「脂質低めの栗ご飯と母のなんでじゃろう」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第60話
漫画家で栄養士の資格をもつうえだのぶさんは、山口県で母とふたり暮らし。慢性膵炎に加え、脚の不調を訴えていた母は、介護予防のデイサービスのリハビリに通うようになったものの、以前のようにシャキシャキと歩くことができずにモヤモヤ…。そんな母娘の大好物”栗”にまつわるエピソード。
道の駅で出会う栗に大興奮の母娘
やっと連日の超猛暑日が去って秋らしい風が吹くようになり、お天気の良い日中に母を連れて「道の駅ドライブ」にも行けるようになりました。今どきの道の駅はどこも買い物カートが置いてあるので、母のヘロヘロ脚でもカートを支えに店内が回れて助かっています。
この時期、道の駅にあると興奮してしまうのが「栗」。特に大きくて丸々した栗を見つけるとついついうっかり買ってしまいます。ええ、「うっかり」。だって面倒じゃないですか「栗むき」。
母も私も皮むきは苦手なくせに毎年うっかり買ってしまい、ぶつぶつ言いながら作業→栗ごはんを炊いて「おいしいねー(目キラキラ)」と盛り上がって、の繰り返しです。
面倒だけど、ピカピカの新米に塩とこぶだしとお酒少々のシンプルな味付けをしたホクホクの栗ごはんはやっぱりおいしい。年に一度は食べたいんですよねえ。
最近はネットで「栗のむき方」と検索すると色々出てくるので、毎年違った方法を試しています。熱湯に浸すとか冷凍するとか一晩水に漬けるとか。でもいまだに「これだ!」という方法に出会えてないんですよねー。ボロボロ割れたり崩れたり…。料理本で見るような角がしっかりあってカッコいい一粒栗にはどうやったらたどり着けるのか。
甘露煮や渋皮煮を上手に作っているかたをSNSで見ると尊敬してしまいます。
先生のお話に目からウロコ!
先日、母が通っている整体の先生からありがたいお話を聞きました。
母が先生に「去年の今頃はシャキシャキ歩けていたのに情けなくて」と弱音を吐いていました(待合室に声が聞こえる)。
すると先生の優しい穏やかな声が聞こえてきました。
「皆さんどうしても100から引き算してしまうんですよね。“一番良かった時”を100として、それよりも50減った、30足りない、と。でも僕は0に足し算することをおすすめしています。
“一番悪かった時”を0として、その時に比べたら20くらい増えた、そこからまた10増えた、と。今のうえださんは初めてここに来られた時よりもずいぶん良くなってると思いますよ」
――確かに。本当にそう。
台所で5分と立っていられなくて「なんでじゃろう、なんでじゃろう」と脚をさすりながら嘆いていた時の母に比べたら、今はスッと立ち上がれるし杖も使わないし、カートがあれば普通に買い物もできるようになってるし。ちゃんと0からプラスになってるよ。
「ネガティブじゃなくポジティブ」の考え方の、なんとわかりやすい例え。
先生のお話がありがたくて、思わず手を合わせて施術室を拝んでしまったわたくしでした。母もこの日を境に「なんでじゃろう」と言わなくなりました。
たいへんな「栗むき」も…
さて、毎年色々試している「栗むき」。去年は冷凍してみたんですが、今年は「水から沸騰直前まで火を入れる」という方法でやってみました。今までで一番ラクにむけました。目指す完成形には程遠いですが、”一番うまくむけなかった時”を0としたら「プラス40くらいの満足度」でした(整体の先生に「そういうことじゃない」と言われそう)。
栗ごはんを食べながら先生がサラッと言ったひと言を思い出しました。
「100に戻ることはないかもしれませんが」
そこはもう、受け入れていかないといけないんだろうな…と思います。
NO老いるMemo「うちの栗料理」(ってほどじゃないけど)
栗はほとんど脂質がないので、うちの母も安心して食べられる木の実です。
シンプルに「茹で栗」、それを裏ごししてバニラアイスに混ぜると美味♪ 煮物や肉炒めに入れたりもします。「栗を食べて育った豚はおいしい」と聞くので、なんとなく豚肉と合わせることが多い私です。
*参考「日本食品成分表2025(八訂)」医歯薬出版株式会社
絵と文
漫画家・うえだのぶ
イラストレーター・漫画家。59才。山口県で83才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja
『読者体験!リアル迷惑人間大集合1 』Kindle版が発売中。