老人ホーム選びのプロ「紹介業者」とは?仲介手数料は?|いい紹介業者選びが介護施設探しの鍵!紹介業者選びのポイントとは
●手数料は施設から得るシステムのため、相談者はゼロ
興味深いのは、それだけの労力をかけながら、「相談・仲介手数料ゼロ」というビジネスモデルだ。
入居が決まった際、紹介業者は入居者ではなく施設から手数料を得るシステムになっている。
「施設の規模や入居金によって様々だが、入居一時金が1000万円以上の場合はその3~5%、1000万円より少ない場合は30万~50万円を紹介業者が受け取る、というのが相場です」(関東に本社を置く紹介業者相談員)
紹介業者を利用する際にはそうした仕組みを知っておくことも重要だ。
入居をせかす相談員には要注意
「施設によっては“今月中に成約すれば手数料は1.5倍”といったキャンペーンを定期的に打つところもあります。施設側も空き部屋を作りたくないから必死なんです。紹介業者が、報酬の上乗せになびくケースもあるでしょう。だから入居を妙に急かすように感じたら、注意したほうがいいかもしれません」(同前)
紹介業者ビジネスに詳しい高齢者住宅コンサルタントの濱田孝一氏が解説する。
「老人ホーム紹介業は歴史が浅く、相談員になるための資格などもありません。そのため、非常に熱心な業者がいる一方、そうとはいえないケースもある。成約した際の手数料も含め、紹介業者と施設がどういう関係にあるのかも、利用者にはわかりづらい。これから環境やルールは整備されてくるでしょうが、現時点では玉石混淆です」
いい紹介業者選びのチェックポイント
前出・濱田氏が挙げる紹介業者選びのポイントは以下のようなものだ。
□相談員が施設の「ソフト面」に詳しいか
紹介業者が頼りになるのは、相談員が施設に足繁く通っているからこそ。しかし、中にはそれをやらない業者もある。
「施設の広さや個室の間取り、スタッフと入居者の比率といった『数字』をスラスラと説明されると、つい“この相談員は詳しそう”と思ってしまいがちですが、そういったハード面のデータは、施設に行ったことがなくても資料からいくらでも説明できます。
相談員自身が施設に行って見聞きしたことを説明してくれるかがポイントです。こちらから『食事の味は?』『施設長はどんな人なの?』といったソフト面についての質問をしてみて、口ごもるようなら注意が必要です」(以下、カギ括弧内は濱田氏)
□施設見学前に本人、家族の話を相談員がよく聞くか
「相談員が施設について詳しいのは当たり前です。マッチングが仕事である以上、施設だけでなく入居希望者にも詳しくなろうとするのがいい相談員です。熱心な相談員は既往症、持病にとどまらず、趣味やこれまでの職歴なども聞いて、少しでも入居希望者のことを知ろうとする。そこまでやる相談員なら信頼できるでしょう」
□見学に必ず同行するか
いざ老人ホームを見学するという時に、普通は何に注意して見ればいいのかよくわからない。
「見学の際にはスタッフの服装や挨拶、言葉遣いなどちょっとしたところに施設の善し悪しが現われます。“素人”がなかなか気付きにくいところですから、相談員が同行して解説してくれることに意味があります。ところが紹介業者の中にはネット上で資料請求し、それを渡して終わり、というところもあります」
□施設の「マイナス面」を提示するか
“いいところばかり説明されると不安になる”というちょっと天邪鬼な感覚も、老人ホーム選びでは大事になる。
「どんな施設だっていいところばかりではありません。『施設長はちょっとぶっきらぼうで話しづらいところがあるけど、利用者目線に立った熱心な人』といったように、マイナスに取られるかもしれない部分まで説明して、入居希望者の判断に委ねる。そういう相談員のほうが誠実といえます。そもそも、『いい/悪い』は人によって異なるものです。段差の多い家に住み慣れた人が突然バリアフリーの施設に入ると、逆に転倒してしまうこともあるくらいですから」
前述の通り、利用者側は老人ホーム紹介業者に手数料を支払う必要はない。電話の問い合わせでさえ、フリーダイヤルに設定している業者が多い。
だからこそ、紹介業者とやり取りして不安な点があれば、別の業者に依頼しなおせばいいだけのこと。
信頼できる紹介業者と出会うことが、良いホーム探しの近道となる。
※週刊ポスト2016年5月16日号