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暮らし

在宅介護がしんどい、ツラい人へ「精神的・肉体的疲労を防ぐ13のヒント」【社会福祉士提案】

 実母の認知症介護を10年以上続けてきた社会福祉士の渋澤和世さん。正社員として働きながら2人の子育て、介護を続ける中で「心身ともにかなり疲弊した」という。介護疲れを防ぐために工夫してきたアイディアを教えてもらった。

この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん

在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。

父と約束した「認知症の母の介護」

 40才を過ぎたばかり頃の私はまだ「介護とは何なのか」「どういう状況」を指すのか、深く理解をしていませんでした。実母自身も「将来は施設に入りたい、楽しそうだし」などと言っていたこともあり、楽観的に考えていました。その後、実父が先に亡くなったのですが、息を引き取る瞬間に「お母さんは私に任せて」といったら、大きくうなずいて強く手を握り返してきたのです。

 母はアルツハイマー型認知症だったので、父はそのことを大層心配していました。元気だった自分が先に逝くことはさぞかし無念だったことでしょう。

 筆者はこのとき、父の遺志を受け継ぎ「父と、母の面倒を見る約束をした」との強い思い込みがありました。認知症を発症して一人になった母を、筆者の自宅に呼び寄せ同居を開始しました。それからはだんだんと認知症が進行し、本格的な介護が始まりました。やがて「これが介護か」と、身を持って実感することになりました。

 こうした経験を踏まえながら、在宅介護で疲弊しないためのヒントをお伝えしたいと思います。

【1】介護の疲弊・疲労の正体を知る

 在宅介護の疲労には、身体的なものと精神的なものがあります。これらは複雑に絡み合っていて、身体が疲れると心に余裕がなくなり、心が疲れると身体が動かなくなるなど「負のループ」が起こりやすくなります。

 筆者は平日の昼間は働いていたので、デイサービスなど介護保険サービスを利用していましたので、母と一緒にいる時間は平日の夜から朝までと仕事がお休みの土日です。それでも身体的、精神的な疲労はかなりのものでした。

 まずは、在宅介護で起きやすい疲労の一例をみていきましょう。

身体的疲労

・体力消耗: 移乗(抱え上げ)、入浴介助、着替えなどの肉体労働。
・睡眠不足:夜間の体位変換、徘徊への対応など。
・身体の悪化:介護による腰痛、膝痛、肩こりなど。

精神的疲労

・やりたくない気持ち:排泄介助、食事介助など。
・報われない思い:感謝の言葉がない、認知症による暴言・拒否など。
・将来への不安:これがいつまで続くのか、お金は足りるのかなど。

 介護にまつわる「身体的疲労」「精神的疲労」をいかにラクにするか、筆者が介護中に工夫してきたことについて具体的にご紹介します。

【2】双方が「ラクになる」という視点を持つ

 在宅介護は、日々の暮らしの延長線上にあるからこそ、介護する側・介護を受ける側の双方が「いかにラクをできるか」という視点が非常に大切です。

 筆者は母の介護が始まってまもなく、介護に役立つだろうと思い、ホームヘルパー2級(現、初任者研修)の資格を取得しました。教科書には模範的な介助方法がのっているのですが、実際母の介護では、教科書通りにはいかない。理想と現実のギャップに直面しました。

 研修相手は協力的ですが、現実は拒否、抵抗、麻痺による重心の偏りなど予測不能な動きが伴います。「脇を支える」という基本手順を踏もうとしても、母が振り払ったり、崩れ落ちたりする。

 この経験から、状況にあわせて「思考を切り替える」ことや、「目の前の状況をやり過ごす」ための考え方が大切だと気がつきました。具体的な方法としては、「頑張る(任務)」を「仕組み(環境や道具)」に置き換えて、介護者の心身の負担を減らすことです。

【3】「毎日入浴しなくてもいい」「着替えなくてもいい」と割り切る

 我が家では、母の「入浴は毎日」「パジャマに着替えて寝る」「翌朝着替える」。これが当たり前の生活をずっとしてきました。

 ある日、介護サービス相談員として高齢者施設を訪問した際、利用者から「入浴は週2回、夜はパジャマに着替えない」「着替えも毎日はしていない」と聞きました。たしかに施設にいればそうそう外出もしませんし、失禁や食べこぼしがなければ、お風呂も着替えも毎日しなくてもいいかもしれません。そう考えると少し気持ちもラクになりました。

【4】「パジャマをあきらめ」翌日の服を着てもらって寝かせる

 我が家でもこの考え方を取り入れてみることにしました。朝は家族を送り出し、自分も自宅を出るタイムリミットがありました。母をひとりで着替えさせるのに手こずっていたので、夜はパジャマという概念は捨て、次の日の洋服を着せて寝かせることにしました。これだけで朝の時間にだいぶゆとりができました。

【5】汚れたら施設で着替えてもらう

 失禁で汚れたら着替えてもらえばいいし、汚れていなかったらそのままデイサービスに送り出します。デイサービスには毎日着替えを持参するので、汚れたら取り換えてもらえます。

 実際、自宅と事業所と車の送迎ではそんなに汚れることもありません。1日1回着替えができたことだけでも、よかったと思うようにしました。

【6】腰痛がツラい「スライディングボード」で移乗をラクに

 介護につきものといえる腰痛や膝痛は、ある程度「道具」でカバーができることもあります。例えば「スライディングボード」(移乗ボード)と呼ばれる道具があります。ベッドから車椅子への移乗の際、このボードを使うことで力を使わずに横に滑らせることができます。

【7】電動ベッドの高さは介助者の腰の位置まで上げると動作がラク

 電動ベッドの高さは、自分の腰の高さまで上げると介助者の動作がしやすくなります。ベッドから起き上がらせるなどすべて中腰での作業が腰に負担をかけているため、中腰にならないように環境を調整することをおすすめします。

 さまざまな生活シーンで、「ラクに介助ができる方法」を試しながら、調整していけるといいでしょう。

【8】排泄ケアやニオイ問題への工夫

 筆者にとって苦痛の最たるものは排泄介助でした。トイレに連れていけた頃はまだ良かったのですが、オムツを利用するようになってからは、排泄物が漏れてしまうことや、ろう便(便をいじる行為)にも悩まされ続けました。

 ニオイ問題に悩まされたため、洗濯物を「重曹」につけて消臭したり、排泄後のゴミの処理には防臭機能付きの袋などもよく活用していました。

【9】洗濯の負担をいかに減らせるか」を考える

 排泄ケアにともなう「洗濯物」をいかに減らせるかにも工夫を重ねました。

 母は3~4日、便が出ないことがよくありました。そんな時には、自分の仕事が休みの日に合わせて、市販の子供用便秘薬を使っていました。その日は必ず大量の便が出るので、捨ててもよい古いズボンを着用してもらい、汚れたオムツやズボンをそのまま廃棄するようにしていました。「使い捨て」を徹底することで洗濯の負担を軽くする、こうした視点の切り替えが大切だと感じます。

【10】寝具やエプロンなどすべて「使い捨て」に

 使い捨ての吸水シートや使い捨てエプロン、手袋もフル活用して、洗う手間を減らすことで、随分と気持ちも楽になりました。寝具も防水シーツの上に、部分用防水シートを敷くことで、汚れた際もシーツ全部を取り換える手間が省けます。100円ショップには介護に使える「使い捨て」アイテムがたくさん売っているので、活用できると思います。

【11】本人のために「手伝いはしすぎない」と決める

 介護で双方がラクをするためには「本人ができることは任せる」ことも大切。手伝いすぎてしまうと、介護者の負担は増え、本人の意識や体力の低下を招いてしまいます。

【12】着替えは上下コーディネートしてセット

 毎日の洋服を選んで出すことが大変であれば、ハンガーにセット済みの服を並べて洋服店のようにラックにかけておき、本人が手に取るだけにしておく方法もあります。上着は柄物、ズボンは無地など決めてセットしておけば、服選びにも迷いが少なくなります。

【13】室内はなるべく1人で歩けるように道具を設置

 部屋の中では、歩行のサポートをするかわりに、本人が一人で歩けるように「手すり」をつける、「滑り止め」を敷くといった工夫もできます。こうした福祉用具については、ケアマネや福祉用具専門相談員さんに相談するとよいでしょう。

***

 筆者の介護は褒められたものではないかもしれませんが、なんとか工夫をして乗り切れたと思っています。介護中の人にとって、本記事が少しでも心が軽くなるヒントなれば嬉しい限りです。

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