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暮らし

「ただの老化」だと思っていた父の異変は病気が原因かも…!病名不明のまま見直す介護態勢と心のゆらぎ「物理的なことより大変だったのは、心持ちだった」

 加齢による機能低下だと思っていた症状の裏に、別の病気が隠れていたら――。93歳になる父の「声がれ」や「首の下がり」から始まった違和感が、大きな病院を巡る事態へと発展。確定診断を待つ間に介護態勢をどう見直し、どう心が追い詰められていったのか。介護情報を発信するWEBサイトで10年間編集にかかわる筆者が、刻々と変わる父の状態とそれに追われる日々を綴ります。

執筆:関和子

介護ポストセブン前編集長。現在はシニアエディターとして、介護が必要な人へ役立つ情報や、介護要らずに暮らす健康の知恵などを発信するために、介護当事者や専門家に取材し「介護をもっと明るく、前向きに捉えてほしい」との思いで記事作りに取り組む。要介護3の母(他界)の介護を経て、いまは要介護1の父を通いながらサポート中。高齢者住まいアドバイザー(内閣府認可)の資格を取得。

見過ごしていた「加齢ではない」サイン

  父の声がれや嚥下障害は、加齢による、いわゆる「老化」だと思っていました。母を亡くし、4年半にわたって一人暮らしを続けてきた父。会話の機会が減ったことで、喉まわりの機能が衰えたのだと思い込んでいました。

→関連記事:「動く車内では怖くて飲めない」93歳、食欲旺盛で歯も丈夫な父の“嚥下機能の低下” 見落としてしまった盲点と娘の後悔

 言語リハビリや家でできるのどトレなどを取り入れ、父自身も新聞の音読を心がけるなど対策を講じてきましたが、変化はなく、短期間では「そんなものかな」と思っていた矢先、父の首が下がるようになりました。

 シルバーカーを下ばかり向いて押す父の姿を見て「お父さん、もっと顔を上げて、前を見ないと危ないよ」と声をかけると、「寝違えたのか、首を持ち上げるのがつらい」と訴える父。

「でも、きっと寝れば治る」と言う父の話を鵜呑みにして、2~3日様子を見ましたが、やはり頭を持ち上げているのがつらくて、すぐに横になりたがる様子に変化はありません。

「枕が合わないのではないか」と父。実際に試して買ったほうが、自分に合った枕を選べるから、早速、近隣の寝具売り場に一緒に行こうと誘いましたが、出かけるのもつらいと言います。

 高さが調節でき、「首・肩がラクになる」ということを謳っている商品を購入し、試してみたところ「寝やすい」「すごくいい」と絶賛するので、またしばらく様子を見ることにしました。

 しかし、この頃から父の疲れやすさが目立ち、長い時間椅子に座っているのも厳しくなってきた様子に、さすがに、「これは、加齢による変化ではないのでは…」という疑念が沸いてきました。

 母は晩年、父よりもずっと食が細く、ソファからほぼ動かずテレビばかり見る日々でした。嚥下機能の衰えはありましたが、父のような声がれや首が下がって体位を保てないような状況にはならなかったことを妹と振り返り、「もしかして、お父さん、病気かも」と、ようやく思い至ったのです。

脳外科→脳神経内科→総合病院、そして大学病院へ

 6年ほど前に、父は脳梗塞を患った経験があります。発見が早く、幸い後遺症も残らず現在に至るのですが、発語しにくい症状は、もしかして再発?と急に心配になり、早速、妹が脳外科に父を連れて行ってくれました。

 MRIなどの検査を受け、結果は「脳に異常はない」とのこと。しかし、父の様子を見た医師から「脳神経内科」の受診を勧められます。

 近隣の脳神経内科を探して予約、今度は私が同行しました。非常に混み合う院内で、父は待ちきれずにベンチ型の椅子に横になる状態でした。診察後、担当医からは「老化じゃないと思う。神経系の病気が疑われるが、町のクリニックでは詳しい検査設備がないため、大きな病院を受診したほうがいい」と言われ、ちょうど1週間後に控えていた総合病院の定期受診日に向けた紹介状を作成してもらいました。 

 この総合病院は3か月一度、もう10年以上にわたり父を診てくれている医師がいます。とても話しやすく、長話が好きな父にしっかり向き合ってくれる先生なので、家族共大きな信頼を寄せている医師です。

 しかし、父を連れ紹介状をもって受診すると、神経内科は自分の専門ではないので、また予約を取り直す必要があると言われてしまいます。しかし、3か月前とは明らかに様子が違う父を見て、「今日遅くまで待てるなら、今日中に診てもらおう」と手配をしてくれました。

 長い待ち時間、ベンチソファーで横になる父を見て、改めて父は何かしらの病気なのだと不安になります。そこでは、長い診察を受け、結論は、「近隣の大学病院を紹介します」ということ。「神経か筋肉かの病気が疑われますが、詳しい検査が必要。その検査は、ここよりも大学病院のほうがいい。できるだけ早くの予約を取りますね」と言ってもらえましたが、それでも大学病院の予約は3週間後でした。

 可能性のある病名は、一切教えてはもらえない状況でしたが、この前受診した神経内科の医師が「神経系の病気だとすると、ちょっとやっかいですね」と言ったことが気がかりです。

病名不明のまま介護態勢の見直し

 嚥下機能低下に気づいたのが5月。首の下がりで変だと思ったのが6月初旬。その間、嚥下機能のチェックをしてもらうため、歯科でVE検査(嚥下内視鏡検査)を受けたり、言語リハビリに精を出したりしましたが、脳外科を受診してから大学病院の予約日まで約2か月かかっています。

 5月には、嚥下機能が気になりながらも長時間のドライブができるほど元気だった父でしたが、気づけば、30分起きては、10分横にならないといられないほど、元気がありません。体重も落ち、一回り小さくなったようです。立ち上がりや歩行も、どんどん不安定になり、転倒の心配も増してきました。

 大学病院の検査が終わらぬことには、病名はわからぬものの、父の介護態勢の見直しは急務でした。

 ケアマネさんに、父の現状と病気の可能性があることを伝え、まずは、現在要介護1の父の介護度の区分変更の申請をしてもらいました。

 嚥下機能の衰え、特にむせやむせによる呼吸困難(むせてヒューヒューいう)の心配も増えてきたので、とろみのついた食事や介護食の準備にも気を抜けません。

 デイサービスは、これまでリハビリ中心の場所に週1回、半日だけ通っていましたが、家からもっと近い場所に、週2回朝から夕方まで(嚥下に配慮したランチ付き)でお願いすることにしました。 

 また、食事もこれまでは、作り置きなどを一人でチンして食べることができた父でしたが、疲れて食事抜きにしてしまった話などを受け、平日は毎日夕食時に訪問介護に45分入ってもらい、夕食の配膳とできれば食事の見守りを手配してもらいました。

 とろみなど、飲み込みやすさに配慮した食事作りまでは訪問介護士さんにお願いできないので、これは、妹と私が作り置きと市販の介護食を準備。妹も私も、これまで以上に父の家に通うようにするという態勢にしました。

 私は、これまで土日を中心に通っていましたが、追加で平日も2日くらい、少なくとも週3日は通うことにしました。父の家へは、車で往復3時間かかるのですが、これが案外じわっと堪えます。

 もともと食べることが好きで、食欲旺盛な父。食事の用意をして、家族やヘルパーさんが見守っていると、ちゃんと食べてくれることもわかっていましたし、きちんと食事を摂ると、元気も出るように見えました。「食べることは、生きること」と父を見ると改めて実感します。

 この時期、私の頭の中は父の食事、作り置きを何にするかでいっぱいでした。市販の介護食品はとても便利で、しかもおいしいので重宝するのですが、やはり手作りのものも食べてもらいたいという気持ちがぬぐえなかったのです。配膳をしてくれるヘルパーさんに迷惑をかけたくないという思いもありました。

 冷蔵庫のタッパーに料理名と作った日付書いた付箋を貼り、ヘルパーさんにもわかりやすくする工夫をしていましたが、暑くなってきた時期、どのくらいまで安全に食べられるのかも不安です。せっかく作っても3日ほど手付かずで残っているものを廃棄したり、また、次は何を用意しようか、そのための買い物はどうしようかなど考えるだけで、途方に暮れてしまうのです。

 仕事で介護情報を発信している私、便利な市販品を活用してもっと気楽に介護食の用意をしたいという思いと裏腹な自分の感情にもやもやしていました。

心に余裕がなくなって、妹と衝突

 土日は、午前中から、父が寝るまで、平日も仕事終わり、もしくは朝から行って、リモート勤務をしながら父の家で過ごす。父は、自分の体調が思わしくないことをもどかしく思いながらも、もともとポジティブで頑張り屋の性格なので、「自分はまだ大丈夫だ、これもできる、もう少ししたら良くなる」と言った発言を繰り返します。その様子に、本当はそんな簡単な話ではない、これからもっと大変になるのかもしれないと思いながらも口にはできず、私の心境は複雑。

 私は父の家に行くと滞在時間が長くなるのですが、妹は、家が父の近くなので、滞在時間を短めに、でも頻度は高くといった感じでした。ある日、一日父と過ごした後、疲労とストレスがたまった私は、妹に「父の食事のことをもっと考えてほしい。父の状態が悪くなっていることにちょっと楽観的なのでは」といった不満をメールしてしまったのです。

 父のことを一緒に考えて、一番頼りにしているのが妹です。妹はフルタイムの仕事をしていて忙しい中、自分の休みの日に父の通院にもしっかり付き添い、身の回りの世話もよくやってくれています。それはわかっているのに、自分がいっぱいいっぱいになったら、結局、同じように不安で、忙しくしている妹に文句を言ってしまう――。

 子供のときは別として、妹とは喧嘩などしたことはありませんでした。しかし、この私のメールを機に妹もこれまで不満に思っていたこと、私の態度などへの意見を返信してきて、一気に険悪な雰囲気になってしまいました。

介護のストレスは、物理的な対処ではなく気持ちの変化と向き合うことで生じる


 ひとえに、私の人間力のなさ所以なのですが、同じ状況下にいて、説明しなくても大変さに共感してくれる人だから、助け合うだけではなく、イライラした感情までをぶつけてしまうものなのですよね。

 あー、こうやって、介護は行き詰まるのだと、少し冷静になるとわかります。結局、介護は、物理的に対処することとは別に、それに伴う気持ちの変化と向き合うことが実はいちばんやっかいで正解がないものだと実感しました。私の空回りする気持ちをわかってくれない父に腹を立てたこともあります。

→関連記事:93歳の父に声を荒げて猛省・・・介護情報を発信して10年、でも我がこととなると教科書通りにいかずにため息「感情と理性の狭間で右往左往する現実」

 何軒も病院を回り、ようやくたどり着いた大学病院の予約。ここでしっかり診てもらえば、父の病気が判明し、今後の対策がもっと具体的にできるはず、その受診日を指折り数えて待つ日々となりました。

 待ちに待った受診の日。しかし、物事はそう簡単には進まないと思い知らされるのです。

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