「高齢者がペットを飼う」利点、やるべきこと、課題とは
高齢者とペットを取り巻く問題や、高齢者がペットを飼うことのメリットについて、今回は、高齢者がペットと暮らす上でやるべきことや、今後の課題について紹介する。
イギリスでは今年4月、劣悪な環境で73匹の猫を飼育していた70代の夫婦を逮捕し、執行猶予つき実刑判決に加え、生涯ペットの飼育禁止命令、罰金刑を下した。飼育を怠った理由として、妻が脚を骨折したことで、猫の世話まで、充分にできなくなったことなどが挙げられた。
この事件は決して対岸の火事ではなく、日本でも同様の問題が実際に起きている。高齢者がペットを飼うことは、健康面や精神面によい影響を与える一方で、飼い主の病気や入院、体力的な問題などで、飼育ができなくなるというリスクも伴うのだ。
環境省も、ペットを飼う前に、自身の年齢と動物の寿命を考えるよう呼びかけている。 例えば、今の年齢が65才の場合、飼いたいペット(犬や猫)の残りの寿命が約15年あるなら、そのペットを見送る頃、自分は80才になっている。その年まで、動物の世話ができるほど元気かどうか、考えなければいけない。
ペットと一緒に入居できる老人ホームが人気急上昇
今、ペットと一緒に暮らしている人は、病気やけがなどで飼育できなくなった時に備え、家族などと話し合いをするべきと、高齢者が抱えるペット問題に詳しい「犬とくらす」代表取締役の朝山和雄さんは言う。
「自分に代わって家族にペットの世話をしてもらえるか、里親を検討する場合はどう探すか、などを事前に決めておいた方がいいでしょう。里親探しも1年くらい余裕があると、新たな飼い主が見つかる可能性が高くなります」(朝山さん)
また、ペットと一緒に入居できる高齢者向け住宅や老人ホームの人気も高まっている。加えて老犬の世話をしてもらえる老犬ホームの数は2年前に比べ約3倍に増えている。
さらに、新しい飼い主(里親)を代わりに探してくれる団体などもあるので、身内がいない、家族に迷惑をかけたくないなどと思ったら、ひとりで抱え込まず、相談してみるのもいいだろう。
個人の覚悟と準備はもちろん、今後は社会的な整備も必要
高齢者だからといって、ペットと暮らすのをあきらめる必要はない。ただし、最後まで飼うための覚悟と準備は必要だ。
「とはいえ個人の頑張りには限界があります。愛護団体・企業・行政が連携して取り組む必要があります」(朝山さん)
高齢者の飼育環境や、万が一の時に対応できる保護環境が整っていれば、シニア層ももっとペットを飼いやすくなるはず。行政による補助や、ビジネスとしてどう運営するか、官民が一体となり取り組んでいく必要があるようだ。
※女性セブン2018年5月24日号
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