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小麦粉の値上げで高まる「米粉」の需要と可能性!元農林水産大臣は「米粉は救世主」と明言

 ロシアによるウクライナ侵攻により、世界各地で“コムギショック”が起きている。日本でも6月20日納品分より、いよいよ小麦の値上げが始まった。そんななかで注目されている「米粉」は、実は日本を救うスーパーフード。農林水産大臣などを歴任し、いち早く「米粉」に着目してきた森山裕さんにその可能性を聞いた。

小麦粉不足の救世主「米粉」

 ロシア・ウクライナ情勢により、世界規模で食品原料の確保は厳しさを増している。なかでもロシアとウクライナは小麦の主要原産国で、輸出量は世界の約3割を占める。世界規模で小麦不足に陥るなか、小麦粉の代替品としてにわかに注目を集めているのが「米粉」だ。

◆ぐんぐん値上がりする小麦価格

 2021年夏のカナダ産小麦の不作などにより調達価格が上昇。さらに、2022年になるとロシアの輸出規制やウクライナ情勢などを受け、小麦の国際価格はいまもなお高騰し続けている。

「日本人にとって『お米』は、他の作物とはまったく違い、特別な存在です。天皇陛下が皇居にある水田で田植えをされ、豊作を祈られるように、まさに日本文化の根幹であると言っていいでしょう。日本には一生懸命に米を作ってきた長い歴史があります。

たとえば、私の地元の鹿児島県の野井倉という地域は、昔は火山灰で覆われた貧しい土地でした。しかし、地元の人が協力して何十年もかけて鍬や鋤で開墾し、13kmの間に34か所もトンネルを掘って水路を通し、稲作を実現させました。

ところが、現在は米の消費量の減少が深刻な問題となっています。かつて昭和37年度は、一人当たり年間118.3kgの米を消費しましたが、令和2年度には半分以下の50.7kgまで落ちました。

◆米の消費量は60年前の半分以下に!

 国民一人当たりの年間の米消費量はʼ62(昭和37)年度の118.3kgをピークに一貫して減少傾向に。単身や共働き世帯の増加など社会構造の変化に伴い、米を家で炊く割合が減り、国民の米離れが加速している。

米粉の可能性「水田活用で防災にもなる」

“米づくり”という大切な文化そのものが、危機に瀕しているのです。そのため、主食以外に米を使用できるよう、約3500億円の予算を充て、飼料米を作るなどさまざまな政策を行ってきました。

 急峻な山間部から平地に一気に水が流れる日本の地形を考えると、田んぼは“小さなダム”であり、水害を防ぐという防災の観点からも、大切な公共財産なのです。そう簡単になくしていいはずのものではありません。そこで私が着目してきたのが『米粉』です。

 実は日本の土壌に小麦は適さず、国内で年間600万~700万tの小麦が消費されるなか、豊作の年でも国内生産量は100tほど。やはり日本で安定して収穫できる穀物は米なのです。米粉の生産量や消費量を上げることは、日本の農業政策において非常に重要です」

「米粉」普及の課題と可能性

 しかしながら、米粉は品種や製造法によって種類がさまざまあり、小麦ほど扱いが簡単ではないので、なかなか家庭への普及が進まないのも現状だ。

「農水省では研究を重ね、パンや麺を作るのに適した米の種類などを見極めてきました。たとえば、『笑(え)みたわわ』という品種は、他と比べて22.6%もふくらみ、非常にパンに適しています。この米粉を使ったパンは、本当においしいですよ。

 また、米粒を粉砕する際、いままではローラーで押し潰して砕いていたのを、米同士を高速でぶつけ合って細かい粒子にする最新の技術も開発されました。デンプンの損傷が少なく、細かいパウダー状になるため、家庭でもいろいろな料理に使いやすくなりました。

 小麦粉は1kg当たり110円ほどですが、米粉は120~390円と幅があり、製造コストに課題がありますが、大手製粉メーカーが米粉市場に参入し、大量生産できるようになれば価格も手頃になり、将来的には海外への大規模な輸出も期待できます」

◆需要が高まり米粉市場は急拡大

 2012年度以降、米粉用米の需要量は2万tほどで推移。グルテンを含まない特性を発信する「ノングルテン米粉 第三者認証制度」などの運用が2018年から始まり、米粉の需要はますます拡大中。

 日常の多数の料理に使えるほか、腸内環境を整えたり、小麦アレルギーにも対応したりとメリットづくしの米粉は、古来から私たちの体に合うもの。体にやさしく、家計の助けにもなる米粉を積極的に活用したい。

教えてくれた人

森山裕さん/自由民主党 衆議院議員

1945年生まれ、鹿児島県出身。自由民主党総務会長代行。TPP・日EU・日米TAG等経済協定対策本部長。第59代農林水産大臣を務め、米粉の普及に力を注ぐ。

撮影/黒石あみ(本誌) 取材・文/岸綾香

※女性セブン2022年7月21日号
https://josei7.com/

●広がる「米粉」の魅力!失敗しない使い方&レシピ8選「小麦粉高騰で今大注目」|米粉料理家 高橋ヒロさん

●料理家・瀬尾幸子さん 18才から愛用する”文化鍋”で炊いたふっくらご飯で塩むすび

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