌されるほか、好きな人との会話のキャッチボールは脳が活性化され、前頭葉が鍛えられるという。歴史上の人物をはじめ、50代、60代の「大人の片思い」エピソードを紹介する。体も心も若返る――片思いのパワーを実例から学ぼう。
教えてくれた人
和田秀樹さん/精神科医
歴史上の人物の片思い「樋口一葉、ベートーベンも」
歴史をひもとけば、愛する人に恋焦がれる片思いを原動力にして、後世に残る名作を生み出した人物もいる。
24才の若さで人生の幕を閉じた小説家の樋口一葉は、19才のときに生涯でたった一度の熱烈な恋をした。
父親が借金を抱えて病死した後、家族の生活を支えるために小説家を志した一葉。妹の友人のつてで出会い、恋に落ちたのが30才の世慣れた小説家・半井桃水(なからいつすい)だった。
一度は弟子入りを断られるものの一葉は引き下がらず、半井のもとで小説家を目指すこととなる。しかし半井は「同性の友人のようにつきあいましょう」と一葉に告げ、思いが叶えられることはなかった。その後、恋心を振り切って別れを告げた彼女は複雑な恋心をテーマとした『たけくらべ』『にごりえ』などの名作を次々と書き上げた。
「音楽の父」「楽聖」と称されるベートーベンも、好きな女性ができるたびに曲を作って、相手に贈っていたとされており、『月光ソナタ』『エリーゼのために』も片思いの相手へのプレゼントだったという。片思いが人生の原動力につながるのは、昔もいまも変わらない。
片思いの実例「福山雅治似の男性に人生救われた」
福岡県に住む馬場友恵さん(仮名・55才)は、10年前に夫に先立たれ、現在は小さな和風スナックをひとりで切り盛りしている。
「生計を立てるために始めましたが、正直、楽な仕事じゃないですし嫌なこともいろいろあって、もうお店を閉めたいと思うこともしばしばでした。でも、1年ちょっと前にひとりの男性客が店に来るようになったのをきっかけに、気持ちが180度変わりました」
そう言って恥ずかしそうに笑う馬場さん。お相手は単身赴任で福岡にやってきた男性(既婚)で「福山雅治をちょっと疲れさせたような渋めのイケメン」だという。
「もう、一目惚れでしたよ。クールだけど冷たいわけじゃない、物静かだけど暗いわけじゃない、そのバランスが絶妙なんです。席に座ってオーダーした後、くつろぐためにネクタイを無造作に緩める手つきがものすごくセクシーで。サラリーマンとおつきあいしたことがない私はスーツ姿が似合う男性に憧れがあったんです。彼はまさに理想の男性でした。
彼が来るようになってからというもの、“彼に飽きられないように”と料理作りに精を出すようになりました。それまではありきたりなお総菜ばかり出していたんですけど、ネットや本で勉強して、“ここじゃなきゃ食べられないもの”を作るようになったんです。いまは彼が来ないときも、お店に立つのが楽しいんです。ほかのお客さんからも“ママ、雰囲気が柔らかくなったね”って言われるし、料理の評判も上々。
大袈裟ですけど、彼に出会えたことで、これまでの人生のすべてが報われたような気持ちです。いつかはいなくなる人だとわかってはいるけれど、いまは彼が店に来てくれるだけで幸せなんです」(馬場さん)
こっそり思いを寄せて「昼メロのヒロイン気分」
こっそりと思いを寄せるだけならば、既婚者同士でも後ろめたさを感じずにすむ。夫が経営する町工場で事務をしている東京都在住の江森理恵子さん(仮名・64才)の片思いの相手は、取引先の社長。5才年下の既婚男性だという。
「うちよりずっと規模の大きな会社の経営者なのに、一切偉ぶらずにとても物腰が柔らかで、穏やかなかたです。何よりいちばんの魅力は、声。ちょっと低めのトーンで『お世話になります』『ありがとうございます』と挨拶されるだけで、ドキドキしちゃう。『奥さん』なんて呼ばれた日には、もう一瞬で昼メロのヒロインの気分になれますよ(笑い)」(江森さん・以下同)
男性が訪れるのは月に3~4回。時期は不定期だが、彼が事務所のドアを開けて入ってきた瞬間に胸が高鳴る。
「ほかのお客様との対応に差が出ないように、普段から誰に対しても感じのいい接客を心がけています。おかげで、職場での私の好感度が大幅アップしました」