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大槻ケンヂと『イカ天』の意外な接点 1960~70年代生まれを直撃する番組『X年後の関係者たち』

 古き良き日本を知るのも大切だが、多感な時期をテレビやゲームなどを享受して過ごした世代もそろそろ50代。そんな世代を直撃する番組が『X年後の関係者たち~あのムーブメントの舞台裏』(BS-TBS)。1975年生まれのテレビウォッチャー・北村ヂンさんが紹介します。

1960~70年代生まれあたりがターゲット

 テレビ業界では、常に一定の需要がある「懐かし番組」。昔の映像を流して視聴者をノスタルジーを刺激しまくる類いの番組だ。

 この手の「懐かし番組」。ちょっと前までは、やはり昭和がメインに扱われることが多かった。歌手でいうと、ピンクレディーや沢田研二あたりの映像が登場するイメージだ。

 しかし、さすがにテレビ番組視聴者の年齢層も変わってきているわけで、近年では昭和末期~平成初期あたりまでは「懐かし番組」のターゲットとなっている。

「こんなの全然最近だろ!」と思うような事象まで「懐かし」扱いで紹介されていて、がく然とすることもあるのだが……。

 さて、そんな懐かし番組の中で、最近注目しているのが『X年後の関係者たち~あのムーブメントの舞台裏』(BS-TBS)。毎回、一つの懐かしネタを設定して、そのテーマについて語り合う番組なのだが、そのテーマセレクトが絶妙なのだ。

 iモード、コギャル、G-SHOCK、VAIO、女子プロレス、スーパーカー、海洋堂、幻冬舎、ねるねるねるね……などなど、おそらく1960~70年代生まれあたりの視聴者をターゲットにしていると思われる程よい懐かしさ!
従来の「懐かし番組」はちょっと古すぎるよ! と思っていた世代のハートをガッシリとわしづかみにするラインアップだ。

『イカ天』と大槻ケンヂの意外な接点

 番組は、当時の映像なども紹介されるものの、基本はトーク中心に進行。タイトルの通り、それぞれのテーマがムーブメントを巻き起こした時の関係者を3~4人呼んで、同窓会形式で話を聞いていく。

 ワンテーマについて、約1時間じっくりと話を聞くことができる番組は貴重。ブーム当時をよく知る世代であっても、はじめて聞くようなレアな情報がポンポン飛び出してくるのだ。

「バンドブーム編」のゲストは筋肉少女帯の大槻ケンヂ、元・たまの石川浩司、音楽評論家の萩原健太。

 80年代後半の音楽全般を紹介する番組のワンコーナーとしてバンドブームが取り上げられることはあっても、バンドブームオンリーで1時間というのは、地上波ではまずあり得ない構成だ。

 萩原健太は『いかすバンド天国』(TBS)の審査委員長。たまは『イカ天』の3代目グランドキング。というわけで、おのずと『イカ天』関係の話題が多めになっていく。
 筋肉少女帯は『イカ天』には出演していないが、大槻ケンヂと『イカ天』の意外な接点が明かされた。

 80~90年代バンドブームを象徴する雑誌『バンドやろうぜ』編集長の新井浩志がVTRで登場。『イカ天』がスタートする前に、TBSのスタッフが編集部へやって来て「『バンドやろうぜ』みたいな番組をやりたい」と相談されていたと明かした。

 その際、新井編集長は「司会は大槻ケンヂさんがいい」と提案していたという。すでに司会は三宅裕司で決定していたため、実現はしなかったものの、オーケンが『イカ天』の司会という世界線もあり得たのだ!?

 この情報、当の大槻自身も知らなかったようで、かなり驚いていた。ムーブメントのド真ん中にいた関係者ならではの貴重な証言だ!

当事者が分析するセガサターンの敗因

「バンドブーム」や「不作の83年組アイドル」(ゲスト:松本明子、森尾由美、小林千絵)回では当然、ムーブメントに巻き込まれたバンドマンやアイドル自身が登場するが、商品やサービス系の回には、それを開発・発売していた会社の社員がゲストとして出演する。

 要は、普通の素人がテレビスタジオにやって来てトークをするわけだが、素人であるが故に、こすられていない、貴重な証言が飛び出すこともある。

「セガサターン・次世代ゲーム機」では、現&元・SEGA社員が集まって、セガサターンVS.プレイステーションによる次世代ゲーム機戦争について語られた。

 本当にムーブメントを作りあげた、勝ち組のプレイステーション陣営ではなく、敗者であるセガサターン側をテーマに設定するあたりも、この番組の肝。

 セガサターンは、まだスーパーファミコンが家庭用ゲーム機の主役だった1994年11月に発売された。

 当時、ゲームセンターで絶大な人気を誇っていた『バーチャファイター』を第一弾タイトルとして発売。スタートダッシュではプレイステーションをぶっちぎって、いち早く100万台を突破している。

 しかし、当初「家電メーカーが作ったゲーム機(笑)」と侮っていたプレイステーションにじょじょに迫られ、最終的には圧倒的大差をつけられて次世代ゲーム機戦争に破れている。

 この敗因については、これまでにさまざまな分析がなされているが、この日、出演したSEGAの開発業務担当・宮崎氏が語ったのは「SEGAは“ファースト”であることを目指しすぎた」ということ。

 次世代機一番乗りで高性能のハードを発売し、どこも出したことがないような、とがりまくったゲームを発売していたセガサターン。しかし、発売タイミングとしては後発となってもバランス良く「ベスト」なゲーム機に仕上げてきたプレイステーションに敗北してしまったというのだ。

 SEGAの失敗については、『しくじり先生』(テレビ朝日)でも取り上げられたことがあるが、あちらは芸人によるカッチリと作り込まれたプレゼン形式。あるあるネタとしては楽しめたが、「新情報」はなかなか出てこない構成となっている。

 一方、『X年後の関係者たち』では、リアル当事者による、リアル反省会状態のトークが繰り広げられる。だからこそ、ここでしか聞くことができない、素の証言がポロッとこぼれてしまうのだ。

今後はテーマ設定次第だが……

 新しいタイプの「懐かし番組」である『X年後の関係者たち』。今後の展開にも期待したいところだが、やはり成否は「どんなテーマを設定するのか」にかかってくるだろう。

 7月19日放送分は「ニコニコ動画」。……ホントに最近じゃん!

 ニコニコ動画のサービス開始は2006年。早くも2000年代の話題に突入してしまって大丈夫なのだろうか!? この分だと、意外に早く「タピオカ」回とか来ちゃいそうだけど……。

『X年後の関係者たち』はBS-TBSのみでの放送だが、TVerやGYAOで見逃し配信がされているので、BSアンテナのない家での気軽に見ることができる。

「今の人たち的には、どの辺くらいまでが“懐かしい”とされているのか?」をチェックしてみよう!

文とイラスト/北村ヂン

北村ヂン

1975年群馬県生まれ。各種おもしろ記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。……といいつつ最近は漫画ばかり描いています。

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