家族信託の費用や手続きは?メリットやおすすめサービスを徹底解説
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高齢化が進む日本では、認知症の有病者数が2025年に約700万人にのぼる見込み※1だ。この状況は、65歳以上の約5人に1人が認知症になる計算である。自分の親や、自分自身も認知症になるかもしれない、という将来を見据えた財産管理や相続の対策が必要になってくる。
そこで、おすすめしたいのが家族信託だ。家族信託とはどのような財産管理の方法なのか、仕組みや留意事項を説明し、最新の家族信託サービスを詳しく紹介していく。
※1:参考文献:厚生労働省老健局「認知症施策の総合的な推進について」
家族信託とは?
そもそも信託とは、財産の所有者(委託者)が財産を信頼できる人(受託者)に託し、財産を託された人は財産の所有者が決めた目的に沿ってその財産を管理・処分する方法だ。これを活用すれば、将来、認知症で財産の所有者の判断能力が低下しても、財産を託された人が財産を適切に管理・処分し続けられることが法律上担保される。
また、信託財産を、将来、特定の人に承継することができ、相続対策にも使える。
信託のうち、家族が受託者となる場合を「家族信託」という。家族信託では、家族間の契約で信託財産の管理・処分方法を決められるため、契約内容を柔軟に設定できる。
家族信託の必要性は、なぜこれから高まる?
総務省統計局の調査「統計トピックスNo.132 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで」※2によると、65歳以上の高齢者の人口は3627万人にのぼり、前年から6万人の増加。総人口に占める割合は29.1%で過去最高を記録した。
高齢になるほど病気のリスクは高まる。なかでも認知症は高齢者に多い病気であり、発症した場合には判断能力の低下により、さまざまな問題に直面することになる。
例えば、認知症の発症により預金者の判断能力が低下したと判断されれば、銀行口座が凍結されてしまう。預金者が詐欺などに巻き込まれないための措置ではあるが、一度凍結されると本人や家族でも預金を引き出せなくなる。
口座凍結はあくまで一例であり、その他の財産にも問題が起きる可能性は高い。そこで家族信託が解決策となる。
家族信託の仕組み
家族信託は、以下の3者間で預貯金や不動産などの財産を管理する方法だ。
・財産を信託し、管理等を任せる本人を「委託者」
・信託財産の名義人となって管理等を行う人(家族)を「受託者」
・信託財産から経済的な利益を受け取る人(本人または第三者)を「受益者」
家族信託では、委託者が受益者を兼ねることが多く、信託財産は受託者名義で管理されるものの、その財産から発生した利益は引き続き委託者本人が受け取る。
家族信託の特徴
家族信託の大きな特徴は、家族が受託者となって契約に基づき柔軟に財産を管理できることだ。このメリットは、家族以外の第三者による指示、監督を受けないことだ。次に説明する成年後見制度と比べると分かるが、本人のことを知っている家族が、財産を管理できる。
家族信託と成年後見制度の違いは?
家族信託と似た制度に、成年後見制度がある。
成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した人の財産を守るための制度だ。親族や弁護士など、家庭裁判所から選任された人が成年後見人等として財産管理などの支援を行う。
家族信託と異なるのは、本人の判断能力が低下した後にスタートする点だ。また、家族は家庭裁判所に後見等を開始する審判を申し立てなければいけない。この際、家庭裁判所は成年後見人等を選任するのだが、家族が希望する通りに選任されるとは限らない点にも注意が必要だ。
(任意後見では、あらかじめ契約で任意後見人を指定できるが、任意後見の効力が発生するのは、やはり本人の判断能力が低下したのちに、家庭裁判所による任意後見監督人の選任の審判があってからだ)。
その点、家族信託は認知症の発症や判断能力の低下に関わらず、契約して財産の名義を移転した時点から家族による財産管理が始まる。
つまり、家庭裁判所を挟む必要がないので、スピーディーかつ柔軟に財産管理を進められるのだ。
家族信託と遺言の違いは?
家族信託は相続対策にもなる。相続対策として真っ先に挙げられるのは遺言だが、どのような違いがあるのか。
本人の意向に沿って特定の人に財産を承継させられる点は両者ともに共通している。
しかし、遺言は作成後も本人が財産を管理するため、生前の財産凍結の対策にはならない。
夫の遺言で妻が遺産を受け取ることはできても、その妻が将来亡くなった場合(二次相続時)の遺産の行き先まで、夫の遺言では指定できない。
これに対して、家族信託では二次相続先まで指定できる。夫が亡くなっても信託契約は継続し、以後は妻が信託財産から発生した利益を受け取る。そして将来、その妻も亡くなったら次は指定した子が受け取る、といった財産の承継が可能になる。
つまり、家族信託は生前の財産の管理・処分はもちろん、亡くなった後の財産の承継もカバーでき、その後の二次相続まで指定できる点で遺言とは違うメリットがある。
なお、家族信託と遺言は併用可能である。家族信託で主要な財産の管理・処分を任せ、遺言ではその他の財産の承継を指定することで、生前と相続時の両方の対策が可能になる。家族信託では受託者となる家族が管理・処分できる財産が対象となるが、家族による管理に適さないものもあるため、遺言とセットで考えるのが良いだろう。
家族信託の留意事項
信託財産は、受託者が管理者たる注意をもって適切に管理されなければならない。また、受託者によって、受益者のため忠実に管理・処分を行われなければならない。
これにともない、受託者は様々な義務を負う。
財産を長期間、分別して管理する義務
家族信託では、財産の名義は受託者に移る。当然、受託者自身にも固有の財産はあるが、信託の財産は受託者自身の財産と分けて管理されなければならない。
これらの財産を分別管理するため、家族信託では専用の預金口座(信託口口座<シンタクグチコウザ>と呼ばれる)を開設する必要がある。ただし、この信託口口座の開設に応じる金融機関が限定されていることに注意が必要だ。
また、不動産を信託財産とする場合には、その不動産の名義を受託者に移転する登記が必要となるが、信託特有の登記事項がある。信託の登記実務に慣れた司法書士に依頼する方が無難だろう。
帳簿等の作成・報告等の義務
受託者には信託財産に関する帳簿等の書類作成が義務付けられている。この帳簿等の書類はその作成(取得)の日から10年間保存が義務付けられている。
また、年に一度、信託財産の状況に関する報告書を作成し、受益者に報告しなくてはならない。
利益相反となる取引が制限される義務
信託財産は受益者のために管理されなければならない。そこで、受益者や信託財産と受託者との間で利益が相反・競合する取引は厳しく制限される。
例えば、信託財産を受託者の固有財産に組み込んだり、逆に受託者の固有財産を信託財産に入れることや、受託者が信託財産のためにする取引で、受託者が取引相手方の代理人となること等は制限される。受託者にどのような管理・処分を任せ、どのような手続きを要するのかは、家族信託の契約で明確に定めておく必要がある。
信託財産に損失を与えたら(無制限に)補填する義務
受託者の管理怠慢によって信託財産に損失が生じたり、信託財産が変更された場合は、受託者が補填し、または原状回復する義務がある。家族信託の契約の目的外で信託財産を使用したりした場合には、損失分を補填しなければならない。