脳は何才からでも向上する!認知症を遠ざける26の習慣 「乗る車両を変える」「鏡を見る」だけでも脳は刺激される
「もう年だから……」その一言で、あなたの体を老いへと向かわせる一因になるかもしれない。しかし、最新の医学を読み解くと老いはコントロールできるという。日々の暮らしにほんの少しの「新習慣」をプラスするだけで、脳機能の衰えを防ぎ、若々しい体を維持する秘訣をお届けする。
教えてくれた人
加藤俊徳さん/医師・加藤プラチナクリニック院長
脳の機能は何才からでも向上する
加齢とともにリスクが高まる認知症。65才以上では8人に1人が罹患すると言われている。
これまで1万人以上のMRI脳画像診断を行ない脳の機能や老化の研究に取り組んできた加藤プラチナクリニック院長・加藤俊徳医師はこう話す。
「60代以降でも脳の機能を維持・向上させられることが近年の研究でわかってきました。記憶力や認知機能の低下は何才になっても防ぐことができるのです」
脳には約1000億を超える神経細胞が存在するが、加藤医師によればその機能は大きく8つの系統に分けられるという。
「私はこれを“脳番地”と呼んでいます。それぞれ、思考系、感情系、伝達系、運動系、聴覚系、視覚系、理解系、記憶系に分類されます。日常の何気ない行動のなかで、できるだけ多くの脳番地を刺激することが脳の老化防止につながるのです」(加藤医師。以下「 」内は同じ)
例えば外出は脳機能を向上させる機会の宝庫。「乗る車両を毎回変える」だけでも効果はあるという。
「混雑状況を推理したり、普段の乗車位置を意識的に変更する過程で脳の記憶系、思考系、視覚系番地が刺激されます。次の駅やバス停で降りる人を予測すれば、視覚系、記憶系、理解系、思考系が同時に働きます。地図や時刻表を見ることも、視覚系、思考系の絶好のトレーニングです」
外出前に鏡を見て身だしなみを整えることも脳を刺激する。
「視覚系、手先を使うことによる運動系、理解系の脳番地を強化します。さらに外出先で店員と話せばより効果が高まる。『この魚のおすすめの調理法は?』『この野菜の産地は?』と尋ねる際には、相手の話を聞く聴覚系、内容を理解する理解系、何をどう聞くかを組み立てる思考系・伝達系を働かせ、感情系への刺激にもなります。老害と思われないよう相手の忙しさや周囲のお客さんに配慮することも忘れないでください」
テレビよりもラジオで聴覚系を鍛える
カレンダーに予定を入れる際は、スマホではなく自分で手書きするほうが効果的だという。
「情報を整理・確認しながら書くことで、脳の理解系がフルに働きます」
日頃の生活習慣では、まず質の高い睡眠を得ることを心がけたい。
「脳は睡眠中に日中の活動で溜まった老廃物の排出や、傷ついた細胞の修復を行なっています。記憶や感情の整理も睡眠中に行なわれるため、睡眠不足は記憶力の低下のみならず、メンタルの不調も招いてしまう。脳の老廃物であるアミロイドβはアルツハイマー型認知症の強い誘因とされており、睡眠不足は老廃物がたまりやすく脳にとって大敵なのです」
睡眠の質を向上させるためには「朝の目覚め」が大切だと加藤医師は言う。
「起きてすぐに朝日を浴びると、光の刺激によってセロトニンが分泌され、脳と体のスイッチをオンにします。セロトニンは夜には睡眠を促すメラトニンに変化するので良い眠りにもつながります。
朝起きてコップ1杯の水を飲むのも空腹の胃腸を刺激して自律神経を整えるのに効果的。ただし、冷たすぎる水は血管を収縮させ、心臓に負担をかけるリスクがあるので、ぬるめの水か白湯がいい」
部屋の掃除や片付けも、効率のよい手順を考え、実行することで理解系、運動系、視覚系といった脳番地を同時に鍛えられるという。さらに週末などに部屋の模様替えをするのも効果的だ。
「どこに何を置くかを考える思考系、理解系、家具や荷物を運ぶ運動系、配置を見る視覚系、昔の配置と比較する記憶系と多くの脳番地を同時に使う非常に効果的なトレーニングになります」
テレビなら好きな芸人の番組を観て笑ったり、応援しながらスポーツ観戦したりすれば、脳の感情系が刺激されるという。
テレビ以上に推奨されるのがラジオを聴くこと。
「聴力の低下は認知症リスクを約7%上げるとされています。ラジオを聞くことは聴覚系を鍛えるだけでなく、音の情報を脳内で処理するとともに、想像力も喚起。記憶系脳番地の発達にもつながることがわかっています」
さらに利き手と逆の手で歯を磨くことや、顔のマッサージも絶好の脳トレになるという。
「普段使わない手の歯磨きは、慣れない動きを制御しようと脳が必死に働くため、運動系脳番地への刺激が格段に高まります。また、顔には多くの神経が集まっているので、マッサージによって脳の覚醒が促され、脳にも酸素が行き渡りやすくなる」
今日から始める 脳が若返る26の習慣
【対策1】朝日を浴びる
網膜から光を入れてセロトニンを分泌させ、脳と体の覚醒スイッチをオンにする。
【対策2】コップ1杯の水を飲む
空の胃腸を刺激して脳を目覚めさせ、自律神経を整えて活動モードへ導く。
【対策3】深呼吸する
脳に大量の酸素を送り込み、酸欠に弱い海馬などの脳番地の働きを向上させる。
【対策4】歯磨きは利き手の逆で行なう
普段使わない手を意識して動かすことで、運動系の脳番地が刺激される。
【対策5】顔マッサージをする
小鼻の脇などを指で刺激し、脳への酸素供給を助ける。
【対策6】部屋の掃除・片付け
効率の良い手順を立案・実行することで、理解・運動・視覚系の脳番地が強化される。
【対策7】鏡を見て身だしなみを整える
鏡で自身を客観視し、手先を使って整えることで視覚・運動・理解系を刺激。
【対策8】店員と話す
積極的に挨拶や質問をして意思疎通を図り、伝達・感情系の脳番地を強化。
【対策9】テレビよりラジオを聴く
音声のみで情報を処理、情景をイメージし聴覚・記憶系を成長させる。
【対策10】15時までに30分ほど昼寝をする
起床後脳から入った情報を短時間の睡眠で整理。記憶の定着と脳の疲労回復を促す。
【対策11】スマホに頼らず散歩する
検索機能に頼らず自力で記憶や地形を頼りにし、思考・記憶系を鍛え直す。
【対策12】晩酌は適量に
前頭葉の働きの低下を防止。飲酒はルールを設け、適量を心がける。
【対策13】毎日湯船に浸かる
リラックスして副交感神経を優位にすることで、感情系の脳番地のケアと休息を行なう。
【対策14】カレンダーに予定を手書きする
自分の手で書くことで、情報を整理・確認。理解系の脳番地がフルに働く。
【対策15】3行日記をつける
一日の出来事を想起し、言語化して振り返ることで記憶・理解系の脳番地を強化。
【対策16】テレビを観て笑う
好きな芸人の番組を観てストレス解消する。感情系の刺激に有効。
【対策17】応援しながらスポーツ番組を観る
オリンピックやスポーツ観戦で感情が揺さぶられ、応援をすることで元気になる。
【対策18】1日1枚写真を撮る
構図を考える際、視覚系と思考系の脳番地が働く。前日の写真を見て記憶系も強化。
【対策19】ペットに話しかける
言葉の通じない相手の感情を推し量ることが、右脳の理解、強化につながる。
【対策20】夜は照明を暗めにする
視覚情報のカットで脳を休ませるよう、夜の睡眠前は暗めか暖色系の照明に。
【対策21】部屋の模様替えをする
配置を考え以前と比較したり、荷物を運ぶことで多くの脳番地を同時に使うトレーニングに。
【対策22】車窓を眺める
流れる景色から特定の対象を目で追い続けることで、動体視力を鍛える。
【対策23】乗る車両を毎回変える
普段の乗車位置を意識的に変更する過程で記憶・視覚系の脳番地が活性化。
【対策24】地図を見る
空間情報を認識して目的地までのルートを考えることで、視覚・思考系を強化。
【対策25】時刻表を見る
数字の羅列から規則性や目的の数字を見つけ出し、視覚・思考系の脳番地を刺激。
【対策26】乗り換え前後に読書する
細切れの時間で物語の世界に入り込み、記憶・思考系の脳番地の負荷を高める。
※週刊ポスト2026年7月17日号
●認知症の症状と予防法「8つの脳内番地別・脳を鍛えるエクササイズ」【専門家解説】
●脳は歩くほど若返る!専門医直伝【脳活ウォーキング】もの忘れや認知症予防にも役立つ8つの歩き方
●【脳の老化予防法】脳内科医が教える8つの“脳番地”と鍛え方「意図的に面倒なことをする」「ラジオを聴く」「古いアルバムを見る」のも効果的
