怖ろしい急性緑内障発作。白内障手術で防げるのはなぜ
世界の失明原因のトップは白内障だが、日本では年間100万件もの白内障手術が行われており、白内障は日本人の失明原因の3.2%に過ぎない。では何がトップかというと、緑内障だ。
どんどん視野が欠けていく……
杏林大学医学部付属病院の公開講座「白内障、よく聞く話のホントのところ」で 同大学の柳沼重晴先生は、日本の失明原因を次のように挙げた。
緑内障 20.7%
糖尿病網膜症 19.0%
網膜色素変性 13.7%
黄斑変性 9.1%
高度近視 7.8%
白内障 3.2%
その他 26.5%
「白内障と緑内障、名前は似ていますがまるで違う病気です。
白内障は水晶体が加齢によって濁り、ものがぼけて見えるなど見えづらくなるもので、病気というより年を取れば100%の人に起こる症状です。
しかし緑内障は脳に伝わる視神経、上の図では視神経乳頭という、網膜の神経が視神経とつながっている部分が障害される怖い病気です。
緑内障が進行すると、どんどん視野が欠けていって、たとえば上半分が見えないとか、下半分が見えない、といった状態になり、最終的に見えなくなってしまいます。
40才越えると20人に1人が緑内障といわれていますが、すごく慢性的に進むのと、片方の目の視野が欠けても、もう片方の目がそれを補うので自覚しないうちに進んでしまいます」(柳沼先生)
自覚症状がほとんどないので、人間ドックの眼圧検査や、ほかの眼の疾患、コンタクトの検査などの折に発見されることがほとんどだ。
怖ろしいのは、水晶体を眼内レンズに入れ替えることでもう一度見えるようになる白内障とは違い、緑内障が進行して一度欠けた視野はもう元には戻らないからだ。
白内障では点眼よりも手術が有効だが、緑内障では進行を食い止めるための点眼が第一の治療になる。
急性緑内障発作に注意
上記の緑内障とは別に、急性緑内障発作というものがある。これは、急激に眼圧が上昇し、眼痛や頭痛、吐き気などが起こり、急速に視神経障害が進むもので、そのまま眼圧が下がらない状態が続くと、短期間で失明してしまう。
この急性緑内障発作を起こすと眼が腫れる。その時、瞳が緑に見えるので「緑内障」と名付けられたという。
じつは、急性緑内障発作は起こしやすい眼の形がある。
上図の左が、急性緑内障発作を起こしやすい、隅角(ぐうかく)が狭い眼だ。
眼の中で作られた水は血流に乗って出ていくが、その排水路が隅角にある。しかし遠視の人に多いのだが、この隅角が狭い人がいる。
「狭いながらも通っていればいいんですが、突然その狭い出口がパタッと閉じてしまうことがある、それが急性緑内障発作です。すると水は作られるのに排出できない状態になるので、眼がパンパンに硬くなって眼圧が急激に上がるんですね。
そのまま放置すると、神経が急速に死んでいくので、眼圧を下げるためにレーザー治療などを行います。
じつはこの急性緑内障発作を起こしやすい眼に白内障手術をすると、発作を起こさなくなります。
白内障手術では、水晶体を除去して薄いレンズに代えますから、水晶体のボリュームが薄くなって、水の通り道の出口が広がるんです。
通常は本人が気乗りしないのに白内障手術を勧めることはありませんが、急性緑内障発作を起こしやすい眼の方には早めに白内障手術をされるようにアドバイスします」
急性緑内障発作は遠視の人に多いという。また隅角が狭い緑内障の人は飲んではいけない内服薬もあるので、そのような薬を処方されている方は一度眼科の受診をお勧めします。
◆取材講座:「白内障、よく聞く話のホントのところ」(杏林大学医学部付属病院 )
文/まなナビ編集室 文/まなナビ編集室 医療・健康問題取材チーム 写真/杏林大学医学部付属病院提供、fotolia、小学館
初出:まなナビ