今から、誰でもできる認知症対策「熱闘!“糖脂塩”(とうしえん)」
認知症のおよそ7割を占めるアルツハイマー病の原因は、いまだ解明されていない。しかし、「アミロイドβ」というたんぱく質が脳に蓄積することがその要因の1つになっているということは判明している。
日本脳神経外科認知症学会副理事長の堀智勝さんが語る。
「脳内で記憶を司っている海馬という部位に、脳の老廃物であるアミロイドβがたまり、その蓄積がある限度に達すると認知症発症のスイッチが入る、というのがこれまでの見解でした。
さらに、最新研究を通じて、アミロイドβは一夜にして脳内で増減することも新たにわかりました。アミロイドβは睡眠の多寡によって増減する――つまり、睡眠不足・睡眠不良はアミロイドβを増やしてしまい、よい眠りはアミロイドβを減らす、ということがわかったのです」
睡眠不足が認知症リスクを高めることは想像に難くないが、深くて心地よい、心身ともに休まる睡眠をとることで認知症を遠ざけてくれる、というのは何とも朗報だ。
実は、30才前後から“始まっている”ことも
一般的に、認知症と高齢者を結びつける傾向があるが、それは本当だろうか。高齢になるまで、認知症を心配する必要はないのだろうか。上のグラフをご覧いただきたい。65才を超えると、認知症有病率が一気に上昇し、その率は60~64才と比べると約15倍増となることがわかっている。堀さんが最新情報を語る。
「アミロイドβは20~30年くらいかけて徐々にたまっていきます。仮に発症を65才と考えれば、早ければ35才から、もっといえば30才前後から、脳の中にアミロイドβが蓄積し始める可能性があるのです」
なるほど、まだまだ先の話だと思っている30代40代でも、認知症がスタートしている可能性が大いにあるのだ。
また、血液中にはたんぱく質の一種「アポリポタンパク質E」という遺伝子がある。この遺伝子にはE2、E3、E4の3種類があるが、E4遺伝子を持つ人は、アルツハイマー型認知症の罹患リスクが2~3倍になるという。
「E4は700万年前から存在する古い遺伝子だといわれていて、昨今では血液検査でその有無がすぐにわかります。ですから、家族に認知症患者がいらして、自らのことも気になっているかたは、もの忘れ外来などで血液検査をするのもよいでしょう(保険対象外)」
認知症対策の方法の1つは前述の通り、良質な睡眠だ。そして、さらなるキーワードを堀さんが教えてくれた。
“糖脂塩”を制限した食生活がおすすめ
「認知症は、その人の食生活とも密接な関係があります。ズバリ、“糖脂塩”を制限した食生活をお勧めします。糖分、脂質、塩分が適度にコントロールされた食生活が認知症を防ぐカギとなるのです。
認知症により神経細胞が障害され、家族の顔もわからないというような状況であれば、現時点での回復は見込めませんが、そこに至る前に歯止めをかけることはできます。たとえば、70才で発症する人の初期変化は40才ぐらいから始まります。だから、40才を過ぎたら食事や睡眠、運動習慣など生活習慣病を防ぐための心がけがより大切になります」
現在、イギリスでは20年前に比べ、認知症発症率が明らかに減っているという。これは国家を挙げて“糖脂塩”制限を推進した結果だ。食事が重要なポイントであることがよくわかる。
また最近は、認知症とてんかんの関連についても研究が進んでいるという。
「この1年で、認知症に関する情報が次々更新されていて、昨秋のニュースでももう古い話になっているほどです。ですから、最新の正しい情報に触れることをお勧めしたいと思います」
※女性セブン2018年6月7日号
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