《「目の老化」自力で止める》老眼、白内障、緑内障…眼科医が教える、目の病気を遠ざける「眼鏡」と「食材」
見る、聞く、噛む―身体の老化でQOL(生活の質)の低下に直結しやすいのが「目」「耳」「歯」の不調だ。だが、これらを「歳だから」と諦め、放置するのは早計だ。衰えた機能は「治療や生活習慣の改善でリカバリーが可能」と専門医は口をそろえる。そこで、「目の老化」を食い止める方法を眼科かじわらアイ・ケア・クリニック院長の梶原一人医師に詳しく教えてもらった。
加齢による4つの主な病気
「目がかすむ」「光が眩しく感じる」「手元が見えづらい」──中高年の見え方の異変は、加齢による「目の衰え」に起因することが多い。
それらの症状には失明に至る疾患が潜んでいることがあり、少しでも違和感があれば早急な対応が必要だ。
『ハーバード×スタンフォードの医師が教える100年生きる食事術』(かや書房刊)の著者で、米国の両大学で計11年、研究員を務めた経歴を持つ眼科医の梶原一人医師(眼科かじわらアイ・ケア・クリニック院長)はこう指摘する。
「加齢による主な目の病気は『老眼』『白内障』『加齢黄斑変性』『緑内障』の4つ。いずれも自覚症状なく進行するため、目に生じた異変を『歳だから仕方ない』と検査や治療を後回しにすると、症状は悪化する一方です。特に、加齢黄斑変性と緑内障は失明するリスクがあるため厳重な注意が必要です」(以下「 」は梶原医師)
それら4つの病気は誰しも避けられない「加齢」によって生じるが、病変が起こる場所や症状の出方、重症度、対策や治療はそれぞれ全く異なる。
加齢とともに目のピント調整機能が衰えて手元が見えづらくなる老眼は、「水晶体」の異変が原因だという。
「目のレンズである水晶体は厚みを変えることでピントを合わせています。加齢とともに水晶体が硬くなって厚みを変えられず、近くが見えづらくなるのが老眼の症状です。年齢にほぼ比例して進むため、発症を遅らせることはできません」
老眼が原因で失明に至ることはないが、放置することで別の病気を引き起こすことがある。
「見えにくいのに無理にピントを合わせようとすると生活上のストレスになるほか、目に負担がかかり『眼精疲労』や『ドライアイ』になりかねません」
老眼に対しては、「眼鏡」の効果を甘く見てはいけない。
「細かい字が見えづらいと感じたら、早めに老眼鏡を使って対策するのが最善です。視力矯正で目の負担を軽減するだけでなく、慢性的な眼精疲労やドライアイの予防効果もあり、目の健康を維持できます」
老眼同様、水晶体で生じるのが白内障だ。
「白内障は加齢によって水晶体が濁り、すりガラス越しのように見えにくくなる病気です。50代で約4割、60代で約7割が発症するとされ、『白髪と同じようなもの』とする専門家もいます」
同じ水晶体の病変でも、老眼と違うのは「治る病気」であることだ。
「白内障も失明に至る病気ではありません。濁った水晶体を超音波で砕いて吸い出し、人工のレンズを入れる手術で治ります。日帰り手術も可能なため、見え方に問題がなければ手術時期はご自身で選ぶことができます」
視力を維持する正しい対策
《老眼》
レンズの役割を果たす「水晶体」の弾力が加齢で失われ、ピント調整ができず近くのものや文字が見づらくなる。
【老眼鏡を活用!】
基本的に発症防止や進行を遅らせる術はないが、老眼鏡による視力矯正で目の負担を軽減することは可能。慢性的な「眼精疲労」や「ドライアイ」の予防で、目の健康を維持することができる。
《白内障》
水晶体が濁り、すりガラス越しのような見え方になる病気。失明リスクは低い。
【手術で治す!】
白内障の症状が進んでも失明には至らない。日常生活に不便を感じたら手術の検討を。水晶体の濁った部分を超音波で破砕、人工の眼内レンズを入れる日帰り手術も選択肢となる。
《加齢黄斑変性》
日本人の失明原因の4位。目の奥の網膜にある「黄斑部」に老廃物が溜まり、ものが歪んで見える、中心がかすむなどの症状を発症。
【悪化を防ぐ!】
日本人に多い「滲出型」の加齢黄斑変性は早期の発見で対処が可能。抗VEGF薬の注射のほか各種治療で、進行を遅らせる、とどめることができる。年に1度の「OTC(光干渉断層計)」検査が推奨される。
《緑内障》
日本人の失明原因の1位。目と脳を繋ぐ「視神経」が傷つき、見える範囲が欠けていく。失明寸前まで自覚症状はほぼ現われない。
【悪化を防ぐ!】
加齢黄斑変性と同様、年1度の「OTC」と「視野」検査を推奨。眼圧を下げる治療で進行抑制の高い効果が見込まれるが、個人差があるため眼科医と相談しながら治療を行なうことが重要。
電子レンジで蒸す
加齢による目の病気で最も注意すべきなのが、日本人の失明原因1位である緑内障だ。
「目と脳を繋ぐ視神経が数を減らし、見える範囲が欠けていく病気です。視野の端から欠けていくため、失明寸前まで自覚症状がなく、気付いた時にはかなり進行しているケースが多い。緑内障で欠けた視野が元に戻ることはありません。40歳以上の20人に1人が罹患すると言われています」
治療は進行を遅らせることを目的とするため、早期発見が鍵となる。
「自覚症状のない初期の緑内障は、定期検査で発見できます。眼圧が正常なタイプの緑内障でも、目薬で眼圧を30%下げると約8割の患者さんで進行が抑えられることがわかっています」
ただし、治療の進め方には工夫が必要だという。
「緑内障は100人いれば100通りと言われるほど個人差が大きいため、患者さん一人ひとりに合った目標眼圧をデータを集積して決めるなど、オーダーメイドの治療、すなわち『緑内障治療をデザインする』ことが求められます」
早期発見による進行抑制が期待できるのは、日本人の失明原因4位の加齢黄斑変性も同様だ。
「目の奥、網膜の中心にある直径1ミリほどの『黄斑部』に老廃物が溜まり、視界に歪みやかすみが生じる病気です。なかでも急に症状が現われる日本人に多い『滲出型』は、早期発見後、新生血管(加齢により黄斑部に新しく発生する異常な血管)をしぼませる薬の注射などにより進行を遅らせ、または止めることが可能です」
白内障と加齢黄斑変性は、治療以外にも発症リスクを低減する方法があるという。
「いずれも加齢が大きな要素ですが、年齢以外にもリスク要因は様々あります。その一つが紫外線や体内で生じる活性酸素による『酸化ストレス』。日差しの強い日はUVカットの眼鏡やサングラスの着用が推奨されます」
食生活の工夫や改善も予防の一助になり得る。
「活性酸素の害を抑制する食材の一つが、ブロッコリーやほうれん草などの緑黄色野菜です。調理の際は茹でるより電子レンジなどで蒸すほうが栄養を余さず摂取できます。また水晶体と網膜を酸化から守るルテインとその吸収を助ける良質な油を含むアボカドも有用です」
そのほか、加齢黄斑変性にはサバやイワシ、サンマなどの青魚の効果が期待できるという。
「青魚に含まれるDHA、EPAなど『オメガ3系脂肪酸』を摂ることで、加齢黄斑変性の発症や悪化にかかわる脆くて出血しやすい『新生血管』の発生を抑制します」
食生活の改善とともに、見え方に異変を感じたら早めの受診が肝要だ。
◆教えてくれた人:眼科かじわらアイ・ケア・クリニック院長・梶原一人医師
※週刊ポスト2026年10月16・23日号
