猫が母になつきません 第460話「かられる」
「言わなくてもわかるだろう」それはいつも幻想です。何ヶ月もてしおにかけて育てダイカンドラはあっという間に刈られてしまいました。年に一度、大家さんの庭の手入れのついでに庭師さんがうちのほうも手入れしてくださるのです。よくあるグランドカバーだから見ればわかるだろうと思っていました。プロなんだし。しかし…玄関先で「ブイーン」という機械音がするのに気がついて飛び出しましたが、すでに半分以上が刈られていました。庭師さんも私の勢いに驚いてこちらを見ました。
「それは…グランドカバーでっ」と言った私の顔がかなり悲壮だったのだと思います。「え?え?」と庭師さんはかなりうろたえていました。刈られたダイカンドラを見てさらにわたしの悲壮感は増したはずです。「言っておけばよかったですね…」それ以上の言葉は出ませんでした。家の中にもどってしばらく椅子に座ったまま固まりました。しばらくして庭師さんがお昼休憩でいなくなったときに外に出て、刈られた状態をよくよく確認して、また家の中に戻ったら涙がでてきました。去年の冬から雑草の根を掘り起こすように取り除いて土壌を作り、春を待って種をまいて、発芽率は悪かったもののやっと芽生えた葉っぱたちが枯れないよう、暑い日も汗だくになりながら面倒を見てきたことが次々と脳裏に浮かんできました。
しかし結局言わなかった私が悪いのです。「言わなくてもわかる」ことはほとんどありません。いままで何度も思い知らされれてきたはずなのに、人間は何度でも同じ過ちをくりかえすものです。あとで考えたら「こうなるのはわかっていた」とすら思うのに。
次の日小さな園芸用の柵を買ってきて、ダイカンドラを植えているエリアを囲みました。花壇ぽくなって、残ったダイカンドラは雑草には見えません。いつも植物の強さには感心させられているんだから、きっと残った子たちがががんばって、いつかこの柵の中いっぱいにふっさふさに生えてくれる、そんな気がしてきました。いつものように水やりをしたら、悲しい気持ちはかなりおさまっていました。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母と暮らすため地元に帰る。ゴミ屋敷を片付け、野良の母猫に託された猫二匹(わび♀、さび♀)も一緒に暮らしていたが、帰って12年目に母が亡くなる。猫も今はさびだけ。実家を売却後60年近く前に建てられた海が見える平屋に引越し、草ボーボーの庭を楽園に変えようと奮闘中(←賃貸なので制限あり)。
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