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暮らし

「母と娘のお花見弁当 海苔の栄養はスゴイ」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~ 第70話

 漫画家で栄養士の資格をもつうえだのぶさんは山口県で母親とふたり暮らし。慢性膵炎を抱え、脚のリハビリに通う母は今年80代。かつては手の込んだお弁当を作ってもらったものだが――お弁当を巡る母子の春のエピソード。

脚の調子も上々の母

 今回のエッセイが公開される頃にはもう全国で桜の開花が進んでますよね。テレビやネットでは不穏なニュースが流れる毎日ですが、今年もいつも通り晴れやかな気持ちでお花見を楽しみたいものです。

 わが家の近くには市営の大きな公園がありまして、桜の名所としても有名でお花見シーズンには駐車場待ちの大渋滞ができるほど大勢の来園客で賑わいます。その長~い渋滞を横目にお弁当を持って悠々と歩いて公園に入るのが母と私の毎年恒例の楽しみです(性格悪いぞ)。

 母の脚はおかげさまで、週1回のリハビリ型デイサービスに通いながら順調に回復しています。先日も地元の球場で開催されたプロ野球のオープン戦(で賑わっている場外の様子)を見に、片道20分くらいの道のりを自力でテクテク歩き切りました。

 今も「桜が咲いたら毎日お弁当持って公園に行こうやー♪」と自分から言ってくるくらいなので、きっと調子はいいんでしょう。脚が悪くなる前は毎日この公園を1時間くらいかけてウォーキングしていたので、そこまでは望まないにしても毎日歩く習慣が戻ってきたらいいなと思っています(入場無料の公園なのでお金をかけずに筋トレできます、うふ)。

母VS娘

 お花見と言えば「お弁当」。

 私はちゃっちゃと作りたい「手抜き派」なので、お弁当は基本的に「海苔むすび&おかず少々」です。そのおむすびも板海苔の上にお茶碗一杯分のご飯を広げて塩昆布や梅・おかかを乗せてぎゅっとまとめる、いわゆる「バクダンむすび」ってやつで、イベントの仕事で出かける時はこれに魚肉ソーセージ(たんぱく質)と果物(ビタミン)を添えるだけ。

 そこそこ栄養バランスは整うので私的には問題なしなのですが、母は「お父さんが仕事に持っていってた弁当よりオジサンくさい」と言って笑います。

 そんな母が作るお弁当は私が子どもの頃から決まって「海苔巻きといなり寿司」。花見だけじゃなく運動会やピクニックなど、外に出かけた時のお弁当は常にこの組み合わせでした。海苔巻きの具もいつも同じで「卵焼き」「しいたけ」「煮あなご」「みつば」「桜でんぶ」の5品(母に確認したけど間違いないそうです)

 前の日から干ししいたけを戻して煮含め、油揚げの油抜きをして中を開いて煮含め、煮あなごも作り、翌日は朝早くから酢飯を作って卵焼きを作って油揚げに酢飯を詰めて“巻きす”に乗せた海苔に酢飯を広げて具を乗せて何本も巻いて…出かける寸前まで母が一人でせっせと弁当作りをしていたのを覚えています。

 とんでもない手間ですよねー。

 戦中生まれで、もののない時代に育って、外食もレトルトもテイクアウトも知らず、スーパーなんてなくて、「料理は自分で作るもの」(なんなら服も自分で作るもの)な当時の母にとってはこの手間が「当たり前」だったんでしょうね。

 ただ、子どもの頃の私はこのお弁当が嫌で嫌で。高度経済成長期生まれの子どもにとっては海苔巻きもいなり寿司も古臭く、時々食べる「お子様ランチ」で味覚が学習しているので、鶏のから揚げやミートボール、ウインナー、マヨネーズを塗ったサンドイッチ、そういうものが食べたいと何度も訴えましたが、その願いが叶うことはありませんでした。

理由は2つ
1.お母さんそんなもの食べたことないもん
2. 海苔巻きといなり寿司が好きなんじゃもん

 栄養のセミナーなどでお話をする時に痛感するのですが、「食事を作る人(食べさせる人)」の食の好みがその家庭の健康状態のカギを握っていると思います(なので私は積極的に「子育て世代の皆さん」に簡単な栄養バランスのとり方などを伝えるようにしております)。

 ただ母も高齢になり、いなり寿司も海苔巻きもずいぶん前から「思い出の味」になっています。相変わらずこの2つは母の好物ですが、最近ではスーパーにある味付けの油揚げを使いますし、海苔巻きに至ってはもう自分で作ることはありません。

理由は1つ
1.買った方が早いし、おいしいもん

 うんうん、あなた(母)が頭の柔らかい人で良かったよ。昔みたいにテキパキできないのに「絶対自分で作る!!」とか言われたらお花見に行く前に日が暮れますもの。そんなわけでわが家のお花見弁当は現在「バクダンむすび」時々「コンビニの助六弁当」です。

「お天気の良い日に満開の桜の下でお弁当を食べる」

 それだけで十分贅沢なご馳走ですよね。

 あと何回一緒にお花見できるかなあ。

NO老いるMemo「海苔のチカラ」

 以前「海苔巻きの良さ」についてお話したことがありますが、今回は「海苔」の押しポイントです。

 海苔って海藻なので鉄やカルシウムなどのミネラルが摂れるんですが、緑黄色野菜と同じくビタミンAも摂れるんです。

 焼き海苔1枚(約3g)で1食に摂りたいビタミンAの約半分が摂れます*。おにぎりにちょっと海苔を巻くだけで栄養価がぐっと変わるんですよ。

 おにぎりの具をたんぱく源(肉や魚)にすれば栄養バランスはさらに良くなるし、色々な具材を入れられる海苔巻きは本当に素晴らしい、と常々感心しています。

 母の海苔巻きが苦手だった子どもが50才手前で栄養士の資格を取って、子育てママさんや高齢者の皆さんに「巻きずしはバランス良くいろんな栄養素が摂れる優秀な一品なんですよ」なーんてセミナーなどで積極的におすすめしてるんですから、ほんと人生って何が起きるかわかりませんね。

 ただ1つ、悲しい現実が…。「お米も海苔もとっても高い」

 海苔むすびや海苔巻きが、サンマやイワシのように「気がつけば庶民には手の届かない高嶺の花」にだけはなってくれるな~!! と願わずにはいられません。

*216~233μgRAE(成人女性の推奨量650~700μgRAE/日の約3分の1)
参照:日本人の食事摂取基準(2025)

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絵と文

漫画家・うえだのぶ

うえだのぶさん

 イラストレーター・漫画家。59才。山口県で83才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja
『読者体験!リアル迷惑人間大集合1 』Kindle版が発売中。

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