介護ロボット 脳波読み取り話せない人でも意思伝達が可能
サポートする側もされる側も精神的・肉体的負担が大きい介護。介護職員の不足も取り沙汰されるなか、ロボットによる介護が注目を集めている。
これまでの移乗介助機器は体をつりあげるリフトタイプが主流だったが、『移乗介助サポートロボット』(富士機械製造、2015年販売開始)は体を下から支え、要介護者の胸部を保持して抱きかかえるタイプなので、利用者の体の負担が軽減される。開発センター事業開発部部長・五十棲丈二さんが語る。
「個人の体格や車いすなどの座面高に応じてロボットが最適な動作を算出。クッションのついた保持部に上体を預け、スイッチを押すと、人が立ち上がるときの上体の動きにあわせてせり上がります。利用者が自分の力で立ち上がろうとする意志をサポートします」
価格は100万~150万円で今春発売を予定している。
背丈は40cm。振り付きで歌を歌ったり、まるで人間のように会話をするコミュニケーションロボット『PALRO(パルロ)』(富士ソフト、ビジネスシリーズは2012年販売開始)。コーポレートコミュニケーション部・久下登美子さんが語る。
「会話が得意なロボットで、日本全国230か所の福祉施設でご利用いただいています。知能化技術(※)を搭載しており、100人以上の顔と名前、会話内容を記憶します。他にも、クイズを出したり、一緒に体操することで頭や体の運動を促したり、インターネットに接続して最新情報を会話に組み込んだりします。生活機能低下の予防や認知症ケアに役立つと期待がよせられています」
介護施設向けに販売もしくは、貸し出しが行われている。
脳波測定で意思の伝達が可能に
独立行政法人産業技術総合研究所で開発中の『ニューロコミュニケーター』を使えば、話したり書いたりすることが困難な重度の運動機能障害者でも脳波を計測することで意思を伝達することができるようになる。研究グループ長・長谷川良平さんが語る。
「パソコンの画面上に『トイレ』、『飲み物』など8種類のピクトグラム(絵文字)が表示され、自分が選びたいピクトグラムがフラッシュ(発光)したときに脳波は変化します。それをキャップ状の超小型脳波計が計測、解析し、無線でコンピューターに送られます。その変化を観測することで、患者さんの気持ちや介護者にやってもらいたいことを特定できるのです」
特定されたメッセージはパソコン上のCGアニメキャラクターが人工音声で読み上げる。
電気通信大学発のベンチャー企業・メルティンMMIが開発中の義手『筋電義手』。従来の義手とは違い、筋肉の動きを記憶する機能を持つ。広報担当・石井利明さんが語る。
「人間の体には無数の電気信号が流れており、それぞれ特性があります。それを信号別に分けて計測することで、例えば“えんぴつを握る”“箸を使う”という細かな動作が義手でも可能になります。
さまざまな動作をする際の腕の力の入れ方を記憶させておくので、装着した人は、自分が思ったとおりに動かせます」
同時に開発中の爪をつけた人工皮膚を装着すると、小さなコインも正確につかめるようになるという。
SFだと思っていた夢の技術が現実となりつつある。介護ロボットの今後に期待しよう。
※女性セブン2015年2月12日号