気になる目の下の“クマ”原因と対処法 たるみを取る治療法を美容外科医・高須克弥さんが力説
マスク生活も3年目。外出機会が増えたことで、これまで以上に目の下のクマやたるみを気にする人が増えている。あるだけで顔全体がどんより暗く見え、年齢以上に老けて見られるこの厄介者を、どうしたらなくせるのか。予防法はあるのか? 専門家に聞きました。
目の下には生活習慣の影響が如実に表れる
頰のたるみやほうれい線、それに二重あごはマスクの下に隠せても、目元は隠すことができない。「相談に来る人が、この2年で増えました」と、内科・皮膚科医の友利新さんは言う。
「目の周りは皮膚がすごく薄いので、血流の状態が表れやすい。さらに、頻繁なまばたきで乾燥しやすく、汗腺がないので皮膚のバリア機能も弱く、しわやたるみも生じやすい場所です。寝不足や疲れの影響も出やすいんですよ」(友利さん・以下同)
目の下のクマは、見え方で大きく3つに分けられ、それぞれ原因と対処法が違う。
【血行不良による青クマ】
寝不足や疲労、冷え、貧血などが原因。見分け方は、クマの下を指で引っ張り、色が薄くなったら青クマだ。
【色素沈着による茶クマ】
摩擦による炎症からメラニン色素が沈着したことが原因。皮膚そのものが茶色に。
【たるみと影による黒クマ】
加齢などにより目の下にたるみができ、その影が黒く見える。上を向くと消えることで茶クマと見分けられる。
「1つ目は“青クマ”。これは、疲れ目や寝不足などが原因で血行不良になり、うっ血により拡張した毛細血管が目の下の薄い皮膚から透けて見えるため、青や紫色っぽく見えるものです。改善するには、血流をよくすること。血行促進効果のあるアイクリームを塗ったり、アイマスクで目の周りを温めるのもいいですね。そして目を酷使せずにしっかり睡眠をとり、血流を促進すれば改善できます」
アイクリームは、血流改善効果のある「トコフェロール(ビタミンE)」などを配合したものがおすすめだ。
「次の“茶クマ”は、目の周りをこすったときなどの摩擦刺激で炎症を起こした肌を守るために、メラノサイトという色素細胞が活性化してメラニンという色素を作り出し、それが沈着して茶色っぽく見えるクマです。炎症というと驚くかもしれませんが、日焼け後の炎症がシミになるのと同じことが目の周りに起こっていると思ってください」
目の周りの皮膚はとても薄いため、メイクやクレンジングの際に力を入れてゴシゴシこすることの積み重ねでも、色素沈着につながってしまう。
「改善するには、クレンジングを見直し、目の周りをできるだけ触らず、摩擦を起こさないようにするだけでかなり違ってきます。さらに、美白効果のあるスキンケアやアイクリームで活発になったメラニン色素を抑えれば、改善できる可能性はあります」
ケアする際もこすらず、指の腹でやさしくポンポンとなじませることが重要。代表的な美白成分には、「ビタミンC誘導体」「プラセンタ」「トラネキサム酸」などがある。茶クマが濃くなって気になる場合は、レーザー治療などの美容医療(※)でも取ることができる。
(※)美容医療とは、医師がさまざまな医療技術を用いて人の容姿や素肌をよりよい状態にする医療行為のことで、美容整形および美容外科、美容皮膚科、美容内科などがある。
「3つ目の“黒クマ”は、目の下にたるみやふくらみがあり、その影の部分が黒く見えるクマで、青や茶クマと同時に現れる場合もあります。これは青や茶クマとは異なり、加齢によって皮膚のハリがなくなったことで眼球を守っている眼窩(がんか)脂肪が目の下にポコっと出ることで起こります。目の下のふくらんだ部分を指で押すと、上まぶたのくぼみがなくなることがありますが、これは、皮膚がたるんで落ちてきた脂肪が、元の位置に戻るからなのです」
この状態までたるんでしまった場合は、スキンケアでは対処できないため、たるんだ脂肪を取り除く施術が必要になる。
「目の下のたるみを取る治療は比較的簡単。この手術を行うだけで、90才の人が70才に見えるようになりますよ」
そう力強く語るのは、美容外科医の高須克弥さんだ。
「たるみを取る治療法はいくつかあり、皮膚のたるみが大きい人や目の下のたるみとともに涙袋にもたるみがある場合、または、いまより目元をすっきりさせたいといったケースは、手術で取り除くことができます。手術で取ってしまえば、将来、加齢により変化しても、たるみは再び出にくいというメリットがあります。
ただし、たるみの状態は人それぞれで、状態や希望により、治療法が異なる場合があるので、医師とよく相談するといいですね」(高須さん・以下同)
さらに、クマのように見えても、実は“あざ”という可能性もある。スキンケアなどの効果がなかなか表れない場合も、皮膚科などに相談するのが賢明だ。
「若いのにクマが取れないと悩んでいる人の中には、あざの一種である『太田母斑』が原因の場合もあります。これは生まれつきのものですが、小さい頃は気づかなかったのに、思春期から20代にかけて濃くなることが多く、いくらスキンケアを頑張っても薄くなることはありません。蒙古斑のような青あざではなく、茶色に見えることもあり、クマと混同しやすいのですが、目の粘膜・白目のところに青色の色素斑があれば、『太田母斑』の可能性が高い。クマに悩んでいたら、まずは皮膚科や美容外科の専門医に相談し、正体が何かを診断してもらうといいでしょう」
目元の筋肉
・眼輪筋(がんりんきん)…使いすぎによる筋肉の収縮と加齢による衰えで、目の下のたるみやクマ、しわに。
・前頭筋(ぜんとうきん)…こり固まると、まぶたが開けにくくなる。
・皺眉筋(すうびきん)…一点を凝視していると眉の筋肉がこり固まり、まぶたのたるみや眉間のしわに。
・眉毛下制筋(びもうかせいきん)…こり固まると、ここに集中している血液やリンパが詰まり、目の疲れ、むくみ、クマに。
目の下にたるみが出る場合、眼輪筋がゆるみ、皮膚のハリもなくなったため、眼窩脂肪が前に出て、目の下にふくらみができる。
目の下のたるみ予防にはハリとうるおいケア
著しくたるんだ目の下を若かりし頃の状態に自力で戻すのは残念ながら不可能。ただし、これ以上ひどくならないようにすることはいまからでもできる。目元をしっかり保湿し、ハリを与えることだ。
「骨格や皮膚のタイプで、たるみやすい人がいます。自分の両親や祖父母の目の下がぷっくりしていれば、自分もなりやすいと思った方がいいでしょう。日頃から、肌にハリを持たせる『レチノール』『ニールワン』『ナイアシンアミド』などの成分を含むアイクリームで、予防のケアを」
また、日焼けや喫煙、間違ったダイエット、無表情、過度なマッサージも目の下のたるみにはNGの生活習慣だ。
特に間違ったダイエットは、栄養の偏りが皮膚にダメージを与えるとともに、骨の破壊が進んで眼窩が大きくなり、眼窩脂肪が下垂しやすくなるという。そして、無表情や過度のマッサージは、眼輪筋など顔の筋肉を衰えさせ、皮膚のたるみを進めてしまう。
「日頃のちょっとした習慣の積み重ねが、目の下のクマやたるみを生み出します。老け見えしないためにも、目元ケアに努めましょう」(友利さん)
教えてくれた人
■美容外科医・高須克弥さん/「高須クリニック」統括院長。日本の美容医療の第一人者。「20才若返る手術」を自分の顔で実験中。77才の現在もオペの現場に立っている。
■内科・皮膚科医・友利新さん/公式YouTubeチャンネル『友利新/医師「内科・皮膚科」』を開設。世の中の女性が気になる肌の悩みやスキンケアの方法に答えている。
取材・文/山下和恵 イラスト/鈴木みゆき 画像提供/高須クリニック
※女性セブン2022年6月16日号
https://josei7.com/
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