兄がボケました~認知症と介護と老後と「第65回 運転免許証更新で思うこと」
長年、若年性認知症を患う兄のサポートを続けるライターのツガエマナミコさんは、亡き両親の遺骨のことや、叔父叔母の家のことなど、兄の分まで抱えてあれこれと思案する日々を送っています。自分の老後のことも気になるマナミコさんは、選択する事柄に変化が表れてきたようです。
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少しずつ手放して身軽になる
ここ数か月、お財布を購入しようと探していて気づいたのですが、総じて小型化していませんか?
もちろん売り場には長財布からコインケースまでいろいろあるのですが、わたくし好みの二つ折りで分厚いおばさん財布がもはや絶滅危惧種になっていることに焦りを感じてしまいました。しかも10年ほど前に7~8千円で買えた革財布がどれも1万5千円以上に跳ね上がっていて震えました。
キャッシュレス時代とあって、カード決済、スマホ決済ですべてを済ませ現金を持ち歩かない人もいらっしゃると聞きます。カードケースに小銭入れがついていればそれで充分といわんばかりの小型財布が売り場で幅を利かせておりました。
わたくし好みのお財布は今後減っていくばかりだと思い、色やデザインが多少気に入らなくても妥協しようかと考えたことも何度かございました。でも諦めなくてよかった~と思う出会いがとうとう来たのでございます。
先日、外出先でふと立ち寄ったお財布売り場で、わたくしの好きな革製品ブランドのお財布がひとつだけ50%オフで鎮座していたのでございます。しかも探していたかぶせタイプの二つ折りで、ファスナーの小銭入れをはじめとしてほしい細部が揃ったまさにわたくし好みのシンプルな本革財布! しかも半額‼ 正規のお値段ならば、それでも買わなかったと思いますが、ここは衝動買い一択でございました。
数日後、いつも立ち寄る地元のお財布売り場に行くと、なんとまったく同じものが正規のお値段で陳列されておりました。「これ半額で買ったもんね~」と心の中でニンマリしたのは言うまでもございません。本革の香り、ここから長年をかけて手になじんで変化していく色艶、風合いを含めて、いい買い物をしたと満足しております。
一旦は100均やスリーコインズのビニールでも、布製のウォレットでも軽くていいかなと思ったのですが、せっかく現金を持ち歩く派ならば、自分が納得できるお財布の方が、気分がいいではありませんか。時代遅れと言われようとも、「そんな分厚いお財布邪魔じゃない?」と言われようとかまいません。今後絶滅しそうだからこそ今買わねば後悔すると判断いたしました。
そんなわたくしの63歳の誕生日がもうすぐやってまいります。
先日、運転免許証更新のお葉書が届きまして、驚いたことに「更新は予約制になりました」と書いてありました。おまけに「原則キャッシュレス決済です」とのこと。こんなところまでキャッシュレスか…、と世の中を憂いつつ、いつの予約にしようかと考えていましたら、ふと「返納」というワードが浮かび上がってまいりました。
19か20歳で免許を取得して以来、運転したのは知り合いの車で2~3回。免許の区分としては優良ドライバーなのですが、つまりここウン10年間は1ミリも運転していないのでございます。今後運転したいとも思いませんし、これまでは身分証明証として必須でしたが、昨年マイナンバーカードを作り、免許更新する必要性がないことに気づいたのでございます。
当時、何十万円も掛けて教習所に通い取った運転免許証でございますから、手放すのはどこかもったいない気も致しますが、いずれ返納するのなら今でも同じかと思ったところでございます。こうやって少しずつ手放して身軽になっていかねばならない年齢とも感じております。
今週も兄は穏やかでした。「おばちゃんがお兄ちゃんに会いたいって言ってたけど、足腰が痛くて、痛み止めの注射してもらっているくらいだから、ここまでくるのはちょっと無理かもね」と長文で伝えると「そりゃそうだ」と、的を射た答えが返ってきたのでちょっとびっくりいたしました。わたくしが洋服ダンスを点検したり、部屋の隅の埃を拾ったりすると「大丈夫?」と声をかけてくれたり、髭剃りに溜まったヒゲを掃除すると「うまくいった?」と確認したり、最近の兄はほんの少し口数が増えている気がいたします。
反応は薄くても話しかけることは大事だな~と思うこのごろでございます。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性62才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現67才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。
イラスト/なとみみわ
