多剤併用で副作用も!? 完治にこだわらない薬とのつきあい方
どうしても多剤併用になりがちな医療の仕組みの中で、副作用の弊害を受けないように患者側からできることはないだろうか。神戸大学名誉教授・神戸大学医学部附属病院前薬剤部長で薬剤師でもある平井みどりさんはこう語る。
調剤薬局は一箇所、おくすり手帳の利用を
「まずは基本ですが、院内院外処方にかかわらず、おくすり手帳でしっかり自分の薬を管理すること。違う医療機関や他科でそれぞれに処方された薬の情報も1冊に集約されますから、薬剤師が薬の重複や多剤併用をチェックしてくれるはずです」
野崎クリニックの副院長であり現役の訪問看護師・認定医療コーディネーターの嵯峨崎泰子さんはこう勧める。
「院外の調剤薬局で薬をもらう場合、できるだけ1つの薬局に決めて利用することをおすすめします。そこで親しい薬剤師ができれば、薬のことを一緒に見守ってもらうことができます」
高齢者は効き目が強く、副作用が出やすい
薬を妄信するのではなく、特に高齢者は薬の効き目が強く出やすかったり副作用が出やすかったりすることを、本人はもちろん、周りの家族もよく知っておくことが大切だ。
「薬をのんでいるのに症状が改善しない、精神不安定など不調が続く、悪化するといったときに、今のんでいる薬を疑ってみる視点も必要です。患者やその家族の立場で、医師の方針に異議を唱えるのはなかなかエネルギーのいることでしょう。しかし医療の現場でも今、高齢者医療を見直して無駄な薬を減らしていこうと、少しずつ変わり始めています。
もし気になったら、迷わず主治医や調剤している薬剤師に相談を。特に薬剤師の間では多剤併用を問題視する向きが増えていますので、親身に聞いてくれると思います。また、全国から薬の相談ができる窓口(「薬の相談窓口」や「医薬品医療機器総合機構」「くすり相談室」「公益社団法人日本薬剤師会 消費者相談窓口」など)もあります」(平井さん)
「病気の治療を」から「日々を穏やかに過ごす」に切り替える
たくさんの薬をのんで、かえって体調を悪くしている人が多い今、薬をのむ目的を改めて見直すべきという嵯峨崎さん。在宅医療の現場で多くの人を看取ってきたからこそ、最期までいい時間を過ごしてほしいという。
「病気があれば治療を、という生き方から、自分の老いと向き合い、できるだけ日々を穏やかに過ごせるようにする生き方に切り替えるときは必要だと思います。そのタイミングは、たとえば健康寿命といわれる70~73才くらい。いろいろな病気も出てくるころですが、むやみに薬に頼り、若いころのように完治にこだわらなければ、自おのずと薬とのつきあい方も変わって来るはずです」(嵯峨崎さん)
“病気を治す”ために薬の副作用を我慢することが、果たして生活の質を上げることになるのか。一度考えてみる必要がありそうだ。
※女性セブン2017年8月10日号