プロが教える在宅介護のヒント 在宅医・鈴木央さん<第4回>
在宅介護で通院が困難な場合に利用することができる在宅医療。在宅医療の第一人者である、鈴木内科医院の鈴木央(ひろし)院長に在宅で療養する際のヒントを教えてもらうシリーズの第4回は、自宅で療養中、持病が悪化したり、別の病気になったときの対処法。
在宅医療は療養する人の生活を「支える医療」で、病気を「治す医療」とは少し違うということだが、在宅医療と急性期病院など、地域との連携体制やそれぞれの役割について教えてもらった。
在宅療養中に容体悪化や、別の病気が見つかった時は?
在宅療養を支える地域丸ごと医療のしくみ
在宅療養が始まる主なきっかけが「退院」か「通院困難」であることは第2回でお伝えしました。どちらの場合も、患者さんは何らかの病気やケガの継続的な治療や、後遺症や障害のケア、リハビリテーションが必要な状態で、体力や気力、抵抗力、回復力といった力が総合的に低下していることが多いです。
そこで「在宅医療計画書」や介護保険の「ケアプラン」に基づいて、医療・介護のさまざまな専門職が関わり、患者さんの療養生活を支えます。
なるべく小康を保ち、生活の質が低下しないよう、状態が悪く変わるのをゆるやかに抑えるケアを行いますが、それでも持病が悪化したり、他の病気になったり、ケガで入院が必要になることはあります。
そうした場合、在宅医は患者さんとご家族と相談の上、過去に入院や通院をしたことがある地域の急性期病院に連絡をします。持病の悪化ならその病院の主治医、違う病気やケガなら病院の「地域医療連携室」に連絡して、受け入れを相談します。
かつて入院や通院をしたことがある急性期病院は患者さんの情報を持っているので、患者さんにとって安心できる選択だと考えるわけですが、もし満床の場合は、別の適した病院を探します。まれに患者さんやご家族が高度な治療を受けたいなどの理由で別の病院を希望する場合は、希望の病院に在宅医として連携と患者さんの受け入れを相談することもあります。
一般的には、今後のご家族のお見舞いなども考えると、できるだけ自宅に近い病院のほうが、さまざまな点で利点が多いと考えています。退院時の在宅医との連携もスムーズに進みます。
このように、在宅療養を希望している人が医療を受ける場所として以下の流れが用意されていて、全体が「地域包括ケア」「地域丸ごとケア」などと呼ばれているしくみです。
いざというときは地域の急性期病院や回復期病院の医療も受けられるので、在宅医療は先進医療から切り離された医療ではなく、患者さんは安心して在宅で療養できます。
患者さんの急変にご家族が気づいたときや、心配なことがある場合には、在宅医か、在宅療養の支援で関わる医療・介護のスタッフに連絡をしていただければ、在宅医が責任をもって状況に応じた医療を提案します。
急性期病院と在宅医が連携する退院支援
急性期病院と在宅医などの連携のしかたを具体的な例で説明しましょう。