大阪・関西万博で話題の『e-SNEAKER』が一般販売へ「世代を超えて利用できる新たな移動手段!外出の機会が増えそう」<試乗レポート>
「長距離歩行が困難な来場者にも、場内周遊が快適に楽しめるようにサポートしたい」との思いで、ダイハツ工業が大阪・関西万博に150台を提供し、連日多くの人に利用され注目を集めている歩行領域モビリティ(電動カート)『e-SNEAKER(イー・スニーカー)』。いよいよ一般発売がスタートし、話題となっている。「誰もが、楽しく、快適に移動できるパーソナルモビリティー」と話題だが、一体どんな乗り心地なのか、編集者が試乗してみました!
新たなパーソナルモビリティー、全国発売へ
2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)の会場で、新たな移動手段として話題を集めている『e-SNEAKER(イー・スニーカー)』(ダイハツ工業)が、8月25日から一般発売を開始した。
大阪・関西万博では、公式キャラクター「ミャクミャク」とコラボした特別デザインの『e-SNEAKER』を会場に150台を提供し、これまで2万人以上の来場者が利用しているという。
『e-SNEAKER』は、最大時速6kmで歩行者と同じ歩道を走れる、一人乗りのパーソナルモビリティーだ。免許がなくても乗ることができるため、免許返納後の高齢者の乗り物としても注目されている。
発売当日、大阪本社で行われた発表会に登壇した同社・取締役社長の井上雅宏さんは、「私の母親も乗ってみた」と語る。
「ちょっとした買い物、友人とのおでかけを気軽にどなたにも楽しんでもらう、新たな歩行領域モビリティが誕生しました。私も88才の母と大阪・関西万博に行きまして、母に乗ってもらいました。(乗る人と隣で歩く人の)目線がほぼ一緒なんですよ。スタイリッシュで動きも軽快。母は、『e-SNEAKER』で孫と一緒に京都に買い物に行ってみたいと話していました」
製品企画部・プロジェクト責任者の鐘堂(しょうどう)信吾さんは、新たなモビリティの開発コンセプトを語る。
「日本は高齢社会になり、車がないと生活が立ち行かなくなる地域は40%以上ともいわれています。免許返納後の高齢者を中心として、誰もが気軽に自由に楽しく、日常移動できる手段して新たな価値を提案したい。
ダイハツがこれまで培ってきた車作りの技術を活用しながら、乗り心地や安全面、スタイリッシュな乗車姿勢にこだわった。誰もが乗りたくなるようなモビリティに仕上げたかったんです」
ターゲットはアクティブシニアを中心に据えているが、大阪・関西万博では若者や子どもの利用も多いそう。今後は、全国の販売店でも試乗できるようになり、定期点検や専用の保険も準備しているという。
そんな話題の『e-SNEAKER』に介護ポストセブンの編集者が試乗。その様子をレポートする。
未来の乗り物ではない!今すぐ使いたい安心の移動手段
試乗したのは、普段はコンパクトカーを運転し、週末には、1時間半かけて91才の父親が暮らす実家に通い、サポートをしている編集者の関和子。
「まず、なんといっても見た目が格好いい。これまでの電動カートのイメージとは違って、老若男女、どの世代の人が乗ってもしっくりくるオシャレな感じ。シンプルなフォルムがいいですね。
父は免許を返納して久しいですが、どんどん出かける機会が減ってきています。近くのスーパーに歩いていくのがしんどくなってきているので、こうした乗り物があったら便利そうですね。それでは早速、乗ってみたいと思います」
操作は簡単!滑らかで軽快な走り
「座面が少し前に傾いていて座りやすいですね。腰回りも、しっかりホールドされて安定感があります」
座面の高さは3段階(7㎝刻み)で変えられる。
フロントのパネルで、「+」「-」ボタンで時速は1~6kmまで変更できる。まずは時速3kmに設定して、出発進行!
「操作は、とてもシンプルです。電源を入れてキーを回して、一度左手でブレーキレーバーを握ります。右手のアクセルグリップを手前に回すと、運行開始。
非常に滑らかな走り出しで、安心して進めますね。路面の段差など、ガタガタはほとんど感じないですね。
アクセルグリップを元に戻すと停止します」
バックをするときは、アクセルグリップの下にある後退スイッチを押し続ける。「ピーピー」という音とともにゆっくりと後退する。
視線が高いので会話も弾みそう
地面から車いす座面までの高さは約700mm(3段階の一番上)。歩行車や自転車とほぼ同じ視線となる。
「目線が高いので、視界が良好ですね。これまでのシニア向け電動カートとは、見える景色が違ってくると思います。私の父は、普段移動のときは、シニアカーを押して歩きます。腰をかがめて中腰になるのですが、耳が遠い父に話しかける際は、私も中腰になります。もし、父が『e-SNEAKER』に乗ったら、ほぼ同じ目線なので、会話しやすいだろうなと思います。
時速3kmに設定すると並んで歩くのにちょうどいい速さですね。最高速度の6kmにすると、体感的にはややスピードが出ている気分ですが、だいたい早歩きくらい。安心感がありますね。
歩行者と同じ扱いなので、スーパーやショッピングモールなど店舗内でも乗ったままで入れる(※)そうです」
※店舗による。利用する際は、店舗に確認が必要です。
エアタイヤと呼ばれるがっしりとしたタイヤは、前輪の方が大きく8インチ、後輪は6インチ。自動車の技術を応用したサスペンション構造で、乗り心地や軽快な走りを実現。
段差を体験してみると――。
「力も不要で軽々と段差を乗り越えられました! 最大7.5cmの段差や、10cmの溝を乗り越えることができるそうです。ガッタンといった衝撃は全く感じません。買い物の途中、歩道の継ぎ目など結構段差がありますが、これなら不安なく乗れそうです」
バッテリーは満充電で約2.5時間の走行が可能。連続走行距離は約12km。着脱式なので自宅に持ち帰り、専用の充電器にセットするだけ。
「運転だけでなくバッテリーなどの扱いも簡単。これならシニア世代にも安心。車いすは押してもらうサポートが必要ですが、『e-SNEAKER』なら、他の人の手を借りずに、ひとりでも外出できるようになる人が増えると思います。行動範囲も広がりそうですね」
『e-SNEAKER』に試乗してみて【まとめ】
「高齢者向けの電動カートは他社でも発売されていますが、『e-SNEAKER』は、いかにも“高齢者”という印象ではなく、シンプルでスタイリッシュ。大阪・関西万博で若い人に人気があるというのも頷けます。
シニア世代も、いわゆる“高齢者仕様”というのではなく、老若男女、世代にかかわらず誰が乗ってもおしゃれでかっこよく、使い勝手がいい、そんなパーソナルモビリティーが、選択肢の一つになることは、うれしいですよね。
免許返納後の移動手段に困っているかたがたにとっても、『e-SNEAKER』は、とてもおすすめだと思います。家族みんなが利用できるのがいいですね!」
『e-SNEAKER』は、生産工程や工場の体制も人や環境に優しい設計で1日10台の限定生産となっている。年間販売目標は500台。全国の販売会社で試乗・販売がスタートしている。気になるかたは近くのDAIHATSU販売会社の店舗へ行ってみてほしい。
【データ】
e-SNEAKER
41万8000円(本体は消費税非課税)
全長1130mm×全幅645mm×全高985mm
https://www.daihatsu.co.jp/lineup/e-sneaker/
撮影/黒石あみ 取材・文/介護ポストセブン編集部