在宅緩和ケア医・萬田緑平さん「最期を家で迎えたい」本人の希望を拒むのは家族「希望を受け入れられる家族は1割に満たない」
自分らしく最期を迎えるための心得や準備を綴った数々の著書を持つ在宅緩和ケア医の萬田緑平さん。「病院に頼らず家で最期を迎えたい」場合、家族はどうしたらいいのだろうか? 対談を含めて60ページに渡って在宅医療についての解説を担当した『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』(倉田真由美著)から、一部抜粋して紹介する。
穏やかな死を阻むのは「家族の意見」
「最期まで自宅で暮らしたい」と考えている本人の意思に反して、家族がよかれと思って「こうすべき、それはダメだ」と行動を制約してしまうケースは非常に多いです。がんになって本人は懸命に治療を続けてきたのに、家族は「もっと頑張って治療して」と言ってしまう。「最期は家で迎えたい」と本人が希望しても、その希望が受け入れられるご家族は1割に満たないと思います。
とくに患者さんが高齢の場合、お子さんの発言力が強まっていて、自宅に帰らせてもらえないケースもあります。
ある末期がん患者さんは「以前、自分も父親を病院に縛り付けていたから、自分も家に帰れない」と我慢していました。「もっと頑張って生きてほしい」と愛するがゆえにお互いを苦しめてしまう。
本当は家で過ごしたくても、「家族に迷惑をかけたくない」と遠慮して、病院や施設で亡くなることも多いのです。
働きざかりの40、50代の方でも、妻(夫)から「お願いだから入院して、治療を頑張って」「元気になって帰ってきて」と言われたら、家には帰れません。妻(夫)と医師が「家は大変、病院のほうが安心だから」と話を進めてしまい、患者さん本人の気持ちが置き去りになってしまうこともあります。
最期まで家で過ごすことに反対するご家族に対して、私がよくお話ししているのは、「それは誰の希望ですか?」ということです。病院にいてもらいたいのは、ご家族の願いなのではないでしょうか。その希望は、本人視点なのか家族視点なのか、どちらを重視するべきなのかを今一度考えてみてほしいと思います。
プロフィール/萬田緑平
1964年生まれ。群馬大学医学部卒業。大学病院の外科医として多くののがん患者の手術や抗がん剤治療を行う中で医療や看取りについて疑問を感じ、2008年から緩和ケア診療所に勤務。2017年「緩和ケア萬田診療所」を設立し、患者と家族のケアを続ける。『家で死のう!』(フォレスト出版)など著書多数。出会った患者と家族の日常と看取りまでを追ったドキュメンタリー映画『ハッピー☆エンド』も話題に。
撮影/五十嵐美弥
