娘から見た「高木ブー」のすごさ|高木ブー×かおるさん“父娘対談”【連載 第40回】
高木ブーさんのタレント活動と日常生活を支えているのは、ひとり娘のかおるさんである。好評発売中の『女性セブンムック よくわかる!介護読本』では、巻頭でふたりの「父娘スペシャル本音対談」をたっぷり掲載した。今回は、残念ながらムックに収め切れなかったエピソードを中心に、親子の息の合ったやりとりを紹介しよう。(聞き手・石原壮一郎)
→高木ブーさん、かおるさんの対談が掲載されている『よくわかる!介護読本』の詳しい情報はこちらをクリック
「僕が折れるから、ケンカにならないよね(笑い)」
高木かおる(以下、かおる):今日も家を出るときに、どの服にするか悩んでたよね。
高木ブー(以下、ブー):色だけ早く決めろって言うから、昨日「じゃあ、ブルー」って決めたんだよね。今日は、最後の2着まで絞って、どっちにするか迷っちゃった。
かおる:「こっちがいいんじゃない」「いや、こっちだよ」なんて小さな言い争いは、しょっちゅうやってるね。大きなケンカになることはないけど。
ブー:最後は僕が折れるから。
かおる:えー、それはちょっとうなずけないなあ。まあ、そういうことにしておきます。ところで、せっかくの親子対談だからあらためて聞いておこうと思うんだけど、私が産まれたときって、どういう感じだったの?
ブー:産まれたっていう知らせを聞いて病院に行ったら、くしゃくしゃの顔をした小さいのが寝てた。抱っこしたかったんだけど、病院がさせてくれなかったんだよね。もちろん嬉しかったし感激したけど、「俺も父親になったぞー!」みたいな感じはなかったかな。
かおる:お母さん(喜代子さん、1994年に死去)が、「お父さんは、本当は男の子が欲しかったらしいわよ」って言ってたよ。
ブー:産まれる前はそんなこと言ったかもしれないけど、実際に産まれてきた我が子を見たら、男とか女とかは関係ないよね。無事に産まれてきてくれてホッとしたし、お母さんにも「よかったね。がんばったね」って言ったのを覚えてる。
かおる:お父さんが「高木ブー」という芸能人だってことがわかってきたのは、4歳か5歳ぐらいのころかな。家族でたまーに行っていた中華料理屋さんでご飯を食べてると、ほかのお客さんの子どもたちが集まってきて、サインや写真を頼んでる。それを見て、何となくそういう人なんだって気づき始めた。
ブー:そういえば、高木ブーには隠し子がいるって週刊誌に書かれたこともあったな。聞かれてないから答えなかっただけで、隠してたわけじゃないのに。家族があるってことが知られてからは、かおるの7歳の七五三を芸能週刊誌が取材に来たりもしてたね。
かおる:お父さんがテレビに出ている人でよかったのは、小さいころから働いている姿を見られたところかな。会社勤めだったら、どんな仕事してるか子どもはわからないよね。毎週、お母さんといっしょに『ケガしませんように』って祈りながら、『8時だョ!全員集合』を見てた」
ブー:僕のほうもコントをしながら、家でテレビを見ている妻と子どもの顔を思い浮かべて……と言いたいところだけど、そんな余裕はなかったかな。アハハ。
「新しい役割を果たすために、ずっと元気で長生きしてください」
大手広告代理店に長く勤務していたかおるさんは、海外アーティストや日本の大物アーティストを担当してきた。その経験を生かして、ベテラン芸能人「高木ブー」をプロデュースし、実力と持ち味が発揮できる活躍の場を創り出している。
かおる:娘の私が言うのもヘンだけど、ザ・ドリフターズの高木ブーという人は、タレントとしてもウクレレ奏者としても、なかなかたいしたものだと思う。
ブー:僕ひとりだったら何もできないけど、かおるや家族が助けてくれるおかげで、自分なりにどうにか活動できてる。3月の生配信ライブだって、この歳で新しいことを経験できるとは思わなかった。実際にやってみて、たくさんのゲストが次々に出てくるあのやり方は、いろんな可能性があると感じたな。
かおる:さすが高木ブー、意欲的だね。大人になってからわかってきたのが、ドリフのコントでの高木ブーの役割のこと。子どものころは、どうしてお父さんはいつも端っこなのかなと思ったこともあるけど、端っこの人がいないと真ん中が引き立たない。真ん中も大事だけど、端っこで全体の面白さを支えるのも大事な役割なんだって気づいた。
ブー:前に『第5の男』っていう自伝的な本を出したけど、どのグループや職場にも、必ず“第5の男”はいるんだよね。第5がいるから、第1や第2がより輝いて、全体が魅力的になる。ドリフでその役割を果たせたことは、僕の誇りかな。
かおる:「ドリフ大爆笑」の雷様のコントの面白さがわかるようになったのも、ある程度の年齢になって社会経験を重ねてからだったな。いつもはセリフが少ないお父さんが、雷様のときはブツブツと愚痴や文句を言って、長さんや仲本さんがなだめる図式は、考えてみたらシュールだよね。当時も、もしかしたら子どもより大人のほうが喜んでたかもしれない。
ブー:雷様は、いちおう流れの台本はあったけど、ほとんど本音を言ってただけなんだよね。長さんが、僕がメインになる設定を考えてくれた。ギターやウクレレを弾くこともちょいちょいあって、おかげさまで代名詞みたいになってくれたのはありがたかったな。
かおる:お父さんはこのあいだ米寿(88歳)を迎えたけど、その年齢でがんばってる姿は、同年代の人や同年代の親を持つ人に元気や勇気を与えてるみたい。今だからこそできる新しい役割を果たすために、これからもがんばらなきゃね。
ブー:やれることがあるうちは、まだまだ死にません。
かおる:そうよ。ずっとずっと元気で長生きしてください。
プロフィール
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)など。【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」( イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評!
高木かおる(たかぎ・かおる)
1963年東京生まれ。大手広告代理店に長年勤務し、2016年に退社。現在は父・高木ブーさんのイベントプロデュースやマネジャー活動を行う。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。3月25日に最新刊「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」が発売。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。
撮影/菅井淳子
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