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84才独居の父親が「膝痛でゴミ捨て所まで行けない…」深刻な高齢者のゴミ出し問題と活用した支援サービスの種類【専門家が解説】

 高齢になると、ゴミ出しは想像以上に負担の大きい作業になる。重いゴミ袋を運ぶことが難しくなったり、分別や収集日の管理が負担になったりして、気づかないうちに生活環境の悪化につながることも…。そこで、介護職員・ケアマネジャーの経験をもつ中谷ミホさんに、高齢者のゴミ出しを巡る課題や支援サービスについて教えてもらった。

この記事を執筆した専門家

中谷ミホさん

福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703

独居の父(84才)のゴミ出し問題「集積所まで持って行けない」

 実家から車で15分ほどの場所に暮らす平川蓮人さん(仮名・52才・会社員)。ひとり暮らしをしている父親(84才)の様子が気になり、週末にはできるだけ実家に通うようにしていました。

 父親は数か月前から膝の痛みが強くなり、ゴミ出しをするのが難しくなっていました。自宅から集積所までは徒歩5分ほどの距離ですが、膝を痛めた父親にとってはゴミ袋を持って歩くことは大きな負担です。

 平川さんの父が暮らす自治体では、カラス対策のためゴミは収集日の朝に出すのがルール。そこで平川さんは、父親に代わってゴミを出すために、収集日の早朝に合わせて実家へ通うようになりました。しかし、仕事の繁忙期や出張が重なると、どうしても間に合わない日も出てきます。

「近所に頼れる人もいないので、どうしたらよいか…」と平川さんは頭を抱えています。

見落としがちな親のゴミ捨て問題

 高齢の親と離れて暮らしていると、日々のゴミ出しがどれほど負担になっているか、なかなか気づきにくいものです。集積所までの道のりや重い袋の持ち運び、細かな分別のルールなど、高齢になるにつれ、これまで当たり前にできていたことが、少しずつ難しくなっていくのです。

 久しぶりに帰省した実家でゴミが溜まっているのを見て、親の暮らしぶりに不安を覚えるご家族も少なくありません。

 高齢の親のゴミ出しに関する事例を取り上げながら、家族が知っておきたい支援サービスの種類や活用のポイントを解説します。

独居高齢者の「ゴミ出し」は想像以上に深刻 考えられる3つの問題

 高齢者のゴミ出し問題は、本人が困るだけでなく、生活環境や安全にまで影響が及びます。国立環境研究所の「高齢者ごみ出し支援ガイドブック」では、高齢者のゴミ出しをめぐる課題として、次の3つが挙げられています。

参考資料:国立環境研究所「高齢者ごみ出し支援ガイドブック」(2017年5月)
https://www-cycle.nies.go.jp/jp/report/aging2.pdf

問題1 家にゴミが溜まり、不衛生な住環境になる

 ゴミを出せずに自宅に溜め込んでしまうと、悪臭や害虫が発生し、衛生環境が悪化します。さらに進行するとゴミ屋敷化するおそれもあり、周囲との関わりも減って社会的な孤立が深まる悪循環にもつながります。

問題2 不適切なゴミ出しで、近隣トラブルにつながる

 家族の支援を受けていても、ルール通りにゴミを出せないケースもあります。たとえば、週末しか実家に来られない家族が、やむを得ず収集日以外の日にゴミを出してしまうケースです。結果として、近隣住民とのトラブルにつながる可能性があります。

問題3 無理なゴミ出しで、転倒・骨折のリスクが高まる

 支援がなく本人が無理を続けるケースも問題です。重いゴミ袋を持って階段を下りたり、雨や雪の日に傘とゴミ袋で両手がふさがった状態で集積所まで歩いたりすると、転倒などの危険も高まります。高齢者は筋力低下や骨粗しょう症で骨折しやすく、それをきっかけに寝たきりになることもあります。

高齢の親のゴミ出し問題に早めにきづくサインとは?

 高齢者がゴミ出しに困る原因はさまざまです。平川さんの父親のように膝の痛みといった身体的な理由による場合もあれば、認知機能の低下により分別の仕方や収集日が分からなくなってしまう場合もあります。

 次のような様子が見られたら、親がゴミ出しに困っているサインかもしれません。

●ゴミ袋が部屋の中にいくつも置かれたままになっている
●収集日でない日にゴミを出そうとしている
●分別がうまくできていない
●ゴミ袋が重くて、持ち上げられない様子がある
●近所の人から「ゴミのことで…」と連絡があった

 こうした状況に心当たりがあれば、家族だけで抱え込まず、相談窓口や支援サービスの活用を検討してみましょう。

ゴミ出しで困ったときの相談窓口

 高齢の親のゴミ出し問題、「どこに相談すればいいかわからない」というときは、まず地域包括支援センターに問い合わせてみましょう。介護や福祉の専門職が常駐しており、ご家族の状況に合ったサービスを紹介してくれます。相談は電話でも窓口でも可能で、家族だけでの相談も受け付けています。

状況に応じて次のような窓口も利用できます。

●市区町村の環境課(ごみ担当)
●市区町村の高齢者福祉課
●社会福祉協議会

 このほか、ケアマネジャーに相談してみるのもよいでしょう。

利用できる支援サービス

 高齢者のゴミ出しを支援するサービスには、自治体独自のものから、介護保険サービス、民間のサービスまで複数の選択肢があります。ここでは代表的なものを紹介します。

自治体のゴミ出し支援制度(戸別収集)

 多くの自治体では、高齢者や障害のあるかたを対象に、玄関先までゴミを取りに来てくれるサービスを行っています。「戸別収集」や「ふれあい収集」など名称は自治体によって異なりますが、いずれも集積所まで運ぶ必要がなく、玄関先に出しておくだけで回収してもらえます。無料または低額で利用でき、安否確認を兼ねていることも少なくありません。

 収集日にゴミが出されていない場合は、収集員が直接声をかけたり、あらかじめ登録されたご家族や関係機関へ連絡を入れたりすることもあります。離れて暮らす家族にとっても、定期的に様子を見てもらえる安心感につながります。

 一例として兵庫県姫路市では、高齢者や障害のあるかたなどを対象にした「ふれあい収集」を実施しており、ゴミの戸別収集と合わせて安否確認も行われています。

 ただし、多くの自治体では利用条件として「要介護認定を受けていること」「障害者手帳の交付を受けていること」「家族や近隣の協力が得られないこと」などが定められています。詳細は自治体によって異なりますので、事前にご確認ください。

訪問介護(生活援助)

 介護保険の訪問介護(生活援助)では、ヘルパーにゴミ出しを頼むこともできます。ただし、生活援助は1回あたり20分以上の利用が基本となるため、「ゴミ出しだけ」でサービスを受けるのは難しいのが実情です。そのため実際には、掃除・洗濯・調理などほかの生活援助と組み合わせて依頼することになります。たとえば、週に1回ヘルパーに来てもらい、室内を掃除する際にゴミをまとめて集積所まで出してもらうといった使い方です。

その他のサービス

 要介護認定を受けていない場合や、介護保険では対応しきれない部分については、次のようなサービスも検討できます。

●社会福祉協議会の生活支援サービス:ゴミ出しや買い物などの日常的な支援を低料金で依頼できる

●シルバー人材センターの家事援助:地域の会員が1時間単位で対応。比較的低料金で依頼しやすい

●地域の有償・無償ボランティア:NPOや住民団体が運営。社会福祉協議会や地域包括支援センターで紹介してもらえる

●民間の家事代行サービス:曜日や時間の融通が利き、要介護認定を受けていない人も利用可能

●訪問介護の自費サービス:介護保険の枠外でのサービス。費用は全額自己負担となる

 利用条件やサービス内容、利用料は地域によって差があり、サービス自体がない地域もあります。お住まいの地域でどのような支援が受けられるか、情報を集めて活用しましょう。

高齢者のゴミ出し問題と対策【まとめ】

 冒頭でご紹介した平川さんは、地域包括支援センターへの相談をきっかけに、自治体の戸別収集を利用できることになりました。

「ゴミの日に合わせて実家に通う必要がなくなり、私の生活も落ち着きました」と平川さんは話します。

 一方で、自宅にゴミを溜め込んでしまう状態は、「ゴミ出しが大変」というだけでは済まない場合もあります。生活意欲の低下や、自分自身のケアを放棄してしまう「セルフネグレクト」のサインであるケースも少なくありません。ゴミ出しの問題に気づいたときは、食事がきちんととれているか、入浴や着替えができているか、外出や人との交流が極端に減っていないかなど、生活全体にも目を向けてみてください。

「実家の様子が気になる」と感じたときは、家族だけで抱え込まず、まずは地域の窓口に相談してみましょう。

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