乳がん経験者3人の本音座談会「両胸を全摘」「放射線を25回」「治療中がんが消えた」…セカンドオピニオンと気の持ちようはとても大事

　女性が罹患するがんの第1位、それは乳がんだ。いまや他人事ではなくなっている乳がん、実際に30代40代で宣告されたという3人の女性に集まってもらい、宣告後の生活や仕事はどう変わったのか、実体験を語ってもらった。

乳がんと闘った3人

■イラストレーター安藤聖子さん（50才・仮名）独身。

都内の親戚の家でひとり暮らし。35才で乳がんが判明。手術前に抗がん剤、手術後に放射線治療を受け、10年間の治療の末、45才で完治。現在、在宅で仕事を続ける。

■会社員中野綾香さん（54才・仮名）独身。

都内マンションでひとり暮らし。49才で乳がんが判明し、50才で、両胸の摘出手術を受ける。退院後すぐ仕事に復帰。ホルモン剤の服用は年内で終わる予定。

■パート大沢美奈恵さん（61才・仮名）夫と3人の子供を持つ。

自宅は都内にある戸建て。47才で告知され、乳房温存手術後、放射線治療とホルモン剤を10年間服用し、現在は完治。

乳がんを宣告されたときの気持ち「頭が真っ白に」

　乳がんを宣告された3人の女性に生活や仕事はどう変わったのか伺った。まずは、乳がんだと告知されたときの心境から…。

大沢美奈恵さん（以下・大沢）：40代に入ってから、義両親と義妹が立て続けにがんで亡くなったんです。それぞれ、肺がん、すい臓がん、子宮がんでした。義妹なんて当時34才。血はつながっていないとはいえ、他人事じゃないと思ったんです。子供もまだ学生でしたから、私がいなくなったら大変。それで、人間ドックを受けたら、なんと乳がんが見つかったんです。ステージは1、47才のときでした。

中野綾香さん（以下・中野）：私は自分で異変に気づきました。乳頭から分泌物が出るようになったんです。友達に話したら、検査した方がいいと言われて…。ちょうど人間ドックで子宮筋腫が見つかって、婦人科に行くことがあったので、医師に分泌物の話をしたら、すぐに乳腺科に回してくれて判明しました。私もステージは1で、49才のときでしたね。

安藤聖子さん（以下・安藤）：おふたりとも、早期発見だったんですね。私の場合、ステージ3A期でした。友達から年齢的にもそろそろ乳がん検診した方がいいよと言われて…。といっても当時まだ、35才だったんですが、とりあえずお風呂に入ったときに触診してみたらしこりがあったんです。すぐに受診して判明しました。セルフチェックでがんだと思っていたから「やっぱりね～」という感じでした。それより、仕事をどうするか考えちゃいましたね。　

　ステージ3A期とは、腋窩（えきか）リンパ節か内胸リンパ節のどちらかに転移がある状態だ。ステージ1に比べ、5年生存率が一気に下がる。

大沢：強いですね！　私は医師からがんを宣告された後、頭が真っ白になって、どうやって帰ったか覚えてないほどショックでした。

中野：私の場合は、両親とも肺がんで亡くなっているので、自分が大病を患うとしたら、がんだろうなとは覚悟していたんですよね。親の看病もしていたので多少の知識もあって、リンパ節に転移していなければ大丈夫だと自分に言い聞かせて、平静を保ちました。

「温存か、全摘か」手術や治療法の決め方

中野：おふたりとも、乳がんになったのは片方の胸だけですか？

大沢・安藤：はい、そうです。

中野：私は左右両方だったんです。なので、転移や取り切れないといったことがないよう、両胸全摘手術を受けました。

安藤：そうなんですか！　私は右側だけでした。がんの大きさは3.8cmだから結構大きい。でもそれが1か所だけ。小さいがんがあちこちに散らばっているよりは治療しやすいらしいです。

大沢：私は左胸乳首の近くに、カルシウムが沈着した石灰化が見つかったんです。石灰化は良性なことが多いので、3か月は様子を見ましょうと医師に言われました。でも、気になるから、大学病院を紹介してもらい生体検査を受けました。そうしたら悪性腫瘍だとわかりました。セカンドオピニオンを受けておいて本当によかったです。再発や転移を考えると左胸全摘がいいと医師から提案されたんですけど、どうしても嫌で温存をお願いしました。

中野：温存だと、がんを全部取り切るのは難しいって聞きましたが？

大沢：ええ、だから手術後がんが取り切れなかったことがわかり、放射線治療を25回受け、それでも取り切れずピンポイントで4回あてました。

安藤：私は大沢さんと逆でしたね。医師に温存を提案されたんです。その場合は、抗がん剤治療を半年間受けて、がんを小さくしないといけない。でも私にとっては通院が何より面倒だったから、「全摘しちゃだめですか？」って聞いたら「体に支障が出るからすすめない」と言われたんです。それで、「先生、奥さんが私と同じ状況ならその治療法をすすめますか？」って、ちょっと意地悪な聞き方をしたんです。それでも先生は、「温存をすすめます」と言うから、全摘はあきらめたんです。

治療や術後の状況「手術後の痛みが半端なかった」

中野：私は全摘だったからか、大沢さんと同じで手術前の治療はありませんでしたね。でも、手術に6時間かかって、手術後の痛みが半端なかった。ぺったんこになった胸の間にスマホでも突っ込まれたような強烈な痛み。ものすごく、苦しかったですね…。

安藤：うぅ、痛そうですね。私はむしろ、手術前が治療のピークでしたね。抗がん剤治療を受けると、脱毛や食欲不振などの副作用が出るから、それを緩和するためにと食欲増進剤を担当医が処方してくれて…。でもそれをのむとお腹がすくんです（笑い）。病院の帰りに必ず大きなえびが3本のっている天丼を食べていたくらいです。それが本当に楽しみで。がん患者なのに半年で10kgも太って、担当医に怒られました（笑い）。　