市販便秘薬の種類と選び方を医師が解説|タイプの合わない薬での症状悪化に要注意
「年を取るごとに便秘の悩みが深くなる」とよく言われるが、コロナ禍で長引く自粛生活によって、ストレスや運動不足が原因で便秘に悩む人が増えている。特に女性は、女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)に大腸のぜん動運動を抑える働きと、便からの水分吸収を促す作用もあることから、男性よりも便秘に悩みがちだ。
いますぐ出したいなら、物理的刺激が有効
重い便秘に悩むと、なんとかして「いますぐ出したい!」と思うが、そんな場合は、「座薬や浣腸によって腸に刺激を与えるのが有効です」と、みなと芝クリニック院長の川本徹さんは言う。
「大人の場合は、30gくらいの浣腸がおすすめ。腹痛を伴う場合は、お腹を温めると少し楽になると思います。それでも出ないなら、迷わず病院に行くこと。『便秘くらいで』と思うかもしれませんが、激しい腹痛を訴えて救急搬送され、検査すると便秘だったというのはよくあります」(川本さん・以下同)
文献には4~5㎏の便がたまっていたという記述があるが、実際にはそこまでたまることはほとんどない。1回の便の量は約100g、1日3食として300gほどが一般的な便の量。3日で約1㎏、1週間ならせいぜい2~3㎏だ。
「便は老廃物です。いつまでも大腸にあれば腐敗して慢性的な炎症を引き起こし、過敏性腸症候群、腸閉塞、大腸がんなどの病気の原因に。便を無理に出そうとして、痔になることもある。ためてもいいことはありません」
便秘の種類に合わせて薬を選ぶ
便秘の対策としては、ヨーグルト・納豆などの発酵食品や、きのこ・海藻などの水溶性食物繊維で腸内環境を整え、水分を充分摂ることが大切だ。長期療養病床・田中病院院長の田中優子さんが言う。
「水分は便を軟らかくして量を増やします。高齢者はのどの渇きを感じにくく水分不足の人が多い。意識して摂りましょう」(田中さん・以下同)
とはいえ、食生活の改善で腸内環境を整えるには時間がかかる。そんなときの強い味方は、市販の便秘薬だ。
「便秘のタイプに合わない便秘薬を選ぶと症状が悪化することもあります。試しても効果がない、または、のみ続けないと出ない状態が1か月続いたら、消化器内科に行くことをおすすめします」
便秘薬の選び方は下記を参考に。便秘や下痢を繰り返す人は、便秘薬より乳酸菌や酪酸菌などの整腸剤で腸内環境を整えよう。
選び方に注意したい、市販の便秘薬の種類と効果
■便の量を増やす:膨張性便秘薬
【特徴】
便量が少ない場合に効く。腸内では食物繊維は消化されないため、プランタゴ・オバタ種皮などの食物繊維を主成分にする膨張性の便秘薬をのむことで、便の体積を増やし、便を軟らかくして排便を促す。
【注意点】
食事量が少なく、排便できるほどの便量を作るのに時間がかかる場合に有効。だが、たっぷりの水と一緒にとらないと便が膨らまないため、効用が弱まる。
【代表的な市販薬】
スルーラックファイバ(エスエス製薬)、ウィズワン エル(ゼリア新薬工業)など。
■便の表面に膜を作る:浸潤性便秘薬
【特徴】
水分が少なく、硬くなった便に水分を浸透させ、便を軟らかくするとともに、便の表面に膜を作り、ツルンと排便しやすくする薬。主成分は、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)
【注意点】
たっぷりの水と一緒に服用すること。腸壁と便の間がなめらかになり、いきまなくても排便できるため、直腸性便秘の人に有効。残便感がある人にもおすすめ。
【代表的な市販薬】
オイルデル(小林製薬)、コーラックファースト(大正製薬)、ハーブイン「タケダ」(アリナミン製薬)
■便を軟らかくする:塩類便秘薬
【特徴】
腸の中で水分を集めて、便を軟らかくして排便を促す薬。便秘全般に有効で、刺激が少なく、習慣化しにくい。主な成分は酸化マグネシウム、硫酸マグネシウムなど。
【注意点】
たっぷりの水と一緒にのむと効果的だが、下痢に注意が必要。腎機能が悪い人が使うと高マグネシウム中毒になるので使用不可。
【代表的な市販薬】
ミルマグ内服液(エムジーファーマ)、スラーリア便秘薬(ロート製薬)、酸化マグネシウムE便秘薬(健栄製薬)
■腸のぜん動運動を促す:刺激性便秘薬
【特徴】
腸に直接働きかけて、ぜん動運動を高め、排便を促す薬。市販の便秘薬の大半を占める。主な成分は、センノシド、センナ、大黄、ピサコジル、ピコスルファートナトリウム、フェノバリンなど。
【注意点】
効き目が実感しやすいため、重い便秘症状に使われることが多い。使い続けると増量しないと効果が得られなくなることも。妊婦は骨盤内出血を起こして流産、早産の危険があるため使用不可。
【代表的な市販薬】
コーラック(大正製薬)、タケダ漢方便秘薬(アリナミン製薬)、スルーラックS(エスエス製薬)
これでスッキリ! 便秘を解消して、美腸に近づける必殺技
どうしても出ない、苦しい状態が続く場合は、専門家の手を借りて腸をすっきりきれいにするのがいちばん。たまった便を出したら腸内を検査し、根本から便秘を治そう。
■腸内洗浄をして、隅々まできれいにする
腸内洗浄(コロンハイドロセラピー)は、肛門から腸内に温水を入れ、便や食物のカスといった不要物を洗い流す療法。1980年代にアメリカで始まった方法で、腸壁にへばりついた宿便が取れ、病気予防や美容効果が高いといわれている。
「腸を丸洗いする感覚なので気分的にもスッキリします。ただ、腸内の善玉菌もすべて流れ出てしまうので、その後のケアが大切です。ヨーグルトや納豆などの発酵食品を食べ、腸内を有用菌で満たすよう心がけて」(田中さん)。
所要時間は60~90分、2万円~が目安で、消化器内科、婦人科クリニックなどで受けられる。大腸内視鏡検査の前処置として実施しているクリニックもある。
■最新のDNA解析による「腸内フローラ検査」
腸内の状態を調べるには、大腸をからっぽにして調べる内視鏡検査が有効。だが、もっと手軽な方法として「腸内フローラ検査」が注目を集めている。
「これは、最新の遺伝子検査機で便内細菌のDNAを調べ、その値から細菌の割合を計算し、腸内バランスを推測するという仕組みです。腸内フローラの状態から便秘の原因を探り、食事や生活習慣を改善するためのアドバイスや薬の処方、除菌などを行うことで健康と美肌を目指します」(川本さん)。
消化器内科などで問診後、セルフで採便して検査機関へ郵送すると、約3週間で結果がでる。検査キットも販売されており、費用は2万円~。
■排便力を高める、和式トイレスタイルのストレッチ
加齢により筋肉が衰えたことで起こる便秘は、排便にかかわる筋肉を鍛えることで予防できる。排便には腹筋が必要だが、和式トイレの排便姿勢をとって左右に体をねじれば、腸に刺激が加わって便意が促されるため、ストレッチとして最適だ。
【1】両足を開いてしゃがみ、両手を前で合わせる。
【2】腰を落としたまま、左右に各5回体をひねる。
「洋式トイレで排便する際には、少し前かがみになって自分の足元を見るような体勢にすると、直腸と肛門が一直線になり、太ももが腸を圧迫するのでスムーズに排便できます。また、“食後はとりあえずトイレに行く”という、習慣をつけるのもいいですよ」(田中さん)。
教えてくれた人
●田中優子さん/長期療養病床・田中病院院長
●川本徹さん/みなと芝クリニック院長
取材・文/山下和恵 イラスト/オカダナオコ
※女性セブン2021年5月20・27日号
https://josei7.com/
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