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倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.105「夫が知らなかった水族館」

 漫画家の倉田真由美さんの夫で映画プロデューサーの叶井俊太郎さん(享年56)がすい臓がんで旅立ったのは2024年2月16日のこと。まもなく2年が経とうとしている。この2年、夫を失った世界でどう人生を充実させるのか考える中、ささやかな楽しみになっていることとは?

執筆・イラスト/倉田真由美さん

漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。新たな描きおろし漫画も収録した最新の書籍『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』も話題に。

夫が旅立ってから2年の月日

 夫がいなくなって、そろそろ2年が経とうとしています。月日が経つのがあまりにも早くて、気持ちが追いつきません。このコラムのタイトルも、さすがに変えたほうがいいのかなと思いつつ、なんとなくそのままにしてあります。

 この2年間は、福岡に住む妹が何度もうちに来てくれました。

 もちろん自分が旅気分を味わうためもあるでしょうが、私を励ますためという思いもあったと思います。昨年は延べ60日間ほど来てくれて、一緒に時間を過ごしました。近所のレストランに行ったり、買い物をしたり。二人ともカフェが好きなので、「ここ、パフェが美味しそう」など、良さげなカフェを見つけてはわざわざ遠くまで足を運んだりもしました。

 つい先日も妹が来て、

「ここ、良さそうじゃない? 久しぶりに水族館。そんなに遠くないし、余裕で日帰りできるよ」

 と、スマホの画面を見せてきました。

「水族館?近くの水族館はもう、行き尽くしたからなあ」

 夫は、近隣の子どもが喜びそうな場所ー公園、遊園地や動物園、水族館、科学館や博物館などあらゆるところを調べ尽くし、そのすべてに実際に私と子どもを連れて行くような人でした。関東近県の水族館で行っていないところが残っているはずがなく、「どうせなら行ったことがないところに行きたいのだけど」と、妹の提案にちょっと乗り切れないことを伝えました。

「あれ?川崎?」

 でも画面を見ると、私が知らない「カワスイ 川崎水族館」でした。

「ここ、行ったことない。えー?川崎に水族館あったんだ」

 淡水魚を中心にした、駅近の屋内水族館のようでした。私は淡水魚のメタリックな鱗の感じが好きで、普通の水族館でも淡水魚コーナーはいつも長めにいます。これは行ってみなくては!

 都内から電車で1時間かからず、着きました。川崎駅すぐ横のビル内にカワスイはあります。

 夫が知らなかったくらいなので規模の小さい水族館かなと思っていましたが、中は想像していたよりも広く、たくさんの生き物がいます。これほど立派な水族館が、うちからそれほど遠くない川崎にあるのを夫が知らなかったなんて…?

コロナ禍にオープンした水族館

 どうしても気になって調べると、カワスイのオープンは2020年でした。納得。コロナ期と言われる時期、それも初期の頃です。

「だから、父ちゃんは気づかなかったんだな…」

 それとも知っていたのかな。知っていたけど、来る機会がなかっただけなのかな。

 どちらなのかは永遠に分かりませんが、コンパクトでありながら見応えは充分で、妹とたっぷり淡水魚や水回りにいる世界の生き物の世界を堪能しました。

 帰り道、田園調布駅前にある果物店「ヤマナカヤ」に寄ってスイーツを食べようと、東横線を途中下車しました。でも時間が少し遅かったせいかウインドウの中にはほとんど生菓子がのこっておらず、諦めて帰宅。数日後、妹が帰る直前、また改めて訪れて極上の果物がたっぷりのプリンとゼリーをいただき、舌鼓を打ちました。

 大きなイベントではないけど、妹とのこういうささやかなお出掛けが、最近の楽しみの一つにはなっています。

倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」を1話から読む

『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』
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