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「東京2025デフリピック」100周年記念大会開催!注目の競技や観戦方法を認定補聴器技能者が解説【専門家が教える難聴対策Vol.30】

 国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)が主催する「きこえない・きこえにくい人のための国際的なスポーツの祭典「デフリンピック」。2025年11月15日からに東京で開催される。どんな大会なのか?見どころや注目の競技などについて、認定補聴器技能者としてきこえに悩む多くの人に寄り添い続けてきた田中智子さんに、解説してもらった。

教えてくれた人

認定補聴器技能者・田中智子さん

うぐいす補聴器代表。大手補聴器メーカー在籍中に経営学修士(MBA)を取得。訪問診療を行うクリニックの事務長を務めた後、主要メーカーの補聴器を試せる補聴器専門店・うぐいす補聴器を開業。講演会や執筆なども手がける。https://uguisu.co.jp/

「デフリンピック」記念すべき100周年は東京が舞台

 デフリンピックの「デフ」(Deaf)は、英語で「耳がきこえない」という意味の言葉です。オリンピック同様、デフリンピックも4年に1度、夏季大会と冬季大会が開催されています。今年はデフリンピック100周年という記念すべき大会が、東京で開催されます。

 きこえに困りごとがあっても、それぞれの力を発揮できる共生社会を目指す。そんなビジョンを描くデフリンピックが、今、日本で開催される意義は大きいと感じています。

 第1回大会は、1924年にフランスで初めて開かれました。今ではメジャーになったパラリンピックが初めて開催されたのは、1948年(イギリス)でした。つまりデフリンピックの方が、パラリンピックよりもずいぶん先に開催されていたのです。

 デフリンピックの最大の特徴は、やはり耳の聞こえの不自由な選手に配慮されているということでしょう。そのため大会競技を運営する上で、「耳」が聞こえなくても参加者が不利にならないように、視覚による合図を取り入れるなど、様々な工夫がなされています。視覚で伝える技術や工夫は、これからの共生社会を実現する上でも大いに参考になるのではと考えます。

「位置について、用意、スタート」はどうなる?

 競技における合図といえば、「スタート」がまっさきに思い浮かぶのではないでしょうか。スタートの合図について、短距離走を例に見ていきましょう。

 まずオリンピックの場合、日本語のスタートの合図は400mまでの種目では、「位置について/On Your Marks(オン・ユア・マークス)」「用意/Set(セット)」の後に号砲が鳴ります。

 そしてデフリンピックの場合は、スタートの合図を待つ選手の前にランプ点灯する白い箱のようなものが置かれていて、その箱に示されるランプの色により合図を決めています。「位置について」でランプが「赤」になり、「用意」は「黄色」になります。そしてスタートの瞬間は「緑」に変わります。

スタートの合図(400mまでの種目)

◆オリンピック

「位置について」→「用意」→「スタート」(号砲が鳴る)

◆デフリンピック

選手のスタートラインにスタートランプが設置してある

「位置について」(ランプが赤に点灯)→「用意」(黄色に点灯)→「スタート」(緑に変わった瞬間にスタート)

 ちなみに、この耳が不自由な人の色の違いによるスタートの合図は、ピストルスタート(号砲)と同期するシステムになっているため、健常者が同じフィールドで競うこともできます。

 以前は、号砲の代わりに「旗を振る」のがスタートの合図でしたが、短距離走など姿勢を低くするクラウンチングスタートでは、顔を上げて見なければならず、走り出しの体勢が不利になってしまうとのこと。

 光で合図するスタートランプが導入され、新たな技術により少しずつ不利な条件が除かれ改善されていきました。こうした取り組みは、技術の発達により、きこえない人やきこえにくい人たちの活躍できる場所(フィールド)が広がっていく、「社会」でも同じです。

 その一つの方法としてこの視覚による合図が、いかに有効的であるかということを、多くの人がこのデフリンピックで知って、考えるきっかけになればいいなと思います。

 ちなみに、今回のデフリンピックの競技は、陸上競技、バドミントン、バスケットボール、ビーチバレーボール、ボウリング、自転車競技(ロード)(マウンテンバイク)、オリエンテーリング、サッカー、ゴルフ、ハンドボール、柔道、空手、射撃、水泳、卓球、テコンドー、テニス、バレーボール、レスリング(フリースタイル)(グレコローマン)全部で21競技です。

 公式サイトやガイドブックで競技場などについて確認してみてくださいね。

*参考/競技観戦ガイドブック
https://deaflympics2025-games.jp/Watch-the-Games/Spectator-Information/book/JP_Spectator_Guide/#page=1

東京デフリンピック公式サイト
https://deaflympics2025-games.jp/#gsc.tab=0

注目の競技「オリエンテーリング」とは?

 デフリンピック競技の中でも、私が注目しているのは、オリンピックにはない競技のオリエンテーリング。耳の不自由なアスリートに対する工夫や、技術がいかんなく発揮されている興味深い競技です。

 オリエンテーリングとは地図とコンパスを活用して、コース上に設置されたコントロールと呼ばれるチェックポイントを順番に通過し、ゴールに着くまでの「速さ」を競う競技です。

 道なき山野を地図を読んで分析し、自らの力で進路選択する決定力・判断力、荒野や湿地等を走る身体的能力がトータルに要求されるものです。競技会場に位置情報や進むコースを示す視覚的指示など、実際の街中でも応用できるヒントが詰まった競技といえます。

 今回の大会は開会式・閉会式以外は、事前の申し込みなく、誰でも無料で観戦ができます。各会場では、競技名が入った会場ごとに違うオリジナルデザインのリストバンドが配られ、10競技分の色を集めたら、先着100名に記念グッズももらえるので是非挑戦してみてください。

東京2025デフリンピック【まとめ】

 きこえる人も、きこえない人も、すべての人がともに楽しめる、感動を分かち合える素晴らしいスポーツの祭典です。選手に情報を使えるための工夫や、きこえない中での選手同士のコミュニケーションなど、他のスポーツにない見どころがたくさんあります。会場で気軽に観戦できるので、ぜひ足を運んでみて欲しいと思います。

「東京2025デフリンピック」観戦料は無料なので、ぜひ会場に足を運んでみて!

イラスト/奥川りな

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