「内臓冷え」で免疫力低下、太る、命に関わる病気も。チェックリストと対策
厳しい残暑が続く。冬場の手足の冷えがウソのような暑さだが、実はあのつらい冷えは、蒸し暑いこの時期にこそつくられる。何年もかけて内臓に蓄積され、あらゆる健康被害をもたらす、夏の“隠れ冷え”。あなたの内臓に潜む、ゾッと背筋が凍るリスクとは。
暦の上ではとっくに秋だが、まだまだ日中は暑く、熱中症への注意が必要だ。 しかし、気をつけるべきは暑さだけではない。夏こそ、一年で最も冷えに注意しなければならない季節なのだ。
多くの女性が悩む冬場の冷え症や毎年大流行するインフルエンザはもちろん、がん、腎臓病、心筋梗塞などの重大な疾患まで、夏の間の“内臓冷え”が引き起こすという。
これまでに7万人以上の冷えの悩みを解決してきた全国冷え症研究所所長で理学博士の山口勝利さんによると、冷えを感じない夏は、冷たい食べ物や飲み物で“内臓冷え”を蓄積しやすいという。
そもそも“内臓冷え”とは何か。
「本来なら、内臓の温度は体温より高い37・2~38℃が理想。しかし、実際には日本人の8割が、体温より内臓の温度が低い“内臓冷え”の状態にあります。冷え症の自覚がある人だけでなく、体温が高いからこそ“自分は冷えとは無縁”と思っている人でも、内臓は冷えていることが多いのです。自覚症状がなく、いつの間にか“冷え負債”として長年蓄積されていき、肥満や病気の原因になるのが内臓冷えの怖いところです」(山口さん・以下同)
「内臓冷え」チェックリスト
以下のチェックリストは上の画像と同じ。
□急に顔のシミ、くすみが気になり始めた
□肌がかさついている
□唇がひびわれやすい
□足がむくむ
□イライラすることが増えた
□目の下にクマができやすくなった
□最近急に太った
□冷房を使うのがやめられない
□冷たいものを食べる/飲むのがやめられない
体温計で内臓冷えの重症度を測る
内臓が冷えていると、上のチェックリストのような症状が顕著になる。1つでも当てはまれば内臓冷えの疑いがあり、2つ以上当てはまれば間違いなく内臓は冷えているとみてよい。
体温計を使えば、内臓冷えの重症度を測ることができる。
「内臓温度は、病院で使う深部体温計を使えばわかりますが、家庭用の体温計を使って判断することも可能です。わきの下に挟むタイプの体温計で、朝・昼・夕・晩の4回測ってください。内臓が冷えていない人は、4回とも36.5~36.8℃の間に収まり、4回の体温の差は少ない。内臓が冷えていると、朝の体温が特に低く、時間が経つにつれて徐々に上がっていきます。4回の体温差が大きい人ほど、内臓が冷えています」
差が1℃以上であれば“内臓冷えの可能性大”、1.5℃以上であれば“確実”、2℃以上であれば“重症”だ。
「また、手のひら全体でおへその上を触った後に、おへその下を触ってみることでも、内臓が冷えているか判断できます。内臓が冷えている人ほど、下腹部が冷たいはずです」
冷え症と同じく、内臓冷えも男性より女性の方が多いが、特に40~60代の女性に顕著だと山口さんは言う。
「70代以上の人は、子供の頃からバランスの取れた質素な食事を摂り、肉体労働の機会も多かった。30代までの人はインターネットやSNSでの情報収集が当たり前で健康意識が高い。しかし、その間の世代の場合は、高度経済成長の恩恵を受け始め、一般の人の健康への意識も今ほど高くなかったため、特に“冷え負債”をため込んできているのです」
内臓温度が低いと基礎代謝が下がり、その分太る
40~60代がため込みやすいという“冷え負債”とは何か。山口さんは、内臓冷えによる基礎代謝の低下が、さらなる冷えを呼ぶと解説する。
「内臓温度が1℃下がると、代謝は12%下がります。1日の基礎代謝(体を動かさなくても、呼吸や消化のために消費されていくカロリー)が1800kcalの場合、内臓が1℃冷えると、それが1500kcal程度にまで減ります。この300kcalの“代謝ロス”は大きい。例えば、茶碗1杯のご飯が約170kcal。つまり、内臓温度が1℃下がると、毎食欠かさずご飯をおかわりし続けているのと同じなのです」
当然ながら、内臓温度が低いと、下がった代謝分しっかりと太ることになる。
「体重は約7000kcalで1㎏増えますから、内臓温度が1℃低いだけで、1か月で1㎏増える計算になります」
そのまま「食欲の秋」を迎えれば、蓄積した脂肪で体はさらに冷えやすくなる。そしてまた夏に内臓を冷やすという悪循環が、この年代の女性の“冷え負債”の正体というわけだ。
たった1℃で免疫力30%減。命にかかわる病気も
内臓冷えによって低下するのは、代謝だけではない。
「内臓温度が1℃下がると、免疫力が30%も下がります。かぜをひきやすい人は、内臓冷えによって免疫力が低下している可能性が高い」
かぜで済めばまだいい方だ。免疫系の疾患には、インフルエンザやノロウイルス、肺炎、はしか、風疹(ふうしん)、手足口病など、たびたび話題になる病気も多い。
「内臓冷えによる自律神経の乱れも見逃せません。イライラや不眠、便秘のほか、生理不順や生理痛といった婦人科系の症状につながりやすく、不妊にも密接に関係しています」
自律神経が乱れると血行が悪くなって内臓冷えが悪化し、どんどん体中が冷えて、不健康になっていく。放っておくと「ドロドロ血液」によって動脈硬化や心筋梗塞などのリスクが高まるほか、内臓脂肪もつきやすくなるので、糖尿病にもなりやすくなる。
血流が悪ければ、各臓器に充分な栄養と酸素が送られなくなるので、内臓自体の機能も低下する。
「特に注意してほしいのは腎臓です。“沈黙の臓器”と呼ばれるほど異変に気づきにくく、気づいた時には透析治療が必要なほど進行していることも少なくない。腎臓の機能が落ちると、むくみやすくなり、だるさが解消できなくなるだけでなく、トイレの回数が増えたり、貧血になったりします」
こうした腎臓の機能低下が続いた状態は「慢性腎臓病」と呼ばれ、国内の患者数は1300万人を超える。
腎臓病は悪化すれば心不全などの合併症を引き起こすこともある。内臓冷えは、命にかかわる重大な病気にもつながるのだ。
「免疫力が低下すると、体の中にできたがん細胞を見逃してしまう可能性が上がります。そもそも、がん細胞は低温を好む性質があり、最も活発になるのは35℃台。冷えた内臓は、がんにとって最適な環境なのです」
香辛料の「ヒハツ」とストレッチが内臓を温める
内臓冷えを防ぐにはどうしたらいいのだろうか。
「やはり、冷たいものの摂りすぎは避けるべきです。例えば、ビールはジョッキ1杯で内臓温度を4℃下げ、代謝を40%も低下させてしまいます。冷たいお酒は飲まないことがいちばんですが、締めとしてしょうが入りのみそ汁を飲めば、内臓冷えを軽減できるのでおすすめです」
体を温める食べ物といえばしょうがだが、それ以上に山口さんがおすすめするのが“ヒハツ”。ヒバーチやロングペッパーとも呼ばれる沖縄地方でもおなじみのスパイスで、大型スーパーや輸入食材店などで購入できる。
「ヒハツがしょうがより優れているのは、内臓を温めるだけでなく、活動を停止した毛細血管を修復し、体の隅々まで血を通わせる効果があるから。1日あたり小さじ2分の1を目安に摂るのがおすすめです」
シナモンのような香りと山椒のようなさわやかな刺激が特徴で、こしょうのように使うだけでなく、スイーツや温かい飲み物にシナモン代わりに振りかけてもいい。
「ただし、コーヒーのようなカフェインの多い飲み物は、ホットでも体を冷やしてしまう。毎日4、5杯のコーヒーを飲む人は、アイス・ホットにかかわらず、体が冷えているというデータもあります」
適度な運動の習慣も、体を温めるのに効果的だ。
インナーマッスルを動かすストレッチを行うと、刺激によって熱が生まれ、内臓を温めることができる。高齢者や運動の習慣がない人でも簡単にできる「ヘリコプターストレッチ」がおすすめだ。
「1日1セットでも充分なので、毎日継続してください。早い人だと、10日~2週間くらいでお腹がポカポカするのを感じられます」
内臓温度が下がっている朝や、夜寝る前などに行うといい。
≪内臓を温める「ヘリコプターストレッチ」≫
足先の冷え防止には靴下よりも防水テープ
内臓温度が低いと、睡眠の質も下がる。しかし、“寝ている間に体が冷えないように”と腹巻をしたり、足湯をしたりするのはおすすめできない。
「腹巻をしても、温まるのは表面だけで、内臓は冷えたまま。寝る前の足湯は逆効果です。お湯から足を出した時に拡張した足先の血管から一気に熱が逃げるので、かえって体の内部は冷えてしまいます。体温は、動脈から発散されやすいのです」
動脈から熱が逃げるのを防ぐには、足の甲や内くるぶし、ひざの裏など、動脈の血管が浮き出ている部分を医療用テープでカバーする方法が有効だ。テープが人工皮膚の代わりになり、熱の発散を防いでくれる。
「絆創膏(ばんそうこう)でも充分ですが、おすすめは幅の広い防水テープ。薬局などで300円くらいで購入できます。足先の冷え防止に靴下を重ね履きする人がいますが、普通の靴下では気休めにしかなりません。足の冷えが気になる場合は、皮膚と組成の近いシルクの靴下を選んで。テープと同じく人工皮膚の代わりになります。ただし、皮膚や血管を圧迫しないよう、ゆるめのものを選ばないと逆効果です」
残暑はまだまだ厳しいが、冬を健やかに乗り切るためにも、準備は今すぐ始めたい。
イラスト/勝山英幸
※女性セブン2019年9月19日号
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