いつか直面する老親の介護、慌てないために「要介護認定は早めに、 一人で背負うのは厳禁」
【1】電話などで相談 (市区町村の担当窓口へ)
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【2】要介護認定の申請
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【3】主治医意見書 (市区町村の依頼で主治医が意見書を作成)
訪問調査(※1) (市区町村の職員が自宅を訪問して審査)
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【4】要介護度の決定
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【5】認定結果通知 (申請から30日以内に通知)
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【6】非該当と認定
要支援・要介護と認定
(※1)訪問調査の主な内容
調査項目/質問内容
★身体機能・起居動作
・両腕が肩の高さまで上がりますか?
・寝返りや起き上がりは1人でできますか?
・5mを1人で歩けますか?
・10秒間、1人で立っていられますか?
・片足で1秒間、立っていられますか?
★生活機能
・入浴や食事に介助が必要ですか?
・トイレで介助が必要ですか?
・歯磨きや洗顔、着替えに介助が必要ですか?
★認知機能
・名前や生年月日を教えてください
・今の季節は何ですか?
・ここはどこですか?
★精神・行動障害
・物を盗られたなどと被害的になることはありますか?
・介護に抵抗することはありますか?
・外出して戻れないことはありますか?
・物を壊したり衣類を破いたりすることはありますか?
★社会への適応
・買い物はできますか?
・薬の管理はできますか?
★医療行為
・最近2週間以内に、点滴の投与や床ずれの措置などの医療行為を受けましたか?
親は何でもできるとふるまいがち 調査員には本当のことを伝える
「例えば『10秒間、一人で立っていられますか?』という項目では、調査員の前で実際に立って、調査員が『支えなしでできる』『何かにつかまればできる』『できない』を判断します。ご本人は張り切ってやろうとするので、難しそうなら最初から手すりにつかまらせるなどして、事故が起きないように気をつけてください」
正確に状態を判断してもらえず実際の状態よりも介護度が低くなると、支給限度額が低くなる。受けられるはずのサービスが受けられなくなることもあるのだ。
介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは言う。
「特に親世代はプライドが邪魔をして、初めて会う調査員の前では何でもできるようにふるまう人が多い。認知症であっても『名前や生年月日を教えてください』といった質問に問題なく受け答えできるケースは珍しくありません。
家族は仕事を休んででもできるだけ立ち会って、調査員に本当のことを伝えてください。日常の様子や困っていることをメモして見せてもいいし、親が焦がしてしまった鍋や、同じものを買い込んでいる冷蔵庫を写真に撮って、調査員に見せたという人もいます」
介護サービスを受けられるのは要支援・要介護の認定が出た後になる。結果は30日以内に通知されるが、突然転倒して動けなくなったなど急を要する場合は、暫定的に申請日から利用することも可能だ。
「ただし、要支援・要介護に該当しなかった場合、利用した費用は全額自己負担となります。また見込んでいた介護度より低く認定された場合は、保険枠を超えた分が全額自己負担となるので注意が必要です。正式に認定が下りるまでは最低限のサービスに抑えましょう」(田中さん)
共倒れを避けるため「離職」「私一人で」は厳禁
介護が始まっても、すぐに実家に帰る必要はない。太田さんは、「介護離職だけは避けてほしい」と強く訴える。
「特に正社員の場合、一度辞めたら簡単に以前と同じ収入を得ることはできません。介護は人によっていつまで続くかわからないし、人は終わりが見えないと頑張れないもの。何年も続く介護で次第に困窮し、うつになったり虐待したりすることは珍しくありません。家族から高齢者への虐待は、1対1の介護の場で起きています」(太田さん)
父親を介護しようと退職した女性の例…
実際、正社員としてキャリアを重ねていた50代の女性が、一人暮らしの父親を介護しようと、退職して実家に戻ったケースがあったという。
「彼女の母親はすでに亡くなっていて、父親は寝たきりに近い状態でした。育ててくれた父親だからと自宅で看取ることまで考えて、同居を始めたそうです。
ところが、朝も夜も献身的に介護をしているのに、認知機能も低下した父親からは感謝の言葉の一つもかけてもらえない。うつ状態になって、私と会ったときはずっと泣いていました。離れていれば良好な親子関係を築けても、同居すれば手も口も出すし、お互いに嫌な思いをすることもある。それならば別居して介護した方がうまくいきます」(太田さん)
教えてくれた人
田中克典さん/ケアマネジャー、太田差惠子さん/介護・暮らしジャーナリスト取材・構成/戸田梨恵
※女性セブン2023年4月13日号
https://josei7.com/
●経済アナリスト森永卓郎さん「親の介護に年間500万円」介護離職のデメリットを考察