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福祉用具を使うときの注意ポイント6つ「介護する人が自ら試してみることが大切」

 在宅介護で高齢者の生活を支えているのが、手すりや介護ベッド、歩行器などの福祉用具だ。福祉用具は、選び方や使い方を間違ってしまうと、体の状態が悪化してしまうこともあるという。福祉用具を使うときの注意すべきポイントについてプロに教えてもらった。

福祉用具は使う前にプロに相談を

 介護用品・福祉用具は、介護保険が適用するものなら、1割~3割の自己負担でレンタルまたは購入できるが、選ぶときには、プロのアドバイスが必須だという。

 福祉用具専門相談員の山上智史さんは、以下のように話す。

「福祉用具は安価なものではないので、せっかく購入したんだから長く使いたいという思いから、体に合わないものを使い続けてしまう方もいらっしゃいます。

 体にフィットしていないものを使い続けると、姿勢が崩れたり悪いクセがついたりして、状況が悪化してしまうこともあるんです。

 介護保険の対象となるものはなるべく購入するのではなく、レンタルして、そのときどきの体に合わせて使うことをおすすめします」

→介護用品や福祉用具はレンタルがおすすめの理由 介護保険対象の品目や活用方法を解説

福祉用具の使い方の注意ポイント6つ

 福祉用具は、介護する人もされる人も、知っておくべき6つのポイントがある。以下で解説する。

1.目的を理解して使用すること

「介護保険適用の福祉用具は『自立支援、介助者負担の軽減』という目的があります。

 福祉用具は便利だからといって安易に使うと自立支援の阻害になることもあるので注意が必要です。

 たとえば、下半身の筋力が低下してきて歩きにくくなった方が、まっさきに車いすを使ってしまったことで、今までよりも歩けなくなってしまったということもあります。

 安易に福祉用具を使ってしまうことで、その方の自立支援を妨げてしまうこともあるんです。その方の持っている自立機能を把握して、それを生かせるように福祉用具をうまく活用することが重要です」(山上さん、以下同)

2.デメリットも考慮して活用する

「福祉用具には、メリットもありますが、使うことのデメリットもあります。利用者にデメリットをしっかり伝えることで初めて本当に必要かどうかが見極められます。

 たとえば、『車いすに乗ると移動が楽になりますよ、下半身の負担の軽減になりますよ』といったメリットだけを考えると、誰でも使いたいと感じると思います。

 しかし、『車いすに乗ってしまうと、下肢筋力の低下にもつながる可能性があります』というデメリットも伝えることが大事なんです。

 そこではじめて利用する方が、『じゃあもう少し歩行器で頑張ってみようかな』と考えるようになります。自立機能の維持を考慮したうえでの“自己決定”となるわけです。

 福祉用具を正しく選ぶには、この“自己決定”を促すことが大事だと考えています」

3.常に体の状態にマッチする福祉用具を選定すること

 福祉用具は使う人の“今”の状態に合わせて選ぶことがもっとも重要になるという。

「たとえば、マットレスを選ぶ時、『今はまだ普通のマットレスで大丈夫だけど、これから動けなくなるかもしれないから、今のうちからエアマットにしておこう』と、先読みしてしまうのが一番危険です。

 エアマットは床ずれ防止機能に優れている一方で、柔らかくて動きづらいというデメリットもあり、本当はもっと動けるはずの方が動けなくなってしまう可能性があります。

 使う方の状態が悪化して床ずれが心配になったタイミングでエアマットの導入を考えるといった、ステップが必要になります。

 反対に、老化や病気によって体の状態が悪化しているのにもかかわらず、そのまま福祉用具を使い続けるのもミスマッチが起こる原因となります」

4.介護する人が自ら使ってみる

 さらに福祉用具を選ぶときは、介護する人も注意すべき点があるという。

「福祉用具は老化などで体が衰えたときに使うものが多いため、一般的には、なじみがないものが多くあります。

 そのため、利用者に使ってもらう前に、まずは介護者側も実際に使ってみる、実体験することをおすすめします。

 電動ベッドには、フラットな状態からリクライニングした状態に上がり上半身を持ち上げてくれる『背上げ機能』があります。この機能を実際に寝たきりの方にいきなり利用してしまうと、マットレスと背中の間に摩擦が起こり、背中が引っ張られるような窮屈感を与えてしまうことがあります。この窮屈感は、マットレスから背中を離すことで解消されます。

 この窮屈さは、実際に体験してみないとわからないんです。介護者が寝て背上げをしてみて、マットレスから背中を放すとラクになるということを体験することで、そのひと手間を惜しみなくしてあげられるようになると思います。

 福祉用具は、まず介護する側が自ら使ってみて、使う方の気持ちを知ることが、良い介護につながると考えています」

5.納品された状態のまま使わないこと

 例えば、車椅子のフットサポート(足置き台)は、搬入時に最も高い位置に設定されていることが多いとのこと。

「足が長い人がそのまま使うと足が収まらず、床ずれや姿勢崩れの原因になります。福祉用具はその使う人に合わせた調整をすることで、適切な自立支援用具になります。逆に調整をしないと自立機能を損ねてしまう場合もあるので、注意して使いましょう」

6.正しい使い方を確認してから利用を

「使い方が間違っていると、体に悪影響を及ぼします。間違った使い方をすると、今まで自立できていたことがそのせいでできなくなってしまうこともあるのです。

 たとえば、車いすのクッションは、正しく使うことで姿勢保持や床ずれの予防にもつながりますが、前後左右の置き方が違っていると、姿勢が悪くなってしまうこともあります。

 まずは、専門家に使い方を聞いて、本人とよく確認して使うことをおすすめします」

教えてくれた人

福祉用具専門相談員・山上智史さん

山上智史さん

福祉用具貸与事業所にて介護福祉士として介護現場を経験。現在は福祉用具貸与事業所「K-WORKER」と便利屋事業(住まいるサポート)の管理者を務める。福祉用具専門相談員としての現場経験をいかした「高齢者在宅の自立支援・介助者負担の軽減を目的とした介適環境づくり」を実践している。
https://k-worker.co.jp/

取材・文/本上夕貴

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