介護ロボットで高齢者の集中力や積極性UPも NTTがサービス開始
近年、介護職員の人手不足の問題が深刻化する中、ロボットによる介護が注目を集めている。そんな中、NTT東日本は、ロボットを活用して介護におけるコミュニケーションをサポートするクラウド型サービス『ロボコネクト』を9月1日より開始した。
NTT東日本がクラウド上で提供する会話機能やカメラ撮影機能等のアプリケーションを、ロボットメーカーが提供するコミュニケーションロボットと連携させ、介護における負担軽減や、高齢者のQOL(生活の質)の向上をサポートする。その第一弾ロボットとして、ヴイストン社が提供する身長28cm、体重800gの卓上型コミュニケーションロボット『Sota(ソータ)』が登場。
『ロボコネクト』の主な機能は、「コミュニケーション機能」「カメラ撮影機能」「遠隔対話機能」の3つだ。
■コミュニケーション機能
Sotaと双方向の会話ができる。聞いたことには何でも答え、人間の子供と同様に会話機能は日々向上していく。
■カメラ撮影機能
「写真撮って」と話しかけると反応し、写真を撮ってくれる。写真はSotaの本体の中に保存され、同じネットワーク上のタブレットや、パソコン、スマホで閲覧が可能。メールで送ることもできる。写真は最大で約500枚まで保存が可能。
■遠隔対話機能
遠隔地でパソコンを使っている人は、Sotaに搭載されているカメラが写した映像を見ながら、Sota側にいる人(高齢者)とリアルタイムでの会話が可能。また、パソコン上に無料のソフトをインストールすることで、遠隔地からパソコンでSotaを操作することもできる。
さらに、キューアンドエー社が提供する介護用アプリケーションサービス『Sotaレク』を付加することで、介護施設における介護レクリエーション(以下、介護レク)で、職員に代わってSotaが進行サポートや自動進行を提供することもできる。その内容は「介護予防体操」、「脳トレ(クイズ)」、懐かしの写真などを使った「回想」など、84個のプログラムの提供が可能だ(※コンテンツは随時更新予定)。
高齢化が進む日本だが、介護現場はさまざまな課題を抱えている。大きな課題のひとつに「介護レク」がある。介護レクは、高齢者のQOL向上やリハビリ効果のために必要不可欠なものだが、問題が存在している。まずひとつは、企画・準備・運営に関わる職員の負担が大きく、人材流出の一因となっていること。もうひとつは、介護レクの中心となっている体操や歌のDVDといった既存のツールだけでは、高齢者、特に認知症患者の集中力を持続させることが難しいなどがある。
これらの課題に対し、NTT東日本は、コミュニケーションロボットを活用し、映像とロボット2つの良さを組み合わせるサービスによって、職員の負担の軽減や、高齢者の積極性の向上をはかれないかと考え、昨年8~10月、4つの介護施設にサービスのトライアルを実施。介護施設の課題をヒアリングしながら、ロボットと映像が連動した介護レクのトライアルを行った。その結果、専門家による効果検証で、施設利用者と施設スタッフそれぞれへの効果を確認できた。
まず、職員の88%がレクの負担軽減を実感し、「時間の余裕ができた」「負担が削減した」「介護レクを実施しやすくなった」との声があがった。一方、施設利用者の96%にも積極性の向上効果が確認された。ロボットがいることで発言回数が増え、交流や参加意欲のUP、集中力の持続といった効果もあったという。
また、外部調査によって、映像のみでレクリエーションを受けている認知症患者たちに比べて、映像とロボットを活用したレクリエーションを受けている認知症患者たちの方が、集中力や幸せな気持ちを表すQOLの数値は2倍高まるとの結果が出た。
このトライアル結果を受け、介護事業所や利用者からの「ロボットとおしゃべりしたい」「施設のみんなと撮影して盛り上がれるといい」「ロボットのカメラを使って見守りができたらいい」「自動進行によって、職員の稼働をさらに削減できるようにしてほしい」「価格はインターネット料金を含め1万円以下で利用したい」といった要望を踏まえて、介護レクだけではなく、コミュニケーションロボットとしても機能を備えてのサービス化にいたった。
基本的には介護施設を中心に展開し、全国7万施設のうち1万施設の導入を目指す。個人の購入も可能で、すでに「自宅で使いたい」との声や予約も。高齢の親と離れて暮らす人にとって、安否確認とまめにコミュニケーションをはかれるこのロボットがあれば、安心だろう。こういったロボットの登場で、介護の未来は変わるかもしれない。
【利用料金など】
初期費用は11万円ほどから(Sota本体価格:10万8000円、契約料・サーバー登録料:1944円)。月額料金は1ライセンス/3240円(最低利用期間は13か月、初月は月額利用料無料)。オプションの『Sotaレク』の利用には別途費用がかかり、サービス提供元のキューアンドエー社との契約が必要となる。
※サービスを利用するには、フレッツ光などによるインターネット接続環境と無線LAN環境が必要。
『ロボコネクト』に関する申し込み、問い合わせ窓口は以下から
NTT東日本公式ホームページ:https://flets.com/roboconnect/
撮影/浅野剛