歯周病、ドライマウスに隠れている別の病気とは?更年期は要注意
今はただでさえちょっとした風邪のような体の変調も気になってしまう時期だけれど、それに加えて、更年期を迎える40~50代の女性のように年齢特有の不調を感じるケースも。「忙しいから」と後回しにしていたら、そこに隠れている別の病気に気づかないことにも…。
更年期を迎えるこの世代ならではの「口の中」の不調と、そこに隠れている病気の可能性について、歯科医の倉治ななえさんが解説する。
更年期で口内環境は悪化する
更年期でホルモンバランスが崩れると、唾液の量も減少する。唾液には、口内の保湿と殺菌作用があるため、40才を過ぎると、歯周病やドライマウス、虫歯のリスクが高くなる。特に恐ろしいのが、細菌の感染で起こる炎症性疾患・歯周病だ。
なぜなら、歯周病菌は血液を介して全身に悪影響をおよぼすからだ。
「歯周病と特に関係が深いのが糖尿病です。糖尿病患者は健康な人より2倍以上も歯周病にかかりやすく、悪化もしやすいんです。また逆に、歯周病にかかっていると血糖値が下がりにくくなり、糖尿病を重症化させてしまいます」(歯科医の倉治ななえさん、「」内、以下同)。
更年期症状と似た「TCH」とは?
歯周病には注意が必要だが、2018年にエビデンスが認められたある症状がいま、問題になっている。それは、頭痛や肩こりなど、更年期の不調と似た症状を引き起こす「歯列接触癖(しれつせつしよくへき)(通称・TCH)」だ。
これは、上下の歯をいつも接触させている“クセ”のこと。通常、人は上下の歯を接触させていない。接触させるのは、話をしたり、食事をする瞬間だけ。しかしTCHの人は、普段から上下の歯を接触させているため、口元の筋肉が常に緊張状態となっていて、それがさまざまな不調の引き金になっているという。
「TCHは、顎関節症や頭痛、首・肩のこり、腰痛、膝の痛み、めまい、視力低下などを引き起こしてしまいます」
更年期症状かと思いきやTCHの可能性もある。不調の原因がわからない場合は、歯科医に相談してみるのも手だ。
●歯周病
・サクッとセルフチェック
□歯ぐきから血が出やすい
□歯ぐきを押すとブヨブヨする
□歯間に食べかすが詰まりやすい
■診断
歯周病の大きな原因は、歯磨きで取り除けなかった細菌のかたまり(プラーク)。これが歯と歯肉の境目にたまると炎症が起こる。悪化すると、歯の根を支えている歯槽骨(しそうこつ)が溶けて、歯が抜けてしまう。また、歯周病菌は血液に入ると全身にまわり、糖尿病を悪化させるなど、さまざまな病気のリスクを上げる。
歯周病の初期は、歯肉が赤くなり、血が出やすくなるものの、痛みなどの自覚症状はほとんどない。そのため、自分では気づきにくいので、半年に1回は歯科検診を受けるのがおすすめだ。右のセルフチェックが1つでもあてはまったら黄色信号、歯肉から膿が出たら赤信号と覚えておこう。
■隠れている病気
糖尿病、動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞、骨粗しょう症など。
■おすすめの診療科
一般歯科へ。歯周病専門外来のある病院もおすすめだ。
●ドライマウス
・サクッとセルフチェック
□よく水を飲む
□口の中がネバネバする
□口臭が気になる
■診断
ドライマウスは口腔乾燥症ともいわれ、女性ホルモンのバランスが乱れる更年期の女性に多くみられる。女性ホルモンには皮脂粘膜を保護してうるおいを与える働きがあるため、減少すると、唾液が減って口の中が乾燥しやすくなる。殺菌作用のある唾液が減ると、口の中に細菌が増え、虫歯や歯周病はもちろん、口臭の原因にもなる。歯科検診を定期的に受けるだけでなく、普段から水分を多く摂ったり、食前に虫歯予防効果のあるキシリトールガムをかんで唾液を増やすのがおすすめだ。
■隠れている病気
虫歯、歯周病、糖尿病、腎疾患、シェーグレン症候群など。シェーグレン症候群とは自分の免疫細胞が唾液腺や涙腺などの分泌腺を攻撃・破壊する自己免疫疾患の1つで、全身の乾燥を引き起こす病気。
■おすすめの診療科
一般歯科、歯科口腔外科へ。ドライマウス専門外来のある病院もある。
教えてくれた人
倉治ななえさん/歯学博士。テクノポートデンタルクリニック院長、日本歯科大学附属病院臨床教授、日本フィンランドむし歯予防研究会副会長。予防歯科に尽力。主な著書に『図解 むし歯 歯周病の最新知識と予防法』(日東書院)など。
イラスト/小豆だるま
※女性セブン2020年4月16日号
https://josei7.com/