「とにかくお金がない、そして体調不良・・・」娘にも相談できず八方ふさがりで悩む71歳女性に毒蝮三太夫が寄り添う|「マムちゃんの毒入り相談室」第87回
毎日を心穏やかに過ごす上で、お金の問題は極めて重要である。夫に先立たれた71歳の女性。お金がないことが悩みの種だが、体調不良で働けなくなり、娘に頼るわけにもいかないと途方に暮れている。マムシさんは「自分と娘にとってどうするのがいちばんいいかを考えよう」と、頭の中で複雑にこんがらがった糸をほぐしていく。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「お金がなくて娘や孫に何もしてあげられない」
毎年この時期になると紹介しているんだけど、「八月は六日九日十五日」という有名な句がある。昭和20年8月6日には広島、9日には長崎に原爆が投下された。そして15日に長い戦争がやっと終わった。どれもけっして忘れちゃいけない日だ。戦争の悲惨さや理不尽さに思いを馳せて、平和のありがたさをしっかり噛みしめようじゃないか。
8月6日にはNHK AMで、11人の高校生とオレが語り合う番組「毒蝮三太夫×高校生 “平和”と“いのち”を考える」が放送された。若い世代に戦争体験を伝える機会をもらえるのは、とてもありがたい。
みんな真剣に耳を傾けてくれて、いろんな質問も出た。空襲の中をどう逃げて、そこで何を見たかなんて、教科書には載ってないし想像しようとしてもできないよな。再放送は8月14日(金)の22:05~22:55だ。よくわかんないけど、「らじる★らじる」ってので聴き逃し配信もあるらしい。よかったら聴いてみてくれ。
今回は、お金がなくて悩んでいる年金暮らしの71歳の女性からの相談だ。
「とにかくお金がありません。私は単身住まい。夫はもう早くに亡くなり、娘を一人育ててきました。夫が残してくれたお金は底をつきました。持病を抱えていて、長く続けていたパートも体調不良で辞めてしまいました。
収入は国民年金とわずかな遺族年金だけです。家は築40年のボロ屋で、あちこちにガタが来ていて、やがて大きな修繕が必要になりそうです。
娘は結婚し、息子が1歳になりました。専業主婦で会社員の夫がいます。ありがたいことに母親想いのいい娘で、息子を連れてときどき遊びにきます。そのときに孫に何か買ってあげたいし、娘においしいものを食べさせてあげたいという気持ちはあるのですが、年金生活の身、たいしたことはできません。
娘は私がお金に困っていることに気づいていない様子です。打ち明けて心配をかけたくないのですが、相談したほうがいいでしょうか? かといって、娘にも自分の生活があるので、援助をしてもらうわけにはいきません。これから何年生きられるかわかりませんが、このままだと生活保護の申請をするしかないのではないかと悩んでいます。八方ふさがりで、何のために生きているのかわからなくなってしまいました」
回答:「娘にちゃんと打ち明けて、現状を知ってもらうのがいい」
思い詰めちゃってるみたいだけど、そりゃ無理もないよ。お金の問題は、とくに「高齢者」の仲間入りをして仕事もできない状態となると、ひじょうに切実だ。
金銭的に困っていると娘さんに言いづらい気持ちはよくわかる。心配はかけたくないし、まして世話になるのは避けたい。あれやこれや頭の中がこんがらがっているときは、何はともあれ、自分と娘にとってどうするのがいちばんいいかを考えよう。
伝えないのは、娘さんへの思いやりでも何でもないよ。母親が「何のために生きているのかわからない」とまで思い詰めているのに、知らないままでいるほうがよっぽど酷な話だ。娘さんだって無理してまで孫に何か買ってほしいとか、いいものを食べさせろなんて思ってないはずだ。ちゃんと打ち明けて、現状を知ってもらうのがいいだろうね。
ただ、いきなり「お金がないの。助けてちょうだい」と言ったら、母親想いの娘さんを苦しめることになる。自分の生活もあるし、旦那さんに内緒で援助するわけにもいかないしね。幸い古いとはいえ持ち家があるんだから、まずは「この家、売ることはできないかしら」とか「最近は、住み続けたまま家をお金に換えられるらしいけど、そういうのってどうすればいいのかしら」と切り出してみるのはどうだろう。
そしたら娘さんは「お母さん、そんなに困ってたの」と気づくことができる。具体的に年金がどのぐらいで貯金はもうないというところまで伝えてもいい。そうすれば娘さんとしては、母親に負担をかけない付き合い方を考えるだろうし、どこまで援助できるかを旦那さんと相談したりするきっかけにもなる。生活保護も考えているみたいだけど、家があって娘も近くにいるとなると現実的には難しいだろうね。
71歳なんて、まだまだ若いよ。ひとりで悩んでいると八方ふさがりに思えてくるけど、誰かに相談することで思いがけない解決策が見つかったり、光が見えてきたりするもんだ。あなたには、母親想いの娘とその家族という宝物がある。宝物との素晴らしい時間をたくさん過ごすために、娘さんといい方法を考えながら、心穏やかに長生きしてくれ。
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『金曜ワイドラジオTOKYO 「えんがわ」』内で毎月最終金曜日の16時から放送中。90歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。この連載をベースにしつつ新しい相談を多数加えた『70歳からの人生相談』(文春新書)が、幅広い世代に大きな反響を呼んでいる。最新刊は玉袋筋太郎と熱く語り合った対談集『愛し、愛され。』(KADOKAWA)。毒蝮の「毒」と玉袋の「粋」が熱く融合し、混迷の時代を生きる私たちに勇気と希望を与えてくれる。
YouTubeの「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXXも、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中。

『世界ふしぎ発見!』などでもおなじみの草野さんが、幼少期のシベリア抑留にまつわる父親の体験談や、引き揚げ時の過酷で胸を打つエピソード、終戦直後の給食の思い出などを毒蝮さんと深く語り合います。戦争の過酷さを伝える貴重なトークは必見です。この画像をクリックするとYouTubeのページへ移動します。是非ご覧ください!
石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」「失礼な一言」など著書多数。新著『昭和人間のトリセツ』(日経プレミアシリーズ)と『大人のための“名言ケア”』(創元社)が好評発売中。この連載ではマムシさんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。