《注目の介護関連住宅訪問レポート》東京・八王子にオープンした「サ高住」は充実のレクリエーションと豊富な食事、月に一度「スシローの日」も
7月1日、東京・八王子市にサービス付き高齢者向け住宅「アンジェス八王子高尾」がオープンした。9月1日現在16名が入居しており、予約や問い合わせも多いという。どのような人が入居でき、どのような過ごし方ができるのか。現地を訪問し、話を聞いた。
介護事業×住宅販売事業のタッグでできた完全バリアフリー住宅
「アンジェス八王子高尾」は、60歳以上、あるいは要介護認定を受けている人を対象としたサービス付き高齢者向け住宅(以下「サ高住」)だ。訪問介護や看護サービスを提供するT.S.Iによるサ高住「アンジェス」グループの一つで、全国では35棟目、東京では「アンジェス八王子」に次いで2棟目になる。サ高住とは、入居しながら安否確認や生活相談が受けられる、バリアフリーが完備された高齢者向けの賃貸住宅のこと。
オートロック式の入口を通ると、玄関すぐ右手には365日24時間常駐のスタッフルームがあり、左手には食堂を兼ねた居間が広がる。我々取材スタッフが訪れた午前10時頃は、この居間でラジオ体操が行われていた。入居者は車いすに座ったまま、スタッフの動きに合わせて上半身を動かしている。アンジェスグループでは朝食後にラジオ体操を行うのがルーティーン。入居者の希望を受けて始まったプログラムだという。
住宅の中には、至る所に手すりやスロープが設置され、ドアは開閉がしやすく車いすの出入りも楽な引き戸タイプ。廊下は車いす同士でもすれ違うことができるほどの広さだ。
「アンジェスグループの住宅は、本社の子会社である住宅販売会社が設計から建築まで関わっています。そのため設備には細部までこだわり、介護する側もされる側も過ごしやすい住宅として自信を持っています」(「アンジェス八王子高尾」施設長代理・山中季実さん、以下同)
自立型から要介護5、看取りまで対応
充実した設備面やケア体制にひかれ、現在要支援はもちろん、認知症や要介護度5の寝たきりに近い状態の人まで多くの高齢者が入居しているという。
「また、お看取り期の方も受け入れています。看護師がいないので医療行為はできませんが、延命治療をせず自然な形でのお看取りを希望される方には、医療と連携し、最期までご対応させていただいています」
職員体制は、日中は満床時で5~6名、夜間帯も必ず1人は有資格の介護スタッフが常駐し、困りごとがあれば各居室に設置されたケアコールを押すと対応してもらえる。それ以外でも、午後9時、深夜0時、早朝4時にスタッフが各居室を巡回。呼吸して睡眠ができているか、部屋の中に異変がないかを確認したり、一人でトイレに行くことが難しい入居者には介助したりしているという。
費用は、シンプルで分かりやすい料金体系だ。
「敷金などの入居一時金はありません。月額の費用目安は20万円~30万円程度です」
具体的には、家賃・共益費・食費・生活支援サービス費込みの基本料金が20万1116円(税込、以下同)。介護保険サービスを使う場合、1割負担で最大5560円(要支援1)~4万109円(要介護5)が加算される。別途、必要に応じてお薬管理料(8800円)や、トイレ介助(1回500円、1日上限2,000円)などのオプションサービスを加えることができる。高介護度の入居者の多くが利用しているのは、館内のオプションサービスを上限なしで利用できる月額4万9500円のパック料金タイプだ。介護5で介護の手が多く必要な状態でも、最大でかかる費用は30万円程度だという。
夜ぐっすり眠れるように日中プログラムが充実
入居者はここでどのように過ごしているのだろうか。
「個々の要介護状態やライフスタイルに合わせて自由に生活できますが、おおまかな一日の流れとしては、まず朝8時に食堂に集まり朝食を召し上がっていただきます。その後昼食までは基本的に自由時間。毎日10時からのラジオ体操に参加される方もいれば、面会に来られたご家族とロビーでゆっくり過ごされる方もいます。
そして11時半からは嚥下体操を。喉の筋力を落とすことなく、1日でも長くおいしいご飯を食べられるように、なるべく皆さまにご参加いただいて、喉のマッサージや発声練習を行います。その後、そのまま昼食をお召し上がりいただきます」
14時半頃になると、館内放送で15時からのレクリエーションのお知らせが。スタッフは安否確認も兼ねて1部屋ずつ案内にまわる。
「レクリエーションはあくまでも自由参加ですが、こもりきりになってしまわないためにも、皆さまとの交流や体を動かす場としてもできるだけご参加いただくようにしています」
内容は、風船バレーで楽しく運動したり、頭の体操をしたり、喉の体操を兼ねてカラオケ大会をしたりと、バリエーションに富む。月に1回は、季節を感じられる行事も開催している。
アンジェスグループでは、入居者からの希望をレクリエーションに反映することも多い。
「例えば、毎朝恒例のラジオ体操は『レクリエーションと食事前の嚥下体操だけでは物足りない』という声によるもの。
『コーヒーを楽しむ時間が欲しい』という声を受けて、週に1回はレクリエーションの中でお茶会を設け、コーヒーの提供をしているところもあります。また、『昔のドラマを観たい』という声から、週に1回、朝食後から昼食までの間で食堂で上映会をしているところも。入居者さんからいただくご意向は、可能な限り積極的に取り入れています」
今後、月1回のイベントレクリエーションでは、建物を地域に開放して、近隣住民の憩いの場としても使ってもらうことを考えているという。
「ゆくゆくは、地域からも安心して見守ってもらえるような住宅にしていきたいですね」
月に一度の「スシローの日」は大好評
18時からの夕食は、再び食堂で。自炊も可能だが、居室は火気厳禁のため、共同キッチンでスタッフの見守りのもと調理を行うという。
三度の食事はメニューが決まっており、高齢者向けの少し柔らかめのものが一人一人お膳で提供される。健康状態に応じて刻み食やミキサー食などにも対応。月に何度かは全国の郷土料理が並び、入居者の顔がほころぶ。特に喜ばれているのは、毎月第3水曜日の「スシローの日」だ。アンジェスグループでは、回転寿司チェーンのスシローと連携し、お寿司を提供しているのだ。
「スシローの日は、『お寿司を食べたい』という入居者さんの声を受けて、弊社の食事担当者がスシローさんにお願いしたことで実現しました。皆さん、お寿司の日は、目の輝きが違うんですよ(笑い)。いつもは残されるのに、スシローの日だけはペロッと食べる方も。やはり食事の楽しみを作ることはすごく大事だと感じましたね」
食後は、必要に応じて介護サービスを受けたり居室で自由に過ごし、就寝。なお、基本的に週2回の入浴は、昼食とレクリエーションの合間に行うことが多いという。集団入浴ではなく、訪問介護のヘルパーや職員と入居者との1:1で1時間ほど、ゆったりと。お湯はその人に合わせて毎回張り替えられるので、好きな入浴剤を入れてくつろげる。
入居前は気力が落ちていた人でも、スタッフとの会話や毎日の運動、レクリエーションを通して、気持ちが前向きになり活動的になる人も多いという。後編では、スタッフの見守り体制についてレポートする。
【データ】
施設名:アンジェス八王子高尾
公式WEBサイト:https://www.t-s-i.jp/anges/hachiojitakao/index.html
所在地:東京都八王子市館町559番10
最寄駅:JR中央本線「高尾駅」からバスで約4分降車後、徒歩約1分
類型:サービス付き高齢者向け住宅
事業主体:株式会社T.S.I(てぃー・えす・あい)
室数:29戸(29名)
入居要件:60歳以上の方または要介護認定を受けている方
構造:木造
開設年月日:2025年7月1日
料金:月額利用料:20万1116円(税込)~
※月額保険料のほか、介護保険自己負担分が毎月かかります。