いつか直面する老親の介護、慌てないために「要介護認定は早めに、 一人で背負うのは厳禁」
40~50代になると周りで聞こえてくる親の介護の話。親と同居している人も、離れて暮らす人も、いつか直面するかもしれない“そのとき”のために、出来ること、知っておくといいことは何なのか、専門家に話を伺った。
親の介護は突然始まる
「半年ほど前、母が玄関先でふらついて転倒してしまいました。まだ70才なのに大腿骨を骨折して、以前のように動けなくなってしまったんです。それ以来、外に出ることが少なくなり、ボーッとする時間が増えて、認知症も発症してしまいました。転ぶまでは毎週プールに通うほど元気だったのに…。親の介護は、まだ先だと思っていたけれど、会社を辞めて実家に帰ろうかと考えています」
そう言って、会社員の吉田美恵さん(44才、仮名)は大きなため息をつく。
ある日、突然始まる親の介護。何も準備していないと、戸惑うことばかりだ。
「うちの親はまだ大丈夫」でも介護認定は早めに
親と一緒に暮らしていても離れていても、介護をスタートするうえで欠かせないのは、要支援・要介護の認定を受けることだ。65才になると市区町村から介護保険被保険者証が自宅に送られてくるが、それだけでは、いざというときに介護サービスを使えない。
ケアマネジャー歴20年以上の田中克典さんは、「認定はできるだけ早く受けておいた方がいい」とアドバイスする。
「“うちの親はまだ元気なので大丈夫”という場合でも、要支援・要介護認定を申請すると、意外とサービスを受けられることも少なくありません。75才や80才など節目の年齢で申請を持ちかけると、親の理解も得やすいでしょう。
区分は要支援1、2から要介護1~5に分かれていますが、要支援1や2の軽い状態に認定されたままだと、自宅で介護サービスを使う場合に不利です。状態に見合った介護サービスを受けるためには、必要に応じて変更申請を行い、日頃から適切な介護度を維持しておくことが大切です」(田中さん・以下同)
まずは、市区町村の担当窓口に問い合わせて、申請手続きをしよう。平日は仕事で時間がとれないという人には、地域包括支援センターが無料で代行をしてくれる。
申請が終われば、次は要介護度を決める「訪問調査」だ。市区町村から派遣された調査員が自宅を訪れて、本人や家族との面談が行われる。具体的な調査項目は、「訪問調査の主な内容」の表にある通りで、日常生活に必要な介助量や認知機能に関するもの、身体機能を見るものなど多岐にわたる。